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10/11/2008

「医療水準と医療の裁量性──福島県立大野病院事件・福島地裁判決を中心に」

 法律時報80巻12号70頁以下に小林公夫・明治大学法科大学院教育補助講師の「医療水準と医療の裁量性──福島県立大野病院事件・福島地裁判決を中心に」という論文が掲載されています。

 この中で,小林講師は,下級審裁判例を検討した結果として,裁判所の過失判断においては,

医師の行為当時の事実上の行動基準が一応の合理性を持っている限り,行動基準に従った行為について刑法的違法性を肯定することには慎重ではならないとの考えが,内在している
のであり,
その意味から,大野病院判決において裁判所が,一部の医学書およびC鑑定に依拠する検察側主張を退け,被告医師の行為当時,同一領域で産科医療に従事する臨床医の"行為群",換言するならば"医療群"がいかなる「行為のベクトル」を形成していたかに目を向けた点は,意義深い
としています。医療過誤刑事に関する裁判その判断基準が概ねこのようなものであるならば,いかなる"医療群"が形成されているのかは客観的な立証が可能であるし,いかなる"医療群"が現時点で形成されているのかを医学系の学会等が把握し,そこから抽出される行為基準を明文化することにより,ある程度の予測可能性を確保することもできるかもしれません(もちろん,"医療群"は時とともに変化しうるものであり,かつ,行動基準に係る文章が変化するのは"医療群"の変化よりもある程度遅れざるを得ないことを考えると,明文化された行為基準を遵守していれば常に過失なしとされるわけではないでしょうが。)。

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