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29/11/2008

「国籍法改正に反対する緊急国民集会(11/27)における決議文」について

 「国籍法改正に反対する緊急国民集会(11/27)における決議文」というのがアップロードされています。例によって一つ一つ検証してみましょう。

 

 一、国籍法「改正」案は、憲法違反である
憲法前文は「日本国民」は「われらとわれらの子孫のために」「この憲法を確定する」と述べている。国籍は国民たるための不可欠の条件であるから、憲法を定める権利の根拠をなすものである。それを「われらとわれらの子孫」であることが証明できない者に与えることは、憲法違反である。

とのことですが,まず,「日本国民」が「われらとわれらの子孫のために」「この憲法を確定する」ということからは,現行憲法制定時の日本国民の生物的な意味における子孫であることがDNA鑑定の手法により証明された者についてのみ日本国籍を付与すべきという結論は論理的に導かれません(現行法でも「帰化」制度は存在しますし,国籍法を抜本改正して全面的に出生地主義を採用し,またはドイツ法のように一部出生地主義的な修正を加えることも立法裁量の範囲内です。)。

 国籍法「改正」案は、最高裁判決を逸脱・歪曲している
 六月四日のいわゆる「婚外子国籍訴訟」最高裁判決が国籍法「改正」案の根拠とされている。しかしながら、本判決は、子の国籍付与にあたり、父母の婚姻を条件とすることを違憲としたに過ぎず、「子の国籍保有資格の真実性」を無視すること、多重国籍を認めることを求めたものではない。しかるに国籍法「改正」案は、子が真実にその親の子であることを証明する有効かつ確実な手続きを定めていない。これは偽装申請を容認するに等しい。本人確認の手段として、既に刑事裁判でも証拠採用されているDNA鑑定をなぜ行わないのか。それが人権侵害と言うなら、偽装申請をどのようにして証明するのか、或いはわが子でない子をわが子とさせられることは人権侵害ではないのか。

とのことですが,まず,今回の国籍法改正法案は,二重国籍を認める旨の法改正を含んでいません。また,DNA鑑定は生物的な父子関係を証明する有力な手段の一つではあるものの唯一の手段ではありません。松倉耕作「血統訴訟論──親子確認の新たな法理を探る──」178頁によれば,

今日の確立した判例理論によれば,父子関係の認定は自由心証の対象に属することを前提として,①母親と被告男性との性的関係の存在,②他男との性的関係の不存在(たとえば被告男性がこの存在を証明すれば,後述する「複数交渉」の問題となる),③子と被告男性との間に血液型の背馳がないこと,④不正の存在を推測させる被告男性の言動(扶養・出産費の支弁,この世話,子の母を妻としたい旨の申入れなど),などの間接事実の総合判断から,父子関係の存在を認定する

としつつ,他の事実を加えた「総合判断」をするうえで,間接事実③が場合によりかけてもよいとされているものとし,その理由として,

③要件が欠落すれば,原告敗訴となるのであれば,被告男性は,常に採血等への協力を拒む道を容認することになる。それは結果的には,原告に勝ち目がないとの意味では,大審院時代へと逆行することに通ずる

とされています(松倉・前掲179頁)。すなわち,DNA鑑定等を抜きに父子関係を立証するという手法は,認知請求訴訟における裁判所による父子関係の認定でも用いられている手法であるということができます。改正国籍法3条1項に基づく国籍の取得に際してDNA鑑定による生物的な父子関係の存在の立証を絶対的な手続的要件とした場合,DNA鑑定を拒むことにより,海外で生み捨てた子供の入国を阻害し,もって扶養義務から事実上逃れる道を父親に認めることになります。

 国籍法「改正」案は、国民侮辱法である
国籍は、日本国憲法に定める国民権利を有することの根拠である。この権利は過去・現在の国民が血涙をもって築き上げてきたものである。それを安易に付与することは、過去そして現在、国家・国民のために奮闘し或いは犠牲を払った国民とその子孫を侮辱するものである。

とのことですが,この法案に反対している人の多くは「押しつけ憲法論」者だったのではないでしょうか。それはともかく,現在日本国憲法に規定された国民の権利を享有する者の多くは,単に日本国籍を有する男女の間に生まれたというだけで日本国籍を取得し,憲法上の権利を享有しているのであり,その権利を享有できる条件が緩和されたからといってとやかく言える立場にはないように思います。

 国籍法「改正」案は、税金浪費法である。
偽装申請を犯罪としながらそれを防ぐ手続きを定めない国籍法「改正」案は、偽装摘発・処罰のために警察・検察・裁判所の業務を増大させる。また偽装による国籍付与者に対する生活保護を含む社会保障、教育・住宅施策を行わせられる地方自治体の事務を増大させることで、本来の地方行政に支障をきたす。これは立法府の不作為による税金の浪費である。

とのことですが,認知の手続要件としてDNA鑑定による父子関係の存在を証明することをあまねく義務づける方がコストが掛かります。

 

 国籍法「改正」案は、犯罪促進、国家解体法である
中国、北朝鮮、韓国等から見れば、我が国は社会資本、社会保障等国家・社会・経済のあらゆる面で垂涎の的である。ここに居住し政治的権利を行使する資格を得られる日本国籍は、いま世界でも数少ない優良「投資物件」である。しかも多重国籍を容認するのであるから、意図すれば我が国の一部地方を占拠し自治区化することも可能である。そのような者達が我が国の国法とその前提たるコモンセンスを遵守するなど空論でしかない。しかるにその取得にあたり、日本国家が不正を排除する意思を示さないことは、国民に犠牲を強いる、国家による犯罪誘致促進行為である。

 とのことですが,「我が国の一部地方を占拠し自治区化すること」が可能となるほど,公正証書不実原本記載罪で処罰されるリスクを押し,かつ,家庭崩壊のリスクを負ってまでお金を積まれて身に覚えのない子供を認知する用意がある日本国籍を有する男性であって,十数年前に中国、北朝鮮、韓国等に滞在していたという人材を捜し出すのは大変だと思います。それに,そもそも今回の国籍法改正法案は,二重国籍云々は議題に含めていません。

 なお,国籍法改正反対派の方が現在の日本の法制度をどのようなものと認識されているのかはわからないのですが,現実的なことをいえば,その人が日本国籍を取得した経緯がどのようなものであろうとも,我が国の刑罰法規を遵守しないと,者に対して,さらにいうと,「社会資本、社会保障等国家・社会・経済」等に鑑みて日本国籍を取得して堂々と日本に滞在したいと思う人々が,敢えて,日本国の刑罰法規を犯して裏社会で生きていこうとする合理的理由はないように思えるのですが,いかがなものでしょうか。

 

 一、国籍法「改正」案の衆議院審議は、だまし討ち的であり、法の重要性に相応しない。

憲法制定権の根拠であり、憲法的権利の根拠である国籍の付与は、十分慎重に審議しなければならない。しかるに、与野党内で公正かつ慎重な検討もなされず、衆議院審議が一日、それも僅か三時間というのは拙速に過ぎる。

とのことですが,最高裁判所での違憲判決を受けての法改正について衆議院で3時間も審議時間をとるというのはむしろ長い方ではないでしょうか(何といっても,「改正する」という結論は決まっているのですから。)。なお,国籍法について違憲判決が出たということは当然新聞等でも大きく報じられていますし,法律についての違憲判決が最高裁でなされればこれに対応した法改正が近々行われることは少なくとも国会議員であれば当然知っていて然るべきことですし,この法案は9月3日の法制審議会にて報告がなされ,その旨はネット上でも公開されているわけですから,国籍の取得要件について重大な関心を有しているにもかかわらず,政府がこの法案を提出し,その審議日程が決まるまで内容を知らなかったとすれば,それは単にその議員の怠慢なのではないかという気がします。

 なお,もし最高裁の違憲判決を言うなら、国政選挙における一票の格差の是正はどうなのかという点に関しては,「それも早急に対応すべき」という答えにしかならないのであって,「公職選挙法の改正が滞っているのだから,国籍法改正もだらだらすべき」という結論には普通はならないです。

 また,

しかも衆議院の付帯決議は、父子関係の「科学的」確認方法の導入の要否・当否の検討、「組織的に虚偽の認知の届出」を行う惧れの指摘、「多重国籍者」が増加するため対策をとることを求めている。これらは本来法律の中で解決されるべきものであって、こうした付帯決議の存在自体が法の不備を証明するものである。良識の府である参議院が衆議院のカーボンコピーと言われて久しい。もしこのような不備かつ不当で違憲の法律を可決するならば、参議院の存在意義は、ますますもって疑われることになる

とのことですが,父子関係の確認方法というのは国籍法で定めるものではありませんし,「虚偽の届出」が行われる虞があるということは当該届出制度を否定する理由にはならないと考えるのが一般的です(例えば,「組織的に虚偽の婚姻の届出」を行う虞があると指摘されたからといって,婚姻制度を廃止したり,(夫婦となろうとするものの一方が日本国籍を有しない場合に)DNA鑑定等によりその男女間に継続的な性的関係が存在することを証明することを法律婚の手続的要件としよう云々という話にはなっていないのです。)。なお,参議院で雇うが過半数を握っている現在,参議院が衆議院のカーボンコピーであると未だ言い続けている人は少ないのではないかと思います。

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Notifié le le 02/12/2008 à 03:31 PM

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