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novembre 2008

30/11/2008

三権分立を理解できないベテラン記者がいることの方が理解しがたい

 産経新聞社の花岡記者が「国籍法改正は政治の知性の欠如」というエントリーをアップロードしています。

 まず冒頭から,だれもその意味合いを理解していない法律改正が実現しようとしている。ととばしています。しかし,この問題に関心の薄い人は多いと思いますが,少し関心を持って調べれば,「国籍法第3条1項を文言通りに解釈して,日本国籍を有しない母から出生した子が出生後に日本国籍を有する父から認知を受けた場合に,その母と父とが結婚しない限り,同項により日本国籍を取得できないとするのは,憲法第14条に反し違憲である」との最高裁判所大法廷判決を受けて,最高裁判所が採用した同項の憲法適合的な解釈に法律の文言を合わせようという意味合いをもっていることがわかるかと思います。

法務省にいかがわしい「人権スクール」が存在するのではないか。そうとでも考えないと、この異常事態は理解できない。

 とのことですが,最高裁の違憲判決に合わせてその法令の所管官庁が改正案を起草することは普通のことであり,記者歴30年を謳う新聞記者がその程度のことを理解できないことの方が異常事態です。

 

 最高裁の違憲判決があったからといって、法律改正は、政治の責任において行われなければならない。これは当然過ぎるほど当たり前のことだ。

 物は言い様なのですが,最高裁の憲法判断に対応した法改正を政治が怠れば,裁判所は最高裁判例に沿った判決をし続けるということです。最高裁判決に沿った法改正が速やかに行われなかったことにより,本来訴訟を提起せずとも実現できたはずの権利が実現できなかった場合には,本来不要な訴訟費用を負担させられた場合には,立法不作為として,国賠の対象になるかもしれませんが。

 

 国籍法改正の「穴」は、カネで国籍が売買される危険性を残してしまったことだ。日本国民が不正な手段で生み出される道をつくってしまったことだ。

とのことですが,実際の戸籍実務等を無視して妄想をふくらませてやっと「危険性を残してしまった」というのがせいぜいというレベルの話です。

 

改正案を考えるのは、法務省の役人たちである。最高裁の言うとおりに、法の不備をただそうとして何が悪いか、というのが彼らの立場だろう。なんらの疑念も抱かず、いいことをやっているという意識しかない。「法匪」というのは、こういう人たちのことを言う。

とのことですが,法務省は,本来自分の所管法令が違憲とされたことは快く思っていないはずであり,しかしながら最高裁判所の大法廷判決で違憲とされた以上,その職務に忠実にあろうとして,最高裁判決に対応した改正案を起草したにすぎないのであり,それを「法匪」とは,なんたる侮辱なのでしょう。

 

 役人がどう考えようとも、常識と理性で、これを食い止めるのが政治家の本来の役割だ。

とのことですが,法令の憲法適合性に関する最終的判断を行う権限は最高裁判所にあり,かつ,国会議員には憲法尊重擁護義務がありますから,最高裁の憲法判断に合致した法改正を行うことは,「常識と理性」がある国会議員としては当然のことであります。

 

 国籍法改正は、国家を形成する国民のあり方そのものにかかわるのである。その重大な意味合いに政治家が気付かない。というよりも気付かせないまま改正作業を進めてしまおうという役人の矮小化された知恵が勝ってしまう。

とのことですが,一部のゼノフォビアにとらわれた方々の妄想まで予測して国会議員に報告することまで官僚に要求するのは酷というものです。

29/11/2008

「国籍法改正に反対する緊急国民集会(11/27)における決議文」について

 「国籍法改正に反対する緊急国民集会(11/27)における決議文」というのがアップロードされています。例によって一つ一つ検証してみましょう。

 

 一、国籍法「改正」案は、憲法違反である
憲法前文は「日本国民」は「われらとわれらの子孫のために」「この憲法を確定する」と述べている。国籍は国民たるための不可欠の条件であるから、憲法を定める権利の根拠をなすものである。それを「われらとわれらの子孫」であることが証明できない者に与えることは、憲法違反である。

とのことですが,まず,「日本国民」が「われらとわれらの子孫のために」「この憲法を確定する」ということからは,現行憲法制定時の日本国民の生物的な意味における子孫であることがDNA鑑定の手法により証明された者についてのみ日本国籍を付与すべきという結論は論理的に導かれません(現行法でも「帰化」制度は存在しますし,国籍法を抜本改正して全面的に出生地主義を採用し,またはドイツ法のように一部出生地主義的な修正を加えることも立法裁量の範囲内です。)。

 国籍法「改正」案は、最高裁判決を逸脱・歪曲している
 六月四日のいわゆる「婚外子国籍訴訟」最高裁判決が国籍法「改正」案の根拠とされている。しかしながら、本判決は、子の国籍付与にあたり、父母の婚姻を条件とすることを違憲としたに過ぎず、「子の国籍保有資格の真実性」を無視すること、多重国籍を認めることを求めたものではない。しかるに国籍法「改正」案は、子が真実にその親の子であることを証明する有効かつ確実な手続きを定めていない。これは偽装申請を容認するに等しい。本人確認の手段として、既に刑事裁判でも証拠採用されているDNA鑑定をなぜ行わないのか。それが人権侵害と言うなら、偽装申請をどのようにして証明するのか、或いはわが子でない子をわが子とさせられることは人権侵害ではないのか。

とのことですが,まず,今回の国籍法改正法案は,二重国籍を認める旨の法改正を含んでいません。また,DNA鑑定は生物的な父子関係を証明する有力な手段の一つではあるものの唯一の手段ではありません。松倉耕作「血統訴訟論──親子確認の新たな法理を探る──」178頁によれば,

今日の確立した判例理論によれば,父子関係の認定は自由心証の対象に属することを前提として,①母親と被告男性との性的関係の存在,②他男との性的関係の不存在(たとえば被告男性がこの存在を証明すれば,後述する「複数交渉」の問題となる),③子と被告男性との間に血液型の背馳がないこと,④不正の存在を推測させる被告男性の言動(扶養・出産費の支弁,この世話,子の母を妻としたい旨の申入れなど),などの間接事実の総合判断から,父子関係の存在を認定する

としつつ,他の事実を加えた「総合判断」をするうえで,間接事実③が場合によりかけてもよいとされているものとし,その理由として,

③要件が欠落すれば,原告敗訴となるのであれば,被告男性は,常に採血等への協力を拒む道を容認することになる。それは結果的には,原告に勝ち目がないとの意味では,大審院時代へと逆行することに通ずる

とされています(松倉・前掲179頁)。すなわち,DNA鑑定等を抜きに父子関係を立証するという手法は,認知請求訴訟における裁判所による父子関係の認定でも用いられている手法であるということができます。改正国籍法3条1項に基づく国籍の取得に際してDNA鑑定による生物的な父子関係の存在の立証を絶対的な手続的要件とした場合,DNA鑑定を拒むことにより,海外で生み捨てた子供の入国を阻害し,もって扶養義務から事実上逃れる道を父親に認めることになります。

 国籍法「改正」案は、国民侮辱法である
国籍は、日本国憲法に定める国民権利を有することの根拠である。この権利は過去・現在の国民が血涙をもって築き上げてきたものである。それを安易に付与することは、過去そして現在、国家・国民のために奮闘し或いは犠牲を払った国民とその子孫を侮辱するものである。

とのことですが,この法案に反対している人の多くは「押しつけ憲法論」者だったのではないでしょうか。それはともかく,現在日本国憲法に規定された国民の権利を享有する者の多くは,単に日本国籍を有する男女の間に生まれたというだけで日本国籍を取得し,憲法上の権利を享有しているのであり,その権利を享有できる条件が緩和されたからといってとやかく言える立場にはないように思います。

 国籍法「改正」案は、税金浪費法である。
偽装申請を犯罪としながらそれを防ぐ手続きを定めない国籍法「改正」案は、偽装摘発・処罰のために警察・検察・裁判所の業務を増大させる。また偽装による国籍付与者に対する生活保護を含む社会保障、教育・住宅施策を行わせられる地方自治体の事務を増大させることで、本来の地方行政に支障をきたす。これは立法府の不作為による税金の浪費である。

とのことですが,認知の手続要件としてDNA鑑定による父子関係の存在を証明することをあまねく義務づける方がコストが掛かります。

 

 国籍法「改正」案は、犯罪促進、国家解体法である
中国、北朝鮮、韓国等から見れば、我が国は社会資本、社会保障等国家・社会・経済のあらゆる面で垂涎の的である。ここに居住し政治的権利を行使する資格を得られる日本国籍は、いま世界でも数少ない優良「投資物件」である。しかも多重国籍を容認するのであるから、意図すれば我が国の一部地方を占拠し自治区化することも可能である。そのような者達が我が国の国法とその前提たるコモンセンスを遵守するなど空論でしかない。しかるにその取得にあたり、日本国家が不正を排除する意思を示さないことは、国民に犠牲を強いる、国家による犯罪誘致促進行為である。

 とのことですが,「我が国の一部地方を占拠し自治区化すること」が可能となるほど,公正証書不実原本記載罪で処罰されるリスクを押し,かつ,家庭崩壊のリスクを負ってまでお金を積まれて身に覚えのない子供を認知する用意がある日本国籍を有する男性であって,十数年前に中国、北朝鮮、韓国等に滞在していたという人材を捜し出すのは大変だと思います。それに,そもそも今回の国籍法改正法案は,二重国籍云々は議題に含めていません。

 なお,国籍法改正反対派の方が現在の日本の法制度をどのようなものと認識されているのかはわからないのですが,現実的なことをいえば,その人が日本国籍を取得した経緯がどのようなものであろうとも,我が国の刑罰法規を遵守しないと,者に対して,さらにいうと,「社会資本、社会保障等国家・社会・経済」等に鑑みて日本国籍を取得して堂々と日本に滞在したいと思う人々が,敢えて,日本国の刑罰法規を犯して裏社会で生きていこうとする合理的理由はないように思えるのですが,いかがなものでしょうか。

 

 一、国籍法「改正」案の衆議院審議は、だまし討ち的であり、法の重要性に相応しない。

憲法制定権の根拠であり、憲法的権利の根拠である国籍の付与は、十分慎重に審議しなければならない。しかるに、与野党内で公正かつ慎重な検討もなされず、衆議院審議が一日、それも僅か三時間というのは拙速に過ぎる。

とのことですが,最高裁判所での違憲判決を受けての法改正について衆議院で3時間も審議時間をとるというのはむしろ長い方ではないでしょうか(何といっても,「改正する」という結論は決まっているのですから。)。なお,国籍法について違憲判決が出たということは当然新聞等でも大きく報じられていますし,法律についての違憲判決が最高裁でなされればこれに対応した法改正が近々行われることは少なくとも国会議員であれば当然知っていて然るべきことですし,この法案は9月3日の法制審議会にて報告がなされ,その旨はネット上でも公開されているわけですから,国籍の取得要件について重大な関心を有しているにもかかわらず,政府がこの法案を提出し,その審議日程が決まるまで内容を知らなかったとすれば,それは単にその議員の怠慢なのではないかという気がします。

 なお,もし最高裁の違憲判決を言うなら、国政選挙における一票の格差の是正はどうなのかという点に関しては,「それも早急に対応すべき」という答えにしかならないのであって,「公職選挙法の改正が滞っているのだから,国籍法改正もだらだらすべき」という結論には普通はならないです。

 また,

しかも衆議院の付帯決議は、父子関係の「科学的」確認方法の導入の要否・当否の検討、「組織的に虚偽の認知の届出」を行う惧れの指摘、「多重国籍者」が増加するため対策をとることを求めている。これらは本来法律の中で解決されるべきものであって、こうした付帯決議の存在自体が法の不備を証明するものである。良識の府である参議院が衆議院のカーボンコピーと言われて久しい。もしこのような不備かつ不当で違憲の法律を可決するならば、参議院の存在意義は、ますますもって疑われることになる

とのことですが,父子関係の確認方法というのは国籍法で定めるものではありませんし,「虚偽の届出」が行われる虞があるということは当該届出制度を否定する理由にはならないと考えるのが一般的です(例えば,「組織的に虚偽の婚姻の届出」を行う虞があると指摘されたからといって,婚姻制度を廃止したり,(夫婦となろうとするものの一方が日本国籍を有しない場合に)DNA鑑定等によりその男女間に継続的な性的関係が存在することを証明することを法律婚の手続的要件としよう云々という話にはなっていないのです。)。なお,参議院で雇うが過半数を握っている現在,参議院が衆議院のカーボンコピーであると未だ言い続けている人は少ないのではないかと思います。

28/11/2008

『国籍法改正案を検証する会合』に賛同する議員の会?

 国籍法改正案まとめWIKIによると,『国籍法改正案を検証する会合』に賛同する議員の会というのが急遽立ち上がったとのことです。

 これによれば,この議連は,案内文の中で,国籍法改正によって 「想定される偽装認知」 についての例示を行ったそうです。国会議員たるものがこのようなデマを同僚に対して流布しているとはにわかに信じがたいところです。

 一応,このwikiの記載を前提に検証をしていくこととします。

 

第三国の女性を、国内の犯罪組織に所属している男性が大量認知して、売春等犯罪に悪用。(国際的に「性奴隷」と批判される)

 まさか,愛国心に溢れている方の愛する日本というのは,法律上の父子関係が認められれば,親が子に対し売春等を強いることも許されるという共通理解があるのではないでしょうね。普通に考えれば,「大量認知」しようとする段階ですでに戸籍窓口でストップが掛かると思いますし,また,売春等が摘発された段階で偽装認知も発覚します(警察には売春婦たる女性の在留資格を捜査する権限がありますし,その過程で戸籍謄本を取り寄せることも可能です。偽装結婚であることを疑うに足りる事実があれば,令状を取ってDNA検査することも可能です。)が,その場合,公正証書不実原本記載罪を含めた罪が加算されますから,「犯罪組織に所属している男性」としては,観光ビザで連れてきて売春させるのと比較して,おいしい部分はないです。

 

国際テロリスト及びその子孫を認知することも可能になる。仮に、正規の日本国籍を取得した「日本人」がテロ事件を起こした時に損なう国の名誉は甚大である。(国際的にテロ国家と批判される)

 どこの国にもテロ事件を起こすような人は存在しうるし,日本も従前例外ではなかった(日本赤軍は,国際的にはかなり知られた存在です。)が,特定のテロリストの国籍国であるということを理由に国際的に「テロ国家」と批判されている例を寡聞にして知りません(とりあえず,ビンラディン氏の国籍国であるサウジアラビアですら,そのことを理由として,国際的にテロ国家と批判されることはないように思います。)。

 

三、現在、日本の国籍が高額で売買されている現状では、日本国内に長期滞在することを目的として、犯罪組織の男性でなくても、経済的に困窮している男性に高額な報酬で「偽装認知犯罪」が一般的に行われるであろう。

 まず,「現在,日本国籍が高額で売買されている現状」という認識が間違っています。また,「偽装認知」というのは認知の対象となる子供が妊娠したと想定される時機にその子供の母親が独身であって,かつ,認知者たる男性と性的関係を結ぶような間柄であったことが必要なので,経済的に困窮している男性が軽々しく行えるものではありません(国外で生まれた子について認知するためには,その出生当時,その母がいた国や地域にいたことが証明できなければなりません。)。

 

第三国で生活している女性が、日本の「社会福祉制度」の悪用を意図して、「特別在留許可」等の目的で第三国で生まれ生活している第三国人の子供を、日本人男性に「認知」してもらい日本入国を果たす。「改正案」には扶養の義務がないので、入国後は「育児手当」「生活保護費」など税金が使われる。

とのことですが,国籍法はいかなる場合に日本国籍を付与するのかを定める法律ですので,国籍法に扶養義務についての規定を置かないのは当然です(各国の国籍法もそうしています。)。認知により父子関係が認められれば,民法上の規定により,「父」に扶養義務が発生しますし,「父」がいる以上,簡単に生活保護は受給できません。

 

扶養の義務が無いことで、国内に短期滞在している第三国人女性が「特別在留許可」取得を目的として、「大金」を支払って日本人男性の子供を妊娠する可能性もある。これは「偽装認知」としての犯罪ではないので、「DNA鑑定」しても防ぐことはできない

とのことですが,「想定される偽装認知」の例として,「偽装認知」ではないことが明らかなものを提示するのはいかがなものでしょうか。

 ところでこの議連には牧原ひでき衆議院議員も名を連ねているようですが,この程度の法解釈能力しか有していない弁護士に仕事をさせていたことが白日の下に晒された旧あさひ法律事務所は,お気の毒な限りです。

日本の行く末に危機感を覚える前に自分の論理性のなさに危機感を覚えるべきでは?

 小美濃一之さんという方の「義務教育の混乱を招く国籍法改正案」というエントリーでは,

父または母が認知した子で19歳11ケ月までなら、出生後に認知された子供でも日本国籍取得が可能になるというのは、日本語が聴き取れない・読めない・書けない・喋れない、日本の文化慣習への理解も十分でない人であっても、日本国籍が付与され、参政権も得られるということです。

ということが国籍法改正への反対の根拠として掲げられています。しかし,普通に考えてみればわかることですが,日本の義務教育を受けず,従って日本語能力の不十分な人に日本国籍が付与され、参政権も得られるということに関していえば,従前の国籍法でも同様の現象が生じていますし(現行法では,母親が日本国籍を有する場合並びに父親のみが日本国籍を有しかつ両親が婚姻した場合,父親のみが日本国籍を有し出生前に認知を受けた場合のいずれかの場合であれば,16歳まで日本国に入国せず,従って日本国の義務教育を受けていない場合であっても日本国籍を取得することができます。),国籍取得の要件たる認知に際してDNA鑑定を行おうともその現象の発生は防止できません。また,両親が日本国籍を有しているとしても,幼少期から日本国内で生活しておらず,かつ,日本人学校等にも通っていなかった場合にも,同様の状況を生じます(中国残留孤児などはまさにその例です。)。

 そのような状況への対応策としては,例えば夜間中学等を活用するなどして,事後的に日本語教育等を行っていくというのが普通の考え方であって,日本語が聴き取れない・読めない・書けない・喋れない、日本の文化慣習への理解も十分でない輩には日本国籍を付与するな,参政権も与えるな,というのは,あまり普通の考え方ではないように思います。

 このブログ主は,

上記目標の3つめに、「我が国と郷土を愛する態度を養う」という箇所があり、日本国民として日本で生きていくうえで大変重要な要素ですが、国籍法改正案によって、日本の義務教育を受ける必要のない日本国籍取得者が増えることになれば、日本の義務教育を受けていないため、どこかで別途、義務教育に相当するような教育をしない限り、「我が国と郷土を愛する態度を養う」のは困難になります。

と言っているのですが,無理矢理に「調教」しなければ生まれない「愛」なんて,おおよそ不自然なものであって,生きていく上で不必要なものと相場が決まっています。桜井和寿さんが「名もなき詩」で述べるように,愛は「気がつけばそこにあるもの」なのです。なお,教育基本法に「我が国と郷土を愛する態度を養う」という条項が入ったのはごく最近のことですが,それ以前に義務教育を受けた日本国民の大多数は日本国民として特段の支障なく日本で生活することができています。

 また,このブログ主は,

欧州各国やチベットなどの現状に鑑みても、楽観論や性善説に依拠した法案は、日本人の生活向上にはつながらず、反日国家群に囲まれている日本において、国籍法改正案は、日本解体法案だと言っても過言ではないでしょう。

とも述べていますが,この国籍法改正は,現行国籍法3条1項の最高裁判所大法廷での合憲限定解釈に条文を合わせることを目的としたものであり,父親のみが日本国籍を有する非嫡出子についても日本国籍を取得する道を開こうとするものですから,それ以外の日本人の生活の向上に繋げることをそもそも目的としていません。そして,日本は,父親のみが日本国籍を有する非嫡出子について日本国籍を取得させたところで解体するような柔な国ではありません(といいますか,それで解体するような柔な国があったことを私は知りません。)。

 また,このブログ主も,

DNA鑑定の義務化が織り込まれておらず、厳格な扶養事実の確認もないなど、問題が多く、また、付帯条項は法的拘束力がないこと、さらに、上記のように、日本における義務教育・就学義務の意義を相対的に低下させることなどから、国籍法改正案は、日本が日本でなくなる致命的破壊力を秘めた悪法と言うほかなく、廃案にすべきだと思われます。

と述べています。しかし,死後認知の場合はもちろんのこと,強制認知の場合や,認知請求を受ける過程で渋々認知をした場合において,父親の側がDNA鑑定のための資料提供に応じない(子供の日本国籍取得が認められず,母親の本国に強制送還された方が,事実上扶養等を行わずに済むので却って好都合!)ことも十分に想定されます。また,死後認知の場合はもちろん,日本国外で生み捨てられ,母親の本国に残された子に関して言えば,日本国籍の取得が認められ,日本国内で永住できるようになって初めて父親からの扶養を受けることが事実上可能になるのであり,日本国籍を有する男性から認知を受けたことを理由とする日本国籍取得申請をするにあたってすでにその父親から扶養されている事実を証明する必要があるとするのは,順序が逆であると言わざるを得ないでしょう。私には,このブログ主こそ,日本国籍を有する男性の行動原理に関する現実離れした楽観論や性善説に依拠しているように思われてなりません。

 まあ,このブログ主は,

「我が国と郷土を愛する態度を養う」ことを蔑ろにすれば、日本の衰退、そして、日本という国の解体につながります。

なんて言っている時点で,「日本という国」をきちんと理解していないことがバレバレです。この国を支えているのは,この国を形作っているのは,この国の対外的評価を高めているのは,「我が国と郷土を愛する」なんて観念論で頭が一杯となっている「愛国者」なんぞではないのです。単に自分たちの市の名前と同じ名前だからということでオバマ候補を応援してしまったり,自分たちの街で直前合宿をしてくれたという理由でその代表チームを真剣に応援してしまうような純朴でまじめな人たちこそが,「愛される日本」を作り上げてきたのです。くだらないゼノフォビアにとらわれて,現実に存在するかわいそうな子供達を見捨てるように要求してくる輩こそ,日本の良さを台無しにし,日本の評判を貶めていると評価するべきでしょう。

27/11/2008

じたばたするのも,人間の性なんです。

 前回のエントリーについて,「鉄牛」さんという方からコメント欄を通じて質問がありましたので,一部をご回答します。

 仮に認知させたい側(たぶん母親)が居るとして、そして認知したくない側(たぶん父親)が居るとして、この場合は、そもそもDNA鑑定するしないに関わらず認知されないのですから、子供が日本国籍を取得することは出来ないのではないでしょうか?

とのことですが,民法787条は子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。と規定しており,父親が認知したくないといっても認知請求訴訟で敗訴すれば認知がなされ,この父と子との間には法律上の親子関係が成立します。今度の国籍法改正法案によれば,認知請求訴訟に勝訴した結果日本国籍を有する男性の「子」となった者も,日本国籍を取得することができることになります。

そこで訴訟が起きた場合、被告側である「認知したくない側」はその正当性を証明するために、DNA鑑定は当然受けるのではないでしょうか?

とのことですが,身に覚えがなくて認知を拒んでいる場合はそうかもしれませんが,身に覚えがあるのに認知をしたくないと考えている場合にはDNA鑑定を受けることは却ってやぶ蛇になりますので,DNA鑑定を頑として回避することが少なからずあります。特に,配偶者がおり,それなりにうまくいっていた場合や様々な理由で現在の配偶者と離婚したくないという場合には,だめだとうすうすわかっていてもじたばたしたがるというのは,人間の性なのではないかと思います。

 で,認知請求訴訟というのは,DNA鑑定なんて技術が発達する前から存在しますので,DNA鑑定を行うまでもなく,父子関係が認められています。典型的な例としては,被告たる男性と,原告たる子の母親が,原告たる子を妊娠したと目される期間内に被告たる男性と性的関係を結んだことが立証され,かつ,そのころ他の男性と性的関係を結んだことが立証されなかった場合には,被告たる男性がDNA鑑定を拒んだところで,かなりの確率で父子関係の存在が認定されます。また,原告たる子を妊娠したころにその母親と性的関係を結んだとの事実を否認したのち,原告からのDNA鑑定の申立に対して,被告が鑑定資料の提出を拒んだ場合,父子関係の存在について法律上の事実推定を行う立法例もあるやに聞いていますが,そのような立法例がない我が国においても,そのような被告の態度から,原告たる子を妊娠したころにその母親と性的関係を結んだとの事実の存在を推認することは十分に可能です。

むしろ「警察がその子の「父」(と目される男性)の居場所を探し出して~」というのは、いくばかのお金をもらって偽装認知した後に、行方をくらましてしまう父親のほうが多いのではないかと、私は考えてしまうのです。


とのことですが,「行方をくらます」と現在の社会的関係をいったん捨てて新たな土地で新たな社会的関係を構築し治さなければいけないので,「いくばくかのお金をもらっ」たくらいでこれを行うのでは元が取れません。かといって,それで元が取れるほどのお金を支払った場合,今度はお金を支払う側が元が取れません。というのも,それだけのお金があれば,母の本国に残ってそのお金を使って生活した方が,日本国内で生活保護を受けて生活するよりも豊かな消費生活を送ることができます(日本は,周辺諸国と比べて日常生活に必要なコストが格段に高いですし,生活保護の受給額はさほど高くありません。)。従って,そのような例は,国籍法改正後であっても,ほとんど起こらないかと思います。実際,偽装結婚の例でいえば,婚姻届を行った後日本国民たる男性の側が「行方をくらま」すという例は,私は聞いたことがありません。

 嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認訴訟,そして認知請求訴訟などの裁判例をじっくり読んでいくと,親子関係を巡る様々な人間模様を学ぶことができ,国籍法改正反対論にしばしば見られる薄っぺらな人間観を脱することができるのではないかという気もします。

26/11/2008

ハードルは高い。

 改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づけよとの主張は,認知による法律上の親子関係創設の隠れたる要件である「認知者と被認知者との間の生物的な親子関係の存在」の立証方法をDNA鑑定に限定せよという主張,すなわち,一種の「証拠方法の法律による制限」を設けよとの主張と理解することができます。

 しかし,この種の「証拠方法の法律による制限」が,実体的真実に合致した法的な効果の発生の妨げにならないためには,法律により証拠方法が制限されている立証命題が「真」である場合には当該証拠が容易に入手可能であることが必要となります。さもなくば,当該立証命題が「真」である蓋然性の高いことが他の資料から明らかに窺われるのに,当該証拠方法が入手できないために,当該立証命題が「真」であることを前提とする法的効果の発生がなされないことになるからです。

 従って,認知による法律上の親子関係創設の隠れたる要件である「認知者と被認知者との間の生物的な親子関係の存在」の立証方法をDNA鑑定に限定するためには,認知という効果を発生させたいと望む側が容易にDNA鑑定を受けられるようにすることが必要となります。DNA鑑定を行うためには,鑑定のための資料として認知者の血液を採取する必要がありますので,認知という効果を発生させたいと望む側が容易にDNA鑑定を受けられるようにするためには,認知という効果を発生させたいと望む側が申立てを行えば,警察等が確実に特定の男性を勾引し,DNA鑑定のための血液採取を行ってくれる等の法制度が整備されることが必要となります。

 誠天調書のブログ主は,ハードルが高いから すぐにはできなくても 現状に合わせてDNA鑑定を可能とさせて法的根拠も持たせられるように全法体系の全てを改正する、まさに大改定が必要だが それでも必ずすると何故付帯条項で明記できないのか?気軽に仰るのですが,認知請求訴訟に際して,またはすでに任意認知された子が国籍取得申請するにあたって,子の側の申立てにより,警察がその子の「父」(と目される男性)の居場所を探し出して,場合によっては扉をこじ開け警棒等で殴りつけるなどしてその者の身柄を拘束し,場合によっては暴れるその男性を押さえつけてその者の血液を採取する制度を必ず作り上げるなんてことを,付帯事項に盛り込めるわけなかろうと思ったりするのです。ゼノフォビアな方々を少し安心させるというさほど意味がないことのために払う犠牲としてはあまりに大きすぎるのです。しかも,それだけの無茶をしても,死後認知には対応できないのです。

 なお,一部の方々は,偽装結婚と偽装認知とを同列に扱っているようなのですが,この2つは大分性質が違います。偽装認知の場合,認知者と被認知者との間に生物的な親子関係が存在しないことを知りつつこれが存在するものとして認知届をするという意味で立証命題が明確なのですが,偽装結婚の場合,どのような要素を欠く場合に「偽装」結婚となるのかは実のところそれほど明らかではないし,それ故市町村役場の窓口では不受理としがたいのです。一応,通説判例は,実質的婚姻意思必要説に立っているのですが,では,実質的婚姻意思とは何なのかというのはそれほど明らかではないのです。

25/11/2008

規制改革会議に対して意見を投稿してみた

 福井秀夫政策研究大学院大学教授のご意見があまりにひどいので,規制改革会議のウェブサーとにアクセスして,「規制改革会議に対するご意見・ご感想」を投稿できるフォームを用いて,下記の意見を投稿しました。



 私は,弁護士を務めるものです。

 さて,週刊東洋経済2008年11月22日に掲載された「設計ミスの司法改革弁護士大増産計画」という記事の中に,「政府の規制改革会議の福井秀夫・政策研究大学院大学教授は『ボンクラでも増やせばいい』と言う。『(弁護士の仕事の)9割9分は定型業務。サービスという点では大根、ニンジンと同じ。3000人ではなく、1万2000人に増やせばいい』」との記載があります。

 法曹人口をどうするのかについてはいろいろな見解があり得るとは思いますが,弁護士を大根やニンジンなどの野菜と同視するところまで蔑視ないし敵視されている方が,規制改革会議の委員に留まることは,同会議における法曹人口論に関する提言は,同委員が有する弁護士に対する蔑視ないし敵意に引きずられて,利用者を守るために必要な規制すら,適当な論理をくっつけて,その撤廃を提言するに至る危険があります。それは,何が必要な規制で,何が不要な規制であるかを明らかにした上で,後者の撤廃ないし改善を提言する規制改革会議の本旨に沿わないものと思料されます。

 また,「(弁護士の仕事の)9割9分は定型業務」との福井委員のご見解は弁護士の仕事の実際を調査の上でなされたものとは思いがたく,既に福井委員がとらわれている弁護士に対する蔑視感から出た偏見に基づくものだと思いますが,このような偏見に基づく見解を公言する人間が,「規制改革会議」という,多くの人々にいわば「痛み」を甘受してもらうことを提言せざるを得ない会議の委員を務めていることが適切とは思われません。

 従いまして,一日も早く,福井秀夫委員を規制改革会議の委員から外していただき,同会議の信頼性と権威を復活させていただきたく,ご意見申し上げます。

「ボンクラ」でも務まる定型業務

  週刊東洋経済2008年11月22日号に掲載された「設計ミスの司法改革弁護士大増産計画」という記事の中の下記記載が話題になっています。

政府の規制改革会議の福井秀夫・政策研究大学院大学教授は「ボンクラでも増やせばいい」と言う。「(弁護士の仕事の)9割9分は定型業務。サービスという点では大根、ニンジンと同じ。3000人ではなく、1万2000人に増やせばいい

 政策研究大学院ではそうなのかもしれませんが,一般に,大根やニンジンは,「サービス」ではなくて「商品」と位置づけられているかと思います。また,福井教授が何をもって「定型業務」と位置づけているのか分からないのですが,「定型業務」だから「ボンクラ」でもよいというのは定型業務従事者に対する蔑視感の表れでしょう。定型業務でも,その定型を維持するのに非常な能力を必要とする業務はいくらでもあります。

 あっ,そういえば,「ボンクラ」でも務まる「定型業務」を一つ思い出しました。「新自由主義」の立場から,さしたる根拠もなしに,ただただ規制を緩和せよと繰り返すだけの,何とか審議会の委員さんです。その程度の定型業務なら,「現実に目をつぶる」「未来に責任を持たない」という不誠実ささえ持ち合わせていれば誰にでもできますので,是非とも一般競争入札としていただき,より安い報酬で受注する事業者に委託するようにしてもらいたいものです。

24/11/2008

男の側がとる行動パターンについての想像力

 国籍法改正に反対されている方のご意見を拝見させていただいて共通して感じられることは,男:日本国籍,女:外国籍,という未婚の男女間で子供が生まれた場合に,男の側がとる行動パターンについての想像力が乏しいということです。

 現行国籍法で問題となるのは,妊娠発覚後男が出生前認知をしてくれない場合であるということは頭に入れておく必要があります。そのような男が,認知した子供とその母親を日本国内にとどめるためにわざわざDNA鑑定に必ず協力するものだろうか,と考えてみたらよいことです。認知した子供が日本国籍を取得しようとしまいと扶養義務は発生するにせよ,認知した子供が日本国籍を有せず,日本国から強制退去をさせられたが故に当面日本国内に入ってくることはないということになれば,扶養義務を果たさずにすますことが事実上可能となります。「日本男児たるもの,見覚えがある以上は,そのようなことを考えず,正々堂々とDNA鑑定を受けるはずだ」と考えることこそ,非現実的な性善説にとらわれているように思われます。

むしろ,自民党が心配

 国籍法改正問題についての19日の自民党の参院政審勉強会での議論内容を産経新聞の阿比留記者がブログで公開していますが,もし本当だとすると,ゆゆしき事態です。

某議員A 最高裁の判決自体が疑問だ。原告の中には父親がどこかに行ってしまっていない子供がいた。そういうケースでも国籍を付与するとなると、事実上、防止策も機能しなくなる。憲法14条違反というが、そもそも憲法10条では、国籍については別の法律で定めると書いてある。日本人であることを証明することが大事であって、行政府は厳格に対応するべきだ。DNA鑑定を導入すると問題が出てくるというが、犯罪捜査では使っている。主権者の権利を付与することなので、主権者の地位を簡単に渡してしまうことになる。子供たちは帰化申請すればいい。ところが申請せずに憲法判断にもってきた原告の政治的意図がある。衆院では可決されてしまったが、良識の府である参院では徹底的に審議をしないと汚点になる。

とのことですが,法令の合憲性に関する最終的な判断を下す権限は最高裁判所にあり,立法府も行政府もこの判断に従わなければいけないことは小学6年生くらいで知っていて然るべきことであり,法令を違憲とする最高裁判決が下された後に立法府が「最高裁の判決自体が疑問だ」といってみても無意味です。

 また,原告の中には父親がどこかに行ってしまっていない子供がいたとのことですが,現行民法では,遺言により認知を行ったり,父親の死後検察官を被告として認知請求をするなどして,父親がそもそもこの世に存在しない状態で認知が行われることだってあるのであり,そのような場合に国籍を付与するのに何の問題があるのか,私には理解が不可能です。

 また,憲法第10条は「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」とありますが,そのことは,この「法律」が憲法第14条に反する差別的なものであってもよいということを意味していません。法律を作る国会議員が,そのような憲法論の基礎の部分を理解されていないようでは困ってしまいます。

 さらに,「DNA鑑定を導入すると問題が出てくるというが、犯罪捜査では使っている」とありますが,犯罪捜査においては,被疑者が嫌だといっても,令状を取ってくれば強制的にDNA鑑定のための資料として体細胞を採取できますが,認知請求訴訟では現行法上そんなことはできませんし,それをできるようにする法改正を行うハードルはかなり高いです。

 子供たちは帰化申請すればいい。ところが申請せずに憲法判断にもってきた原告の政治的意図がある云々との件についていえば,当該事件の代理人が,

子どもと母に命じられた強制送還を阻止するために、なにかいい方法ないかな、と考えてはじめた裁判でした。国籍法3条の届出用紙は「父母の婚姻及び父の認知により嫡出子の身分を取得した。」にチェックを入れる形式になっているのだけど、ある日、ふと思いついて、用紙に手書きで「国籍法3条は憲法違反だから」という項目を書き足して、そこにチェックをいれて、スタッフに「とにかく法務局に行って出してこいよ」といいました。その届出は、あたりまえですが、不受理となって、退去強制令書取消訴訟に追加するかたちで、国籍裁判が始まったのでした。

とし,

もしも、この事件の裁判中に国が「国籍訴訟の取下げと在特、バーターで」ともちかけてきたら、迷うことなくのっていたでしょうね。

しているとおりの話であって,政治的意図なんて特段内容に思われます。

 また,

佐藤正久氏 国籍は非常に重要だ。しっかり議論してほしい。偽装(認知)をやろう、商売でやろうという人たちの偽装をどう見破るか。届け出の窓口は市町村役場と法務局だが見破れるかどうか疑問だ。役場は人が少なくて忙しい。法務局も大きなところもあれば、小さいところもある。

とのことですが,渡航歴からみて,当該子を妊娠したと想定される期間内にその子の母親と認知者たる男性とが同一国・地域内にいたことが公的な書類で証明されなければ,役場は基本的に認知届を受理しないのではないかと思います(心配なら,法務省から,そのような場合は原則認知届を受理しないように通達を出せばよいことです。)。

有村治子氏 歴史の評価に耐えうるのか。DNA鑑定は万能薬ではないという意見が出たが、それ以外に偽装を見抜く手だてはない。家族関係の絆を証明する手だてとしてDNA鑑定は選択肢に入るのではないか。外国人に対する差別だというが、国家の出入国で区別するのは当たり前なんだから、国籍でも区別があっていい。

とのことですが,むしろ妄想に近いゼノフォビアに屈して立法府が最高裁の違憲判決を完全と無視することの方が歴史の評価に耐えうるのでしょうか。なお,渉外関係ですと,偽装結婚よりも,偽装認知の方が,形式的な書類を整えるのは大変だと思うのですけどね。また,外国人に対する差別だというが、国家の出入国で区別するのは当たり前なんだから、国籍でも区別があっていい。とのことですが,この問題は何をもって日本国民となすのかという問題なのですから,「国籍でも区別があっていい」というのはトートロジーです。

 山谷氏 衆院ではたった3時間しか審議していない。虚偽かどうか調査する方法を通達で定めるとあるが、これでは私たちに見えないところで決められてしまう。付帯決議して修正に持ち込まなければ、とても国民の願いに答えられない。審議入りする前にもんでもらいたい。

とのことです。ただ,薬事法について最高裁の違憲判決が下された後の薬事法改正については,昭和50年05月29日の衆議院社会労働委員会において,質問が6個なされただけで委員会を通過していますし,同日の衆議院本会議では質疑すら行われることなく可決されています。最高裁で違憲と判示された部分を修正するための法改正って,そんなものではないでしょうか。

 また,虚偽かどうか調査する方法を通達で定めるとあるが、これでは私たちに見えないところで決められてしまうとの点については,法律で大枠を決めて,その実施のための詳細を政令等で決めるという立法手法自体を今後否定され,法律一本主義に変更されるお覚悟なのか,興味のあるところです。

 また,

付帯決議して修正に持ち込まなければ、とても国民の願いに答えられないとの点についていえば,そのような修正を望んでいるのは,国民のうちのごく一部です。それを「国民の願い」と表現するのはオーバーなのではないでしょうか。

某議員B 罰則が厳しくても偽装結婚は相当ある。男性は暴力団員が多く、刑罰を科しても何とも思っていない。DNA鑑定を使うのは当然だ。我々も選挙でいっぱい、いっぱいになって知らなかった。反省しているが、法務省はどういう手を使ったのか分からないが、3時間で衆院を通すやり方に失望している。

とのことですが,偽装結婚の一方当事者たる男性の側で暴力団員ってあまり聞かないように思うのですが,いかがなものでしょうか。

 なお,法務省はどういう手を使ったのか分からないが、3時間で衆院を通すやり方に失望している。とのことですが,最高裁で違憲と判示された部分を修正するための法改正で,衆議院だけで3時間も確保するというのは,むしろ長い方ではないでしょうか。

衛藤晟一氏 日本の家族は完全に血統主義ではない。文化概念としての家族という考え方がある。しかし、国籍ではハッキリした方がいい。新しい時代の変化の中でDNA鑑定が可能になったから、使えばいいじゃないか。

とのことですが,民法上の実子概念と,国籍法上の実子概念とに齟齬を生じさせるのってまずくないでしょうか。それとも,フィリピンなどで現地の女性を孕ませて逃げてきた男は,DNA鑑定のための血液採取などを拒み続ければ,強制認知をさせられることもなく,扶養義務も果たさず逃げおおせるという「卑怯な国,日本」を作り上げようという算段なのでしょうか。

戸井田氏 「後で気が付く寝小便」という言葉があるが、国籍法をずっとみていてそう思う。この中で国籍法の一部を改正する法律案を全部理解している人手を挙げて下さい(約30人の出席者、誰も手を挙げず)。あらあらは分かっていると思うが「最高裁の判決が出たのだからそれ以上追及する余地はない」と思考停止になっていると思う。これをよく調べると、将来日本人の血を引いてなくとも日本人になれる。そういう状況が出来上がってくる。偽装結婚もあり得る。その可能性を探っていったらある意味恐ろしい部分がある。

 使用することわざの選択として,普通に「後の祭り」ではいけなかったのでしょうか(国会議員なのだから,「品位」というものを考えた方がいいのではないでしょうか。)。それはともかくとして,今回の国籍法改正法案を読んで,戸井田議員が主張しているように理解できる人は,それは少ないと思います。何しろ,市町村役場の戸籍係は概ね無能であり,かつ,日本国籍を有する男性はお金を積まれればほいほいと偽装認知を引き受けてしまうという前提でお話をされているようなので。将来日本人の血を引いてなくとも日本人になれる可能性を完全に排除したいのであれば,日本国籍を有する男女間の嫡出子についても,DNA鑑定を行う必要があります(日本国籍を有しない男女間に生まれた子供を「藁の上の養子」とする方法があるからです。)し,分娩を行った者を母とする運用を替えなければなりません(日本国籍を有しない男女の卵子と精子から作った受精卵を日本国籍を有する女性に受胎させて出産させた場合,現行法では,生まれてきた子供は「母」が日本国籍を有するので,日本国籍を取得できます。また,夫が日本国籍を有し,妻が日本国籍を有しないという夫婦において,妻が日本国籍を有しない男性との不倫の結果として授かった子供についても,夫が嫡出否認の訴え等を起こさなければ,日本国籍を取得することになります。)。

 また,「偽装結婚もあり得る」とのことですが,今回の国籍法改正は,婚姻をしていない男女間の子の国籍取得を可能とするものですから,偽装結婚はとりあえず関係のない話です。

23/11/2008

河野太郎議員も大変だ

 ブログが炎上するのはブログ主に問題があるからだという意見が,匿名のブロガーやコメンテーターを中心としてあるのはご存じのとおりです。私は,ことあるごとにそうではないといっているわけですが,匿名で語られる言葉には庶民の本音や真実が現れているから現実社会はこれを尊重すべきなのだという声は根強くあるようです。

 ところで,近時,河野太郎衆議院議員のブログが連日炎上しています。

 11月21日のエントリーは,

自民党無駄撲滅プロジェクトチームは中央省庁が持っている仕事をゼロベースで見直す「政策棚卸し」を文科省、環境省、財務省と続けて実施してきました。
第4弾は外務省とODA予算です。NGOや企業の経験も参考にして外交活動やODAのあり方自体も検証していきたいと思います。
というものです。

 これに対しまず飛び込んできたコメントが,

私は誇りある日本人としてお前と戦うぞ
法案を取り下げよ河野座長
日本の品位を貶めてよいのか考えてみよ

 エントリーとは無関係にただブログ主への戦闘宣言をする日本人がいるということの方が日本の品位を貶めうるように思います。まあ,どこの世界にもおかしな人はいるという程度のことは,どこの国の人も理解してくれるのではないかと思いますが。なお,内閣提出法案を取り下げる権限は河野議員にはありません。

 次に飛び込んできたのが,

日本国民の意見を聞いてください
というものです。自分のブログにコメント欄を設け,コメント欄への投稿を踏まえたエントリーを時にアップロードする河野議員は,日本国民の意見をかなり聞いてくれる政治家の一人だと思います。

 その次が,

ODAって外国に援助金として渡すやつですよね?ODA要らない国にODAを渡すのはどうかと思います。特に中国なんかは宇宙へ有人ロケット飛ばせるようになったのですし、今年は五輪を開催しました。ぜひODA予算の見直しをしていただきたいと思います。
というものです。元エントリーは,まさにODA予算の見直しをこれからしていきますよというものです。

 次はメタなコメントなのでとばして,5番目のコメントが,

今度は中国に更に税金を投入するための悪行で すか?
 日本人のために仕事しろよ。
というものです。「自民党無駄撲滅プロジェクトチーム」でODA予算を取り上げるといっているわけですから,ODA予算の削減を目指す方向で動くのだろうなと普通は考えると思うのですが,それを「今度は中国に更に税金を投入するための悪行」と認識される方に掛ける言葉というのは,きれいな言葉としては見あたりません。6,7番コメントも,エントリーの趣旨を理解されていない気がします。

 8番コメントは,

国籍法改正に対してこれだけの批判が集まっているんだ。しっかり対応しろ。
というもので,またエントリーを無視したコメントです。この直前のエントリーで「国籍法 Q&A その2」を公表している河野議員は,しっかり対応している議員の一人だと思います。国籍法改正に反対している城内実元議員が反対論への懐疑論者に対して取っている行動と比べてもよほど立派です。

 9番コメントは,前半は二重国籍の話であり,これまたエントリーと関係がありません。後半は,

ODAの無駄を省くことより、アジア開発銀行からの中国融資を止めてください。
ODAは注目されるから、議論になりやすいですがアジア開発銀行は国民はほとんどしりません。
この第2のODAの中国融資は必要ありません。
とのことで,ようやくエントリーと対応したないようになりました。ただ,ODAに関心のある人には知られている話であり,「自民党無駄撲滅プロジェクトチーム」においてODA問題を取り上げようという方は当然知っているのではないかと思いますが。

 次はまた,

いったい君は外国人に国籍あげるとか
  中国にいくらお金をばら撒くとか
  そんなことするために政治家になったのか?
  いい加減にしたまえ
というものです。しかし,このエントリーは「自民党無駄撲滅プロジェクトチーム」としてODAを取り上げるというものです。

 11番コメントは,

外務省とODA予算…ですか?
「あの」河野洋平の子供の河野太郎様が宣伝する…ですか?

寝言は寝てから言った方がいいですよ。
寝言を起きながら言うから、血税が韓国に大量投入されたわけです。
…って、これは「お父様」の河野洋平への意見でした。
間違えました、あなたは河野太郎大先生でしたね。
ただ、言論封殺はよく似てますよ。
証拠さえなければ、好きなことをやっていいというリベラリズムもよく似てますよ。
というものです。コメントを書いている途中でブログ主以外の者への意見になってしまっていることに気がついたらその投稿を回避するというのがまともな大人の行動だと思うのです。また,この方は,どこでリベラリズムの定義を上記のようなものと認識するに至ったのか不思議です。リベラリズムは一般に,他人に危害を加えないことであれば,堂々と,好きなことをやってもよいとする思想であって,「証拠さえなければ」云々というものではありません(だって,それでは,「証拠を突きつけられたら弾圧されても仕方がない」ってこと担ってしまうではないですか。)。

 次は,

とりあえず、誤解とか言うんならテレビで、わかりやすく、かつ包み隠さず放送して見せてくださいよ^^
できないとは言わせませんよ^^
いっぱい金もらってるんでしょ?
買収でも何でもして番組枠買いとって放送してください^^
とのコメントですが,何を放送するかは各テレビ局が判断することであって,河野太郎議員がどうこうできる話ではありません(そして,いわゆる「産経ネタ」は,これに強く関心を示す層が量的に少なく,またスポンサー的にもおいしくないので,系列のフジテレビを含めて,あまり取り上げたがらないのも事実です。)。また,特定の政治家が番組枠を買い取るということは,放送法上の問題がありますし,実際どこのテレビ局も売ってくれないように思います(アメリカとは違うのです。)。「できないとは言わせませんよ^^」といわれても,「できない」としかいいようがありません。

 ここまで約35分といったところです。で,河野太郎議員はそのブログの炎上を回避する方法があったのかというと,これらのコメントはそもそもエントリーを読みそして正しく理解した上のものではありませんから。コメント欄を閉鎖する以外にはなかったように思われます。しかし,それは,河野議員の本意ではないでしょう。

22/11/2008

判例は読んでから引用しよう。

 

日本の認知制度は血統主義ではなく「意思主義」

「真実自分の子ではない(たとえば二股女性とつきあってた別の男性の子)と知っているが、それでもかまわない。自分の子にしたい」というのを広く認めるのが判例・通説(血統主義・真実主義は学説でもほとんど皆無)

との嘘を垂れ流しているエントリーがあります。

 しかし,最判昭和53年4月14日判時894号65頁は,認知者の妻及び子の被認知者を相手方としてする認知無効確認請求が、たとえ被認知者の実母である右妻において認知後五十数年の間、認知者と被認知者との不真実の親子関係を放置しており、かつ、認知者の死亡後になされたものであるとしても、右請求権の行使は信義に反せず、したがつて権利の濫用に当たらないとした原審の判断を是認しており,生物的父子関係のない相手を認知してもその認知は無効であるとするのが判例です。

 このブログ主は,日本の認知制度が「意思主義」であるとする根拠として「平成18年07月07日 最高裁判所第二小法廷」を引用します。しかし,この判例の事案は,嫡出子に関するものであって,「認知」は関係がありません(嫡出子についての親子関係不存在確認請求については,嫡出否認訴訟の出訴期間が,夫がこの出生を知ったときから1年以内とされている(民法777条)こととの関係で,いろいろな考え方があり得ます。)。

 なお,このブログ主は,自身が引用された最高裁判例の判決文を読みさえすれば,そこでは,

実親子関係不存在確認訴訟は,実親子関係という基本的親族関係の存否について関係者間に紛争がある場合に対世的効力を有する判決をもって画一的確定を図り,これにより実親子関係を公証する戸籍の記載の正確性を確保する機能を有するものであるから,真実の実親子関係と戸籍の記載が異なる場合には,実親子関係が存在しないことの確認を求めることができるのが原則である。

とした上で,

真実の親子関係と異なる出生の届出に基づき戸籍上甲乙夫婦の嫡出子として記載されている丙が,甲乙夫婦との間で長期間にわたり実の親子と同様に生活し,関係者もこれを前提として社会生活上の関係を形成してきた場合において,実親子関係が存在しないことを判決で確定するときは,虚偽の届出について何ら帰責事由のない丙に軽視し得ない精神的苦痛,経済的不利益を強いることになるばかりか,関係者間に形成された社会的秩序が一挙に破壊されることにもなりかねない。そして,甲乙夫婦が既に死亡しているときには,丙は甲乙夫婦と改めて養子縁組の届出をする手続を採って同夫婦の嫡出子の身分を取得することもできない。そこで,戸籍上の両親以外の第三者である丁が甲乙夫婦とその戸籍上の子である丙との間の実親子関係が存在しないことの確認を求めている場合においては,甲乙夫婦と丙との間に実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ,判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより丙及びその関係者の被る精神的苦痛,経済的不利益,改めて養子縁組の届出をすることにより丙が甲乙夫婦の嫡出子としての身分を取得する可能性の有無,丁が実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び請求をする動機,目的,実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に丁以外に著しい不利益を受ける者の有無等の諸般の事情を考慮し,実親子関係の不存在を確定することが著しく不当な結果をもたらすものといえるときには,当該確認請求は権利の濫用に当たり許されないものというべきである。
と判示されており,事実主義を貫くことが当事者に非常に酷となる場合の救済的な意味合いをもった裁判例であることが理解できるのではないかと思います。

 なお,このブログ主は,

2008年 国籍法改正施行。施行と同時に毎日数十万人単位で認知。
 父親と名乗るホームレス・多重債務者が区役所に押しかける。認知は意思主義のため取締り断念。
 中国人満載のフェリーで続々来日。乗員全員が「19歳11か月」との公証を携えて来た。新日本人となる

と想定されているのですが,出生時に母親が既婚であれば,当時の母親の配偶者との間に親子関係が存在しないことを確定しなければいけませんので,すぐに認知届を受け取ることは難しそうですし,中国は戸籍制度がありますので,「『19歳11か月』との公証を携え」てもそれだけで「19歳11カ月」として扱ってくれるかっていうと多分に疑問です。また,役所というのは一般に形式的審査は得意なので,出入国記録等から,当該子の母親と当該子を認知しようとする者が当該子の出生時から推測される妊娠時に同一国・地域に所在していたことが明らかになっていなければ,書面審査だけで認知届をはねのけるのではないかと思います。そうすると,「ホームレス・多重債務者」では荷が重そうです。

国籍法改正とDNA鑑定〜ドイツでの議論

 産経新聞が次のような報道をしています。

 国会図書館によるとドイツでは1998年、父親の認知と母親の同意だけで国籍を取得できるようにしたが、これが悪用された。滞在許可期限が切れた外国人女性が、ドイツ国籍のホームレスにカネを払い、自分の子供を認知してもらってドイツ国籍を取得させ、それにより、自分のドイツ滞在も可能にする-などの事例がみられた。
 このため今年3月、父子間に社会的・家族的関係がないのに認知によって子や母親の入国・滞在が認められているケースに限り、認知無効を求める権利が、管轄官庁に与えられた。

 ただ,この記述は不正確であって,1998年に行われたのは国籍法の改正ではなく(父親のみがドイツ国籍を有する場合に父親の認知のみで子にドイツ国籍を与える旨の法改正がなされたのは1993年),父子間に生物的な親子関係がなくとも社会的・家族的関係があれば父親がこれを認知し,法的な意味で親子として認める家族法の改正です(国会図書館調査及び立法考査局発行の「外国の立法」2008年4月号に掲載された齋藤純子「【ドイツ】 偽装父子関係の認知無効を可能にする法律」にはちゃんとそう書かれています。もっとも,ここで紹介されている「2008 年3 月13 日制定の「父子関係の認知無効のための権利を補足する法律」の具体的な条文が日本文又は英文で見あたらないし,そのような法律が制定されたことを示す資料自体,他に見あたらないのですが。)。で,今年3月の法改正も,上記記述による限り,この枠組み自体は壊すことを意図していないので,認知に際してDNA鑑定を必須とすることは想定されていないように思います。

 ドイツでも,父親のみがドイツ国籍を有する場合に父親の認知のみで子にドイツ国籍を与える旨の法改正を行った際には日本と同じような異論があったようなのですが,結局,二宮周平「国籍法における婚外子の平等処遇」によれば,ドイツへの移民を目的として濫用される危険性についても、「国籍法における父子関係の確認について、家族法と異なった基準を用いることは、ほとんど考えられない。嫡出子の血縁による国籍取得も、家族法上の規定にもとづいて規律されているのである」と述べ、家族法における父子関係の成立の基準に従うことを明言したようです。そして,この考え方は,2008年3月の法改正後も変わりません。

 なお,生物学的な父子関係の有無を証明するためにDNA鑑定を行う際になすべき配慮については,「外国の立法」2008年5月号に掲載されている,「【ドイツ】 父子関係確認の新たな手続―民法改正」という報告書が参考になります。当該の子又はその法定代理人の認識及び承諾のないまま行われたDNA鑑定は、子の有する情報の自己決定権(一般的人格権の内容として基本法第2条第1項、第1条第1項で保障される)を侵害するものであり、その結果を嫡出否認の裁判手続において証拠として用いることはできないとの連邦憲法裁判所の判断がまずあり,これを受けて,.法律上の父、子及び母の三者は、それぞれ他の二者に対して、嫡出否認の手続とは別個に、遺伝子上の血縁関係の調査を行うことを承諾し、当該調査にとってふさわしい遺伝子上の検体の採取を受忍することを求めることができる。承諾が拒否された場合には、家庭裁判所は承諾に代わる裁判を行い、検体採取の受忍を命ずることができるということと,ただし、上記請求を行った者の利益を考慮してもなお、父子関係を争うことの結果が期待可能な限度を超えて年少の子の福祉に著しい害をもたらす場合には、当該請求は認められないということを中核とする家族法の改正を行ったということです。

20/11/2008

子供が日本国籍なら虐待していいというわけではない。

 城内みのるという元国会議員が奇妙な内容のエントリーを立ち上げています。

 まず,

警察官:「ちょっと、ちょっと。あんたたち、いま手をひっぱっている女の子たち、おびえて泣いていますよ。虐待はやめなさい。」

男:「なにゆうてんねん。このこらはわしの娘や。自分の娘どうしつけようと勝手やろ。なあおまえ。」

という時点で「ダウト」です。

 少なくとも我が国では,たとえ親であろうとも児童を虐待することは法律で禁止されています。ちなみに,「児童虐待の防止等に関する法律」は,こちらで見ることができます。児童虐待防止法に関しては,城内さんが国会議員であった平成15年から平成17年の間に4回も改正されていますので,城内さんも見覚えがあるのではないかと思うのですが。

 さらに,城内さんはつぎのように続けます。

男:「なんやと、わしの家内は日本人やで。二年前に日本国籍とったで。中国人ちゃうで。それにこの8番目と10番目の娘もわしがきちんと国籍法の改正にのっとって認知した子やから、正真正銘の日本人や。どうやまいったか。」

 しかしながら,子供が日本国籍であるということは,親が子供を虐待することを正当化する要素たり得ませんので,虐待されている子が「正真正銘の日本人」であることを示されても,警察官は「参る」必要がありません。ある種の人々の間では,日本国籍を有する児童であれば虐待しても構わないと信じられているのでしょうか。なんだかとても自虐的ですね。

 後,細かいことを言いますと,「認知」は民法および戸籍法の定めに則って行われます。っていいますか,この人は,国籍法で定める領域と民法・戸籍法で定める領域とが区別できているのでしょうか。

19/11/2008

FJneoさん,おめでとう

 FJneoさんが,旧司法試験に合格されたようです。おめでとうございます。

 先に司法試験に合格している者としてアドバイスをするとすれば,会社にお願いして,司法修習を受けさせてもらった方がよいということです。旧司法試験合格者対応の司法修習はあと2回分しかないということもありますが,企業法務を行う上で,刑事事件をちゃんと見ておくということと,左翼系の弁護士とざっくばらんに語り合える機会をもつということは,結構プラスに働くからです(そういう意味で,渉外系や企業法務系の事務所の訪問にばかり忙しくて,左翼系の大御所の事務所への事務所訪問等を行っていない修習生とかは勿体ないことをしているなあというのが,私の正直な感想です。法曹三者は,修習生に対しては,かなりざっくばらんな話をする伝統があり,同じ話は弁護士登録してからでは決して聞けなかったりするのですが。)。

 それはともかく,法曹養成制度改革の一つの目的は多様な人材を法曹に迎え入れるということにあったと思うのですが,FJneoさんのケースでも明らかなとおり,企業勤めしている方にとっては,会社を辞めて法科大学院に入学するというのは却ってハードルが高いわけで,旧司法試験を完全に廃止してロースクール制度一本に絞った場合は,人材の多様性は却って犠牲になってしまうことがほぼ明らかになってきたように思います(法科大学院制度の導入によって,従前の司法試験制度の下では決して司法試験に合格しなかったようなレベルでも新司法試験に合格できるようになったということで,学力の多様性はもたらされたわけですが。)。

 そういう意味では,旧司法試験枠をこれからの数百名程度残してもらうと,その中から,学力ではなく,社会経験が多様な人材が輩出されてよいのではないかという気がしてなりません。もちろん,予備試験枠があるという話はあるのですが,どんなに親に金が余っていても,どんなに親がよい顧問先をたくさんもっている法律事務所を経営していても,本人の学力が不十分だと弁護士になれないという点を除き,旧司法試験下の法曹選抜に特段の問題はなかったわけですから,予備試験なんて屋上屋を重ねるようなことはやめて,旧司法試験枠を残していただくのが素直だと思うのです。

 新人を採用する法律事務所の立場から見たって,学力を重視したいか,出身階層を重視したいかで,旧試験組を採用するか,新試験組を採用するか決めることができるので,それはそれで助かるわけですし。

18/11/2008

国籍法3条1項を合憲限定解釈した件の最高裁判決の事例

 国籍法3条1項を合憲限定解釈した件の最高裁判決の原審判決を見て,この最高裁判決やこれを受けての国籍法改正が,どのような人の救済を図ったものか見てみることにしましょう。

 第一事件原告Aは,平成9年7月10日,フィリピン国籍の母Bの子として日本で出生し,日本で育った。原告Aは,日本国民であって,父である甲野太郎に対し,自らを認知することを求めて千葉地方裁判所館山支部に提訴したところ,その後,甲野太郎は,平成13年12月12日,原告Aを認知した。

 第二事件原告Cは,平成9年9月28日,フィリピン国籍の母Dの子として日本で出生し,日本で育った。原告Cの父であって,日本国民である乙山次郎は,平成10年11月4日,原告Cを認知した。

 第三事件原告Eは,平成6年1月18日,フィリピン国籍の母Fの子として日本で出生し,日本で育った。原告Eの父であって,日本国民である丙川三郎は,平成12年8月16日,原告Eを認知した。

 第四事件原告Gは,平成9年8月21日,フィリピン国籍の母Hの子として日本で出生し,日本で育った。千葉地方裁判所は,平成12年8月30日,原告Gが日本国民である丁木四郎の子であることを認知する旨の判決を言い渡し,同判決は,同年9月13日に確定した。

 第五事件原告Iは,平成8年10月10日,フィリピン国籍の母Jの子として日本で出生し,日本で育った。横浜地方裁判所相模原支部は,原告Iが日本国民である壬村冬男の子であることを認知する旨の判決を言い渡し,同判決は,平成13年7月26日に確定した。

 第六事件原告Kは,平成10年7月15日,フィリピン国籍の母Lの子として日本で出生し,日本で育った。水戸家庭裁判所土浦支部は,平成14年6月4日,原告Kが日本国民である戊谷五郎の子であることを認知する旨の審判をし,同審判は,平成14年6月27日に確定した。

 第七事件原告Mは,平成7年10月12日,フィリピン国籍の母Nの子として日本で出生し,日本で育った。原告Mの父であって,日本国民である己田春男は,平成15年3月20日,原告Mを認知した。

 第八事件原告Oは,平成6年1月27日,フィリピン国籍の母Pの子として日本で出生し,日本で育った。原告Oの父であって,日本国民である庚町夏男は,平成6年2月22日,原告Oを認知した。

 第九事件原告Qは,平成11年10月12日,フィリピン国籍の母Rの子として日本で出生し,日本で育った。東京家庭裁判所は,平成12年10月23日,原告Qが日本国民である辛浜秋男の子であることを認知する旨の審判をし,同審判は,平成12年11月7日に確定した。

 ということで,9人中,判決で認知されたのが2件,家裁の審判で認知されたのが3件,訴訟を提起された後に任意認知をしたのが1件,それ以外の任意認知が4件です。任意認知のうち,この出生後3カ月以内に認知がなされたのは第8事件のみです。

 現実感に乏しい妄想と闘う自分に酔いしれる前に,このような同胞の不始末により生じた子供達の困難を,我が国が,いかにして救えるかということに思いを至らせることができる人間になってもらいたいと思う今日この頃です。

 なお,念のため付言すると,今回の国籍法改正に反対される方には敗戦前の日本を高く評価されている方が多いようにお見受けされますが,敗戦前に適用されていた旧国籍法では,日本国民である男性が認知をしたら,出生前認知であろうと出生後認知であろうと,日本国籍を取れるようになっていたわけで,日本国民の血統を継承しない者が日本国籍を取得してしまうことよりも,日本国民の血統を継承する者が日本国籍を取得できなくなることを恐れていたということができます。

17/11/2008

国籍法改正問題とDNA鑑定

 国籍法第3条第1項の改正との関係で,同項による国籍取得の要件としてDNA鑑定での父子関係の立証を要件にせよとの声も上がっているようです。しかし,そうしてしまうと困るのは,強制認知との関係です。

 例えば,日本国籍を有する男性Xと日本国籍を有しない女性Yが一時同棲状態となり,その間,Yは妊娠し,そのことを告げるやXはYの元から逃げ出していったというありがちな事例を考えてみましょう。YはZを出産し,Zの法定代理人として,Xに対してZを認知せよという訴訟を提起したとします。

 現行法上は,所詮民事訴訟にすぎない認知請求事件でDNA鑑定のための細胞採取等を強制する手続はありませんので,XがDNA鑑定を拒んだ場合,Yにはこれをなす手段はありません。ただし,そのような科学的裏付けが得られなかったからといって認知請求を認容することは可能ですので(東京高判昭和57年6月30日判タ478号119頁),Zを妊娠したと思料される期間内にYがX以外の男性と性的関係を結んだことが明らかにならなければ,認知請求が認められることは十分にあり得るでしょう。まあ,任意認知の場合のみDNA鑑定による親子関係の立証を要求するというのは,実務レベルの準則では可能だと思いますが,それを法文に盛り込むのは如何なものかなあ,という気がしなくもありません(いわゆる「縦書き」案をさっと作ってみると判ると思いますが。)。

 で,国籍法第3条第1項による国籍取得においてDNA鑑定を要件とした場合,Zは,同項による国籍取得が適わないということになります。では,そのようないい加減な日本人男性の子供を,日本国は見捨ててもよいのかということが問題となります。そのような事態に憤りを覚えない人を「民族主義者」と呼ぶことを私は憚ってしまいます。

 さらにいえば,わが国では親子関係に関してはそれほどDNA的な繋がりを重視していない(代理母を利用して子供を出産した場合,遺伝的な繋がりはない代理母の実子という扱いをしているし,推定される嫡出子について提訴期間経過後の親子関係不存在確認訴訟について,最判平成12年3月14日判時1708号106頁は,いわゆる外観説に立っていたりします。)のに,国籍法第3条第1項との関係のみ突然「科学的鑑定絶対!」みたいな扱いをしてしまうのも,バランスを欠いているのではないかという気がしてなりません。

16/11/2008

国籍法3条1項の改正に反対することはエネルギーの無駄である

 最高裁判所の違憲判決を受けて行われている国籍法改正について,相変わらずの人たちによる反対運動がネットを中心に熱心に行われているようです。

 ただ,なんだか無駄なエネルギーを使っているようにしか私には見えません。というのも,上記国籍法改正を阻止できたところで,彼らが望んでいる社会にはならないからです。

 最判平成20年6月4日判例集未登載(但し,最高裁のウェブサイト等でダウンロード可)の判決文を見てみれば,そのことは明らかです。最高裁は,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し,父から出生後に認知されたにとどまる子についても,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したことという部分を除いた同項所定の要件が満たされる場合に,届出により日本国籍を取得することが認められるものとするという解釈を,国籍法3条1項の合憲的で合理的な解釈として,現行国籍法の解釈として,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し,父から出生後に認知された子は,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分を除いた国籍法3条1項所定の要件が満たされるときは,同項に基づいて日本国籍を取得することが認められると判示し,その上で,第一審判決(東京地判平成18年3月29日判タ1221号87頁)を破棄した原審(東京高判平成19年2月 27日判例集未登載)を破棄し,第一審でなされた確認判決(第一事件から第九事件までの各原告らが日本国籍を有することをいずれも確認する。)を確定させたわけです。

 従って,国籍法の改正を阻止したところで,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し,父から出生後に認知された子であって,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分を除いた国籍法3条1項所定の要件が満たされるものについて,国籍取得届が出されたときには,法務局がこれを認めないとの通知を発することは事実上できないのです。なぜなら,そんなことをすれば,上記裁判と同様の裁判を提起され,その場合には,国が敗訴することが明らかだからです(注1)。

 すなわち,上記国籍法改正を阻止してみたところで,法務局を困らせることにしか繋がらないのであって,仮にこの反対運動並び右派国会議員等からの圧力に屈してこの種の国籍取得届に対して国籍取得を認めない旨の通知を発する法務局が現れたところで,子供の親と法務局と裁判所に訴訟のための無駄な費用と労力をかけさせるだけに終わるのです(最高裁の大法廷で下された合憲限定解釈に敢えて逆らおうとする下級審というのもあまりいないように思いますし。)。

 ある種のゼノフォビアのために,国に無駄な仕事をさせようとする人々を,「愛国者」と呼ぶことに,私は大いなる躊躇を感じます。

注1
 そういう意味ではわざわざ国籍法3条1項を改正する必要はないのですが,でも,最高裁判決での合憲限定解釈があったことを知らないと正しく読めないという状況は本来望ましくないので,最高裁の解釈通りに読めるように条文を改めるっていうのは,方向としては正しいのです。

15/11/2008

「成功報酬の先払い」って何?

 落合先生も言及されていますが,

 訴えによると、パチンコ景品交換業者(故人)は2005〜06年に金沢国税局の税務調査を受け、地方税も含めて約77億円を追徴課税された。杉井弁護士らのグループに対応を依頼したところ、「異議申し立てによって、追徴税額は約64億円減額されて約13億円に収まる」と言われたため、成功報酬の先払いなどとしてグループに計3億1000万円を支払った。
との事件は,生粋系でない弁護士にありがちな「急ぎ働き」傾向が垣間見える事件です。

 私のような生粋の弁護士からすると,「成功報酬の先払い」を請求するという考え方が信じられません。なぜなら,成功報酬って,一定の結果が成就した暁に,その結果に対していただくものであって,どのような結果が成就するか不確定の段階では成功報酬が発生するか否かさえ未確定だからです。

 しかも,上記報道を見る限り,異議の申し立てにより追徴税額を約6分の1に減額するというのが成功報酬の対象となる「結果」ですから,これが成就する可能性というのは,さほど高いものではなく,なぜこの案件で,上記「結果」が必ず生ずることを前提とした成功報酬の先払いなんて話になるのか,たいそう疑問です。

 依頼者の支払い能力や支払い意思に疑問がある場合に成功報酬相当額を預かり金としてプールしておくというのはあり得なくはないですが,その場合,結果が芳しくなかった場合には,その結果に対して支払われるべき成功報酬額との差額は速やかに返還すべきということになります。まあ,一部勝訴の場合の成功報酬額については依頼者との協議が難航する場合がありますので,これが解決するまでの間精算が滞るということはあり得なくはないですが,約3億1000万程度しか追徴額が減額されなかったのに,先払いを受けた計3億1000万円という成功「報酬額が過大だとは考えられない」とは,少々考えがたいです。

自分たちだけ税引き後の金額を示して「実質所得は高くない」ということはフェアなのだろうか

 日本医師会総合政策研究機構の前田由美子氏の「『医療経済実態調査結果速報-平成17 年6 月実施-』に関する分析」には,次のような記述があります。

このように計算上控除可能なものを差し引いただけであるが、その結果、有床診療所では年間の収支差が2,849 万円(月額237 万円)【16 頁】といっても、開業医の年収相当額は1,022 万円以下、無床診療所では年間の収支差が2,728 万円(月額227万円)【16 頁】といっても開業医の年収相当額は1,121 万円以下と計算された。
 なお、キャッシュフローという意味では減価償却費を加えたものが手元に残っているが、キャッシュフローの中から設備投資および設備投資のための積み立ても行っていかなければならない。平均的な開業医の可処分所得は最終的には1,000 万円を切ることは明らかである。

 しかし,これは明らかにまやかしの議論ですね。一般に,年収に関する統計処理を行う場合には,そこでいう「年収」は税込みの「年収」を用いるわけです。何で開業医の「年収相当額」だけ,税引き後の数字を用いるのでしょうか(まさか,開業医以外は所得税や住民税を支払っていないと思っていないですよね>前田さん)。

 また,退職金相当金についても,有床診療所で128万円,無床診療所で140万円というのは,一般サラリーマンと比較するつもりならば多く積み過ぎであって,大卒で60歳定年の場合の退職金の平均は2400万円程度ですから,1年平均で63〜4万円位を会社に預けている計算にしかなっていないのです。

 設備投資のための借財の返済金はサラリーマンは負担しないものであるという点を酌んだとしても,サラリーマン等の「年収」にあたるのは,有床診療所で2264万円,無床診療所で2311万円ということになります。

 上記報告書はさらに,

なお、キャッシュフローという意味では減価償却費を加えたものが手元に残っているが、キャッシュフローの中から設備投資および設備投資のための積み立ても行っていかなければならない。平均的な開業医の可処分所得は最終的には1,000 万円を切ることは明らかである。
とあるのですが,借金をして購入した設備に関しても減価償却の対象となる以上,減価償却分を全て次の設備投資のための積立金と同視して,借財の返済金とは別に,「キャッシュフロー」から控除して,「実質的可処分所得」を算出するのがフェアだとは思えなかったりします。

銀のスプーン

 それにしても,ブッシュ大統領が去り,オバマが大統領に就任すると,G8には,いわゆるボンボン政治家は日本の麻生首相だけになってしまいそうです。

 政治家の二世がほかにいないというだけではなくて,裕福な家庭で育ったということすら他にいないかもしれません(カナダのハーパー首相は親御さんが会計士なのでそれなりに裕福だった可能性はありますが,あとは牧師とか大学教員とかが多いですね。)。G8諸国にかぎらず,民主化された国では,苦労知らずの政治家2世の最高指導者というのは珍しいようです。拡大会合参加国に目を向けても,軍人出身のユドヨノ・インドネシア大統領や,労働組合出身のモラ・ブラジル大統領や,そもそも人種隔離される側だった南アのモトランテ大統領はもちろんのこととして,韓国の李明博大統領やインドのシン首相,オーストラリアのラッド首相,胡錦濤・中国国家主席も「家は貧しかったけど,無茶苦茶優秀だったので,若くして頭角を現した」系ですね。しいていえば,メキシコのカルデロン大統領くらいでしょうか。

 そういう意味では,ブッシュ大統領が去ってしまうと,日本の最高指導者は国際会議等で孤立してしまわないか心配になってしまいます。

 その分,これらの国の最高指導者は,インテリが多く,子供のころから商才に長け1代で財閥を作ってしまったベルルスコーニは別格としても,弁護士や研究者を前歴とする方が多いですね。ここでも異彩を放つのは,元コンピュータ・アナリストであるハーパー首相です。ハーパー首相にしても,アイスホッケーの歴史についての書籍や雑誌記事を書くのが趣味ということで,インテリっぽいところがありますが。

 自国のトップが満足に自国語の表記を読めなことを馬鹿にするというのは小ブッシュ政権下でのインテリの憂さ晴らしの一つだったと思うのですが,そんなことが期待できるのは,G8では日本だけになるかもしれません。

11/11/2008

無邪気の勝ち

 田母神論文問題等を見ていて,昭和初期の日本は悪いことをしていない或いは日本だけが責められるいわれはないと声高に主張したがっている人は何がしたいのだろうかと,疑問に思ってしまいます。

 そのような主張をする人々がそのような主張をすることによって日本の対外的な評価を高めたことはこれまでもなかったのだから,おそらく同じようなことをやっても日本の対外的評価を高めることもないだろうということは,概ね見当が付くのだろうと思うのですが。

 日本の対外評価を高めるという点に関しては,名前が同じだと言うだけで無邪気にオバマ候補を応援してしまう小浜市民の方がよほど役に立っていることにいい加減気がつけばいいのに,と心より思ってしまいます。

10/11/2008

「医療水準と医療の裁量性──福島県立大野病院事件・福島地裁判決を中心に」

 法律時報80巻12号70頁以下に小林公夫・明治大学法科大学院教育補助講師の「医療水準と医療の裁量性──福島県立大野病院事件・福島地裁判決を中心に」という論文が掲載されています。

 この中で,小林講師は,下級審裁判例を検討した結果として,裁判所の過失判断においては,

医師の行為当時の事実上の行動基準が一応の合理性を持っている限り,行動基準に従った行為について刑法的違法性を肯定することには慎重ではならないとの考えが,内在している
のであり,
その意味から,大野病院判決において裁判所が,一部の医学書およびC鑑定に依拠する検察側主張を退け,被告医師の行為当時,同一領域で産科医療に従事する臨床医の"行為群",換言するならば"医療群"がいかなる「行為のベクトル」を形成していたかに目を向けた点は,意義深い
としています。医療過誤刑事に関する裁判その判断基準が概ねこのようなものであるならば,いかなる"医療群"が形成されているのかは客観的な立証が可能であるし,いかなる"医療群"が現時点で形成されているのかを医学系の学会等が把握し,そこから抽出される行為基準を明文化することにより,ある程度の予測可能性を確保することもできるかもしれません(もちろん,"医療群"は時とともに変化しうるものであり,かつ,行動基準に係る文章が変化するのは"医療群"の変化よりもある程度遅れざるを得ないことを考えると,明文化された行為基準を遵守していれば常に過失なしとされるわけではないでしょうが。)。

09/11/2008

新人弁護士を助教に採用しようという福岡大学医学部の実験

 読売新聞によれば,福岡大学医学部は,2009年度から、今年の12月に弁護士資格を取得予定の,薬剤師として約11年の勤務経験を有する女性を消化器外科の助教に迎え,「医療訴訟など医事を巡る紛争の増加に対応するため、弁護士を研究職の教員として採用する方針を決めた」とのことです。

 「トラブル発生の際、第三者的な立場で病院と患者から意見を聞き、手術経過などを分析して法的問題を指摘する」ことが予定されているとのことですが,福岡大学医学部の大学病院で起こった医療事故について,福岡大学医学部の助教から,「それは,不法行為は成立しませんよ」とか「あなたのお父さんは所詮死ぬ運命だったのであって,これは事故ではないんですよ」みたいなことを言われて,果たして遺族は納得するのだろうかと考えると,これって,この助教さんが,「第三者的な立場で病院と患者から意見を聞」いた結果医師に過失ありと言うことになったときに訴訟になる前に賠償金を支払うという場面でしか役に立たないような気がします。

 で,研修所を出たての元薬剤師たる助教が「これは賠償しないといけませんよ」と第三者的に意見を述べたら,ベテラン医師からなる教授陣は素直に従うのでしょうか。

ボツネタの終了

 岡口裁判官の「ボツネタ」が明日で終了してしまうそうです。

 結局,「匿名であればコメント欄でやりたい放題」というシステムの下では,有益な情報を提供するブログ等が潰されていってしまうということの一つの証座なのでしょう。こういうことをいうと,有益な情報の提供は既存メディアでやればいいみたいな反論がくるかもしれないですが,卑怯者に場を支配され,「良貨」が駆逐され又は萎縮する情報スペースなんてなんの意味があるのか大いに疑問です。

 「荒らしは荒らされる方に問題がある」云々といって却って被害者の側を非難する言動がネット世論では声高に叫ばれがちですが,今回の件に関して言えば,岡口さんは,特にこの「荒らし」の方を不当に刺激するようなことはいってはいませんので,あとは東大法学部卒の裁判官がブログを開設すること自体の当否ってことにしかならないではないですか。そういう経歴の持ち主がブログを開設できないって,どんだけ嫉妬社会なんだという暗澹たる思いになります。

 ブログ事業者達は,一日も早く有効な「匿名の荒らしさん」対策を練るべきだと思います。

06/11/2008

医学部は6年制である必要があるのか

 医師の頭数を早期に増やさなければいけないとのことであれば,6年生ではない医学部を創設するということも検討するに値します。

 実際,米国などでは,4年制の医学部というのも結構多いのであって,米国でできることが日本でできないというためには,日本ではできない特段の事情を説明することが必要です。

 もちろん,米国の4年制医学部というのは,法科大学院と同様に,他学部を卒業していることが前提となりますから,新規医師資格取得者の年齢は上昇することとなろうと思いますが,その点はさほど重要ではないように思います。

 平均年収1400万円(主たる勤務先からの支給額でも平均1000万円以上)という所得レベルに魅力を感じる人は少なくないと思いますので,給付型奨学金を充実させれば,社会一般の労働環境を知っている人々が医療の世界にどんどんと進んでくるようになるかもしれません。そうなるのであれば,医師からの「俺たちの出す条件をそのまま飲まなければ俺たちは逃散するまでのことだ」との脅しにただ屈して,現在の開業医の所得水準を勤務医にも保証し,かつ,医療ミスによって患者が死傷しても患者またはその遺族が泣き寝入りするか若しくはその損害を公的資金で補償することとするよりは,安くつくのではないかという気がします。

米国大統領選

 米国大統領選の結果が出ました。外国人の反応は概ね圧倒的にオバマ>マケインなのに得票率だけ見ると52%対46%で意外と接戦であったことや,それでいながら「Winner Takes All」なので獲得代議員数では68%対32%になってしまうことなど,注目される点が多々あります。

 それでも,このような困難なときに,バラック・オバマのような複雑な背景をもった政治家が突如として現れ,「言葉」の持つ力で,ついに大統領選を勝ち抜いてしまうというところに,米国の底力を見た思いがします。

 Facebook等を活用してネットを前向きの選挙活動等に利用して「自分たちの候補」をついには大統領にまで押し上げてしまった米国のネット市民達を見るにつけて,シニシズムに満ちた後ろ向きの発言ばかりが目立つ日本のネット社会の行く末に悲しみを覚えてしまいました。

05/11/2008

人口あたりの医師の数が日本より遙かに多い国の医師の処遇

 人口あたりの医師の数がOECD諸国の中でギリシャに次いで2位のイタリア(日本の約2.1倍)は,医師の所得から強制控除額を差し引いた金額(ただし購買力平価で算定。以下同じ)は月額1928ドルです。日本のそれが月額3654ドルです(ただし,日本側の数字は勤務医のみを計算したものであって,勤務医よりも労働時間が短くて収入が2倍近い開業医を含んでいません。)から,イタリアの医師が週38時間働いているのに対し,日本の医師が週70時間働いてようやく時間単価としてとんとんになります(おおざっぱに1カ月4.5週と計算して,日本が約11.6ドル,イタリアが約11.3ドル)。同様に,人口あたりの医師の数が日本の約1.7倍であるポルトガルで約9.4ドルということになります。

 そういう意味では,日本の現在の勤務医の給与レベルというのは週70時間働くことを前提としたものと言いうるのかもしれません(それは,医師資格を持つ国会議員を通じたロビー活動等により医学部の総定員を削減させ,「供給」を絞った成果でもあります。)。逆に,今の給与水準のままで週40時間労働で収めることとした場合には,アメリカ,イギリスと並ぶ,医師達のパラダイスということになりそうです(米国と違って,医師賠責保険に年間数万円し払うだけで足りるのですから,そういう意味では米国以上に医師達のパラダイスができあがりそうです。)。

 もちろん,公的な社会福祉予算の大部分を医師に配分することになりますから,介護関係者や失業者にはその文地獄のような国になるとは思いますが。

04/11/2008

財産開示手続に関するアンケート

 日弁連が,財産開示手続に関するアンケートの結果を公表しています。

 司法制度の使い勝手をよくするためには,「逃げ得」「隠し得」を許さないことが大切であり,民事執行法上の財産開示手続の中で財産開示を拒んだり,虚偽の申告をしたりする債務者について,懲役刑を科すこととするのもやむを得ないかなという感じが確かにしています(罰金刑を科すこととした上で,罰金を支払わない場合には労役場送りというのもないわけではないのでしょうが,隠し財産に比して罰金額が低いと,やはり「隠し得」に終わってしまうような気がします。

 また,例えば,金銭債権に係る債務名義を履行しない者が,通常有償で行われてしかるべき業務を形式上無償または低額にすぎる報酬額で行っていることにしている場合には,一種の不作為による詐害行為が行われているものとして,その仕事との関係で本来支払われるべき報酬額について,当該債務者を使用している者に,債権の引き当てとして拠出させるような仕組みがあってもいいようには思います。

 某上場企業の子会社においては,多くの金銭債務を履行していないことが知られている特定の取締役から役員報酬は不要だと言われても,「君自身が我が社から一円もお金を受け取りたくないというのならばそれは構わない。しかし,君は,君の債権者の債権をできるだけ満足させる義務がある。よって,我が社としては,君に支払うべき報酬額を,経理上君に払ったことにして,君の債権者に配分することとする。それでいいね。」と言って聞かせるくらいの大人の精神が欲しいところです。

 これは,某社の株を購入して,株主総会でそういうお話をした方がよいのでしょうかって,考えてしまうところです(年初来最高値の4分の1くらいで買えるので,手が出ないわけでもないのですが。)。

03/11/2008

現状はプラスのようです。

 novtanさんは,

小倉先生は、「現状ですでに恵まれている、さらなる厚遇を求めているのか」とお考えのようです。それは給与の面にしか言及されないということである程度想像できます。でも、僕とかは「現状すでに状況はマイナスだ。せめてプラスといわないまでも0くらいに」と考えているわけですよ。

述べています

 医師という職業自体が「現状すでに状況はマイナス」だとするならば,「勤務弁護士→開業医」ではなく「医師→医師以外の職業」という流れが主流を占めるはずなのですが,「勤務医不足の原因が,勤務医から他の職業への人材の流出にある」という分析結果は今のところ目にしていません。また,医師になる以外にはほとんどつぶしのきかない医学部は,その多くが未だ高い入試偏差値を維持しており,私立に関して言えば高い授業料を徴収することとしてもなお,入学希望者がたくさんいるというのが実情です。

 また,

もう一度言っておくと、配分云々以前に今絶対頭数が足りてるのかということを検証したほうが良いんじゃない?ってことなんですが。僕は現状を何とかするためにもう少し医療費を出してよいと思っているのですが、そう思ってない人は、削減するための根拠の数字くらいは出した方が良いんじゃないですか?

とも仰っているのですが,医師自体の総数は医学部の定員と医師国家試験の合格レベルの設定の問題であって,医療費を増額したからって医師自体が増えるわけではありません。個別の医療機関における医師の頭数については,定員の設定自体が少ないところについては定員の設定を増やすことが可能ですが,都立墨東病院のように,十分な定員を設定したのにその定員を全然満たすことができないところでは,自治体としては手の打ちようがありません。まあ,阪南市立病院の例を見ていると,年収1300万円では医師は来てくれないが2000万円ならば来てくれるとのことで,まさに「銭ゲバ」体質のようにも見えますが,それはともかく,定員9のところ,1人あたりの平均年俸を1200万から2000万円に引き上げると,それだけで7200万円の支出増ということになります。

だから、適正な人数を確保して、その給与水準が医者になる努力と費用に対してインセンティブ足るものであり、それによって医療費が足りなくなるのであれば、医療費の増額が必要だし、削減出来るなら削減すればよいわけです。

とのことですが,墨東病院の例を取っても,自治体側は,適正な人数を定員枠として確保しており,給料だって,「医者になる努力と費用」との関係では十分報いるだけのものを用意しているわけです(都立病院医師でも,大学・大学院卒男子の平均年収より500万円程度多いので,私大医学部にいったとしても,5〜7年で投下資本を回収できます。)。しかし,開業医が楽して儲かる存在であることにより,相対的な評価により,平均1200万円ではやっていられないということになってしまうのです。で,り続ける現状の下,一般サラリーマンの3倍程度の収入では限り,勤務医の給与水準が一般のサラリーマンのそれからかけ離れた高額のものであっても,「自分たちは不遇である」という思いが消えない虞があり

公立の進学校ってそんなものだし,それで不都合がありますか?

 スポニチアネックスに次のような記事が掲載されています。

 橋下知事は商業高校の生徒らが研究成果などを発表する「第18回全国産業教育フェア大阪大会」に来賓として出席。「高校生の諸君にメッセージを発したい」と前置きして、自身が受けた教育について「(卒業後の)職業が全く意識させられない。学力も別に言われない。何でもかんでも生徒の自由。日の丸・君が代も全く教えられなかった」と説明した。

 しかし,彼は大阪府立北野高校という関西屈指の進学校出身だったはずであり,その種の学校ではほとんどの生徒が大学に進学するので,職業を意識した教育って,まあ,やらないでしょう。基本的には知識等はある子が多いので,特に学校で何かを教えなくとも,政府が日の丸を国旗,君が代を国歌として扱っていること,特に政府は日の丸・君が代を政府への屈従の証として活用しようとしていること,並びに日の丸の概ねのデザインおよび君が代の歌詞および主旋律くらいは知っているので,敢えて取り上げる必要もないわけです。

 橋下知事は,

さらに「頑張ったやつも評価されなかった。差がつくことはいけない、と。そうしたら『頑張ろう』という気力がなくなる。そういう教育はおかしい」と強調。
と述べたとのことですが,進学校の場合,外部模試での偏差値等で,教師がとやかく言わなくとも自分で順位ないしその変動を意識できるようになっているから,逆に言うと「頑張ったやつ」を教師が特に評価することは不要なのではないでしょうか。

 橋下知事は,「僕が受けた教育は戦後でも最悪だった」と述べたとのことですが,中低所得者層の子供は,公立高校の入試に失敗したら中卒で働け,と知事から言明される,そういう教育行政ほどはひどくはないのではないかという気がします。

02/11/2008

どんだけ衆愚だよ

 津田大介さんが次のようにつぶやいています。

ほんとバカだなあ。こういう議論を角度を変えてオープンな形で8回も地道にやってきたから延長が止まったんじゃないか。これにスター7個ってどんだけ衆愚だよ。http://tinyurl.com/69o3zy

 世の中を少しでも自分たちにとってよい方向に変えていく,あるいは,自分たちにとって悪い方向に変わらないように抵抗するって結構大変な話であって,ネットで「匿名」という安全圏に隠れて,自分たちにまつろわぬ者を嘲笑しながら偉そうなことをいっているだけでは実現しないのであって,それなりに汗をかきリスクを背負わないといけないわけです。そりゃ,もっとも声高な人たちすら,そのようなことを自分が言っていると知られたらやばいと思っている主張を誰が自らの名の下に代弁し,しかるべき部署や人々への働きかけを行ってくれるというのかっていう話です。

 矢部弁護士のブログのコメント欄では,一応法律家を名乗る人たちが,業務上過失致死罪の廃止云々と景気のよいことを言っていたようですけど,それだって,矢部弁護士のブログのコメント欄で気勢を上げて,あそこの医療系コメンテーターからお褒めをいただいて喜んでいるだけでは,それが実現する可能性はないわけで,例えば,今年の人権大会のテーマの一つが医療問題だったのですから,患者側の弁護士がたくさんいる大会会場において,医師にはもっと気楽に医療ミスをさせましょうという意見を出して賛同者を集めるくらいのことはするべきだったのだと思います。一応法曹資格を持って働いていると,法律問題に関して言えば,いろいろな手段でメディアに意見を発表する機会があるのだから,ちゃんと既存のメディアも活用すればいいのにね,って思ったりします。

予算に限りがある現実社会では,頭数の問題と給料の問題は切り離せない

 勤務医が不足することによる「医療崩壊」を防ぐために,「医師をもっと厚遇せよ,医師に特権を与えよ」という医療側の一連の議論は,上記「医療崩壊」を防止するためには,「勤務医→開業医」の流れを食い止め,逆に「開業医→勤務医」という流れを作りだそうというものだったと思っていたのでしたが,NOVTANさんのこのエントリーは,そこの根本の部分でちゃぶ台返しをしようというものです。

 いやまあ,きっと,「勤務医不足は,勤務医の給料が安すぎるのがいけないのだ。医療費を増額して勤務医の給与水準を引き上げろ」みたいな主張に対しても,お金の問題ではないと反論して下さるのでしょう。でも、医者の給料は高すぎる!給料を減らすべき!って考える人も当然いていいと思うわけです。だからといって、今の激務で給料まで下げるんなら辞めるって人がどのくらいいるかと思うとね。とNOVTANさんは仰っていますが,開業医の所得水準が大幅に下がれば,勤務医は病院勤務を辞めるともっと所得水準が下がることになるわけですから,現在のように,「治外法権を認めてもらえないなら病院勤めなどやめてやる!医療ミスで患者を死なせたからといって,患者の遺族が俺たちに感謝の意を表せず,むしろ俺たちを責め立てたり,俺たちに訴訟を起こしてくるのであれば,病院勤めなどやめてやる!」みたいなことって軽々しくできなくなるわけです(医療系の方々は,医師の所得水準がキー局の正社員やパイロットのそれより低いことに憤っておられるようですが,あちらの方がなるのが大変ですので,「こんな給与水準の低い勤務医など辞めてやる!明日から,キー局の正社員か又はパイロットになるんだ!」みたいなことをいってもそれは難しいように思います。)。

 また,novtanさんは頭数の問題なのに給料の問題に転化してしまってないですかね。とも仰っているのですが,頭数を確保するためには一人あたりの配分額は抑制しなければいけないのだということを,中学生程度の算数ができる人にはわかりやすく書いたつもりなのですが,理解していただけなかったことは残念です。公立病院などで,全ての医師が週40時間労働で済むような人員配置を,同水準の開業医の現在の所得水準と同等か又はそれ以上の給与水準の下で行う余裕があれば,給料の問題を考えずに頭数の問題を考えることが出来るのかもしれませんが,そんな余裕など現実にはどこの自治体にもありません(橋本知事を支持されるような方は,私学助成を撤廃して,公立高校の入試に失敗した中低所得者層の子供達には自己責任として中学卒で働いてもらえば,財源が確保できるではないかと仰られるかもしれませんが,それはそれで大阪以外では非現実的な話です。)。現在の勤務医の平均年収(1400万円)を維持した状態で週40時間労働の厳守というのも財政的に無理でしょう(既に,一般の賃金労働者の3人分,大卒・院卒男子の賃金労働者の2人分の所得水準なのですから)。したがって,勤務医の望みが真に労働時間の短縮にあるのであれば,給与水準の引き下げは受け入れざるを得ないように思います。

全国教育問題協議会の統計処理能力

 産経新聞の阿比留記者は,全国教育問題協議会の教育研究大会での山梨県の現役教員の発表を引用する形で,次のように述べています。

 それによると、この期間の山梨県教組各支部の委員長、書記長、財務部長ら役員計138人のうち、管理職の対象年齢に達していない13人を除く125人について追跡すると、
1. 36人(28.8%)が県教育委員会に登用されている(校長・教頭経由を含む)
2. 47人(37.6%)が校長に登用されている。
3. 30人(24%)が教頭に登用されている。
4. つまり、90.4%がいわゆる管理職に就任している
 という結果が出たそうです。

 教育委員会の委員を「管理職」というのが適切であるかも一つの問題ではありますが,その点をひとまず置くとしても,上記1ないし3を単純に加算した場合,校長又は教頭に就任しかつ県教育委員会に登用された人を二重に加算することになっているように思います。また,教頭→校長というコースをたどる方もおられると思うのですが,教頭に就任しその後校長に就任した人を二重に加算していないかとても心配になります。

 阿比留記者は,ジャーナリストとして,全国教育問題協議会の教育研究大会で語られていたことを正確に読者に伝えているだけなのだと思いますが,統計の処理に難があることには触れておいた方がよかったのではないかと思います。まあ,この発表がなされたときに会場から統計の処理の仕方に疑問の声は上がらなかったのだとすれば,そのこと自体がニュースなのかもしれません。

 なお,民間企業でも,組合幹部経験者が出世しやすい傾向にあるところは少なからずあるようですが,そのことをもって,会社が組合に牛耳られていると強く推定されることはあまり多くはないように思います。

01/11/2008

医師賠責保険は,自動車保険とは違う。

 沼地さんという方が,

でもこれは変わってくるかもしれません。
訴訟2連発にトドメをさされた病院が潰れたから。
1回目はトカゲの尻尾切りに成功しても、保険会社もそんなに甘くは無い。
次からは掛け金が跳ね上がる。
述べています

 しかし,私の記憶が確かならば,医師賠償責任保険の保険料って,保険金給付請求をしたことで保険料率が変動するものではないと思うのですが。そもそも,日本の医師賠償責任って,1事故1人あたり2億円まで補償というタイプでも,保険料が年額約6万円程度だから,病院なり医師個人なりの過大な負担となることはないのですけどね(米国とは,桁が2つから3つ違うのです。)。

 どうもネット上では,事実に反して,日本の医師の置かれている環境が厳しいものであると喧伝したがる文章が流行っているようです。

勤務医とアニメーター

 いろいろ数字を見ていて気がついたのですが,勤務医の労働時間とアニメーターの労働時間ってほぼ同じくらいなのですね。

 で,5年目で850万円,平均で1200万円で雇ってもらえるとなれば,アニメーターの場合,大幅な労働環境の改善となるわけです(桁が1つから2つ違いますから。)

医師以外の職業を馬鹿にしすぎるのでは?

 医師の貴族化を待望する人たちの論理というのは本当に不思議です。

 novtanさんは,

もうさ、絶対収入のことしか頭にないのはおかしいっていろんな人に言われているのに絶対そこには言及しないのね。つまり、ある一定の年収を得ているものは非人間的な仕事をするのは当然である、ということかな。労働基準法とかどうでもいいって考えは法曹としてはどうなんだろうね。
と仰っています。しかし,これまで日本の医師の給料は安すぎるということをしきりに強調していたのは医師の側であって,医師の給料の安さを強調する方向で収入の話をするのはよいけど,日本の医師の給料は安くはない,開業医についていえばむしろ高いという方向で収入の話をするのはよくないというのはいかがなものかという気がします。

 さらにいうと,国にせよ,地方自治体にせよ,無尽蔵にお金があるわけではないので,一定量の仕事をできるだけ多くの人で分担することにより一人あたりの負担を減らそうと思ったら,ある程度給料については我慢してもらわなければなりません。ある公立病院のある診療科の医師の人件費として最大4000万円までは確保できるという場合に,平均1200万円ならば3人まで勤務医を雇えますが,2700万円は用意しないと勤務医にきてもらえないとなれば1人しか雇えないということになります。逆に,平均700万円でも勤務医が確保できるのなら,この予算で勤務医を5人は確保できるわけです。すなわち,公立病院における医師一人あたりの労働時間を短縮しようと思ったら,医師が満足する所得水準を引き下げることが必要となります。そして,「開業医になれば楽して平均2700万円稼げる」という環境がその妨げになるのであれば,開業医の診療行為の保険点数を引き下げるなどして開業医の所得水準を引き下げる必要があるということです。

 novtanさんは,給料を水準以上貰っている人は労働基準法に抵触していようが収入だけに満足して頑張れ、と。と仰っていますが,明らかに話が逆です(まあ,医師以外では,2000万円以上の収入を労働で得ようと思ったら,週40時間労働ではなかなか難しかろうと思いますが。)。勤務医の労働時間を短縮しようと思ったら,勤務医の給料レベルを引き下げても勤務医を必要なだけ確保できる仕組みにしていく必要があるのであって,そのためには開業医の所得水準を引き下げる必要があるということです。

 勤務医の週平均労働時間を64時間とし,年51週働くとして,総労働時間が3,264時間です。勤務医の平均年収を約1400万円とすると,平均時給が約4300円ということになります。これに週40時間×50週を掛け合わせると,860万円ということになります。このレベルの平均年収で満足してくれる注1医師が必要なだけ存在するのであれば,社会全体の総被診療時間を減少させず,かつ,医療費の増大を招くことなく,勤務医の労働時間を週40時間にとどめることができるということになります。

注1 勤務医達が年功序列型の賃金体系を望む場合,若年のうちは,年収は,年850万円より相当安くなります。 【本館の方に投稿してしまったので,移設しました】

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