ハードルは高い。
改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づけよとの主張は,認知による法律上の親子関係創設の隠れたる要件である「認知者と被認知者との間の生物的な親子関係の存在」の立証方法をDNA鑑定に限定せよという主張,すなわち,一種の「証拠方法の法律による制限」を設けよとの主張と理解することができます。
しかし,この種の「証拠方法の法律による制限」が,実体的真実に合致した法的な効果の発生の妨げにならないためには,法律により証拠方法が制限されている立証命題が「真」である場合には当該証拠が容易に入手可能であることが必要となります。さもなくば,当該立証命題が「真」である蓋然性の高いことが他の資料から明らかに窺われるのに,当該証拠方法が入手できないために,当該立証命題が「真」であることを前提とする法的効果の発生がなされないことになるからです。
従って,認知による法律上の親子関係創設の隠れたる要件である「認知者と被認知者との間の生物的な親子関係の存在」の立証方法をDNA鑑定に限定するためには,認知という効果を発生させたいと望む側が容易にDNA鑑定を受けられるようにすることが必要となります。DNA鑑定を行うためには,鑑定のための資料として認知者の血液を採取する必要がありますので,認知という効果を発生させたいと望む側が容易にDNA鑑定を受けられるようにするためには,認知という効果を発生させたいと望む側が申立てを行えば,警察等が確実に特定の男性を勾引し,DNA鑑定のための血液採取を行ってくれる等の法制度が整備されることが必要となります。
誠天調書のブログ主は,ハードルが高いから すぐにはできなくても
現状に合わせてDNA鑑定を可能とさせて法的根拠も持たせられるように全法体系の全てを改正する、まさに大改定が必要だが それでも必ずすると何故付帯条項で明記できないのか?
と気軽に仰るのですが,認知請求訴訟に際して,またはすでに任意認知された子が国籍取得申請するにあたって,子の側の申立てにより,警察がその子の「父」(と目される男性)の居場所を探し出して,場合によっては扉をこじ開け警棒等で殴りつけるなどしてその者の身柄を拘束し,場合によっては暴れるその男性を押さえつけてその者の血液を採取する制度を必ず作り上げるなんてことを,付帯事項に盛り込めるわけなかろうと思ったりするのです。ゼノフォビアな方々を少し安心させるというさほど意味がないことのために払う犠牲としてはあまりに大きすぎるのです。しかも,それだけの無茶をしても,死後認知には対応できないのです。
なお,一部の方々は,偽装結婚と偽装認知とを同列に扱っているようなのですが,この2つは大分性質が違います。偽装認知の場合,認知者と被認知者との間に生物的な親子関係が存在しないことを知りつつこれが存在するものとして認知届をするという意味で立証命題が明確なのですが,偽装結婚の場合,どのような要素を欠く場合に「偽装」結婚となるのかは実のところそれほど明らかではないし,それ故市町村役場の窓口では不受理としがたいのです。一応,通説判例は,実質的婚姻意思必要説に立っているのですが,では,実質的婚姻意思とは何なのかというのはそれほど明らかではないのです。
« 規制改革会議に対して意見を投稿してみた | Accueil | じたばたするのも,人間の性なんです。 »
L'utilisation des commentaires est désactivée pour cette note.
Commentaires