最近の一連の国籍法関連エントリーに寄せられたコメントに一部答えてみることとしましょう。
galaxyexpress_4@hotmail.comさんは,「国籍法3条1項の改正に反対することはエネルギーの無駄である」に,
あなたの意見は法律論的にはもっともですが妊娠させて逃げた男性に対してあまりに寛容すぎやしませんか?今回の国籍法改正案は日本国籍を持つ父親の血を引く無国籍状態の児童を救済する目的のはずです。確かに無責任な日本人の父親がいるのは事実ですが逃げる男性がいるならそれを逃がさないようにするように知恵を巡らせるのが真に逃げられた母親と無国籍児童の保護に繋がるのではないでしょうか?もし扶養義務が父親の逃げる理由になるのな母親が外国国籍に限り扶養義務を外せば良いのです。日本国内の民法と合わないかも知れませんが民法は日本国籍を持つ者に適用されるので問題ないとかんがえます。法律を守るのは法治国家として確かに必要ですがあなたの主張には法律が絶対であり人間は絶対服従すべき問題点を改善する努力すらしてはいけないという法律ファシズムみたいな危険すら感じます。最初に申し上げた逃げた男性に対してあなたはどういう風に認知裁判に出廷するようにするかあらゆる方法でもかまいません返事を下さい
とのコメントを寄せておられます。しかし,DNA鑑定さえ拒めば,日本国籍を有しない女性に生ませた子供が日本国民として日本国内に永住することを回避できるとする「DNA鑑定必須論」者の方が妊娠させて逃げた男性に対して寛容なのだろうと思います。また,妻ではない外国籍の女性に子供を産ませた場合にはその子供に対して扶養義務を負わないこととすべきとするgalaxyexpress_4@hotmail.comさんの方が妊娠させて逃げた男性に対して寛容であるように見えます。なお,民法は日本国籍を持つ者に適用されるので問題ない
とのことですが,扶養義務は親子間の法律関係にあたりますから,法の適用に関する通則法32条によれば,「子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。」ことになります。ただし,父は非嫡出子に対しては認知後も扶養義務を負わないとする法制度はいまどきほとんどないように思われます。
また,最初に申し上げた逃げた男性に対してあなたはどういう風に認知裁判に出廷するようにするか
との点に関しては,認知請求訴訟に関していえば,被告たる男性が裁判所に出頭しなくとも,生物的鑑定以外の間接事実等から父子関係の存在を認定できれば,むりやり被告たる男性を出廷させる必要はないということになります(なお,認知請求訴訟は,人事訴訟法の適用を受けますので,職権探知主義が採用されます。)。
次に,Opというハンドル名を名乗る方から,「三権分立を理解できないベテラン記者がいることの方が理解しがたい」というエントリーと「「国籍法改正に反対する緊急国民集会(11/27)における決議文」について」というエントリーに対して,全く同文の,
「二重国籍は議論に上がってない」とか、衆議院の付帯決議も知らないのかな?w
「一部のゼノフォビアにとらわれた方々の妄想」不法入国者や偽装結婚して日本にいつこうとする犯罪者が実際にいるのに、どこの理想国家に住んでるんだ?、君はw
自分が正論言ってると思うなら、こんなとこでコソコソしてないで、堂々と反論しに行きなさいよw
とのことなのですが,私は,氏名や所属等を明らかにしていわば堂々としているのですが,このOpさんはどこのどなたかわかりません(コメント投稿時に入力されたメールアドレスは「posted888@yahoo.co.jp」ですし。)ので,どちらかというと,Opさんの方が,堂々としておらず,コソコソしていると評価できそうに思われます。
また,「二重国籍は議論に上がってない」というのは,ひょっとしたら,「「国籍法改正に反対する緊急国民集会(11/27)における決議文」について」というエントリーにおける「そもそも今回の国籍法改正法案は,二重国籍云々は議題に含めていません。」との発言を指しているのかもしれません。しかし,「議題に含まれる」ということと「議論に上がる」ということとの間には大きな違いがあります。
さらにいうと,平成20年11月28日の衆議院法務委員会にてなされた自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議の内容は,
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 日本国民から認知された外国人の子が届出により我が国の国籍を取得することができることとなることにかんがみ、国外に居住している者に対しても、本法の趣旨について十分な周知徹底に努めること。
二 我が国の国籍を取得することを目的とする虚偽の認知が行われるおそれがあることを踏まえ、国籍取得の届出に疑義がある場合に調査を行うに当たっては、その認知が真正なものであることを十分に確認するため、調査の方法を通達で定めること等により出入国記録の調査を行う等万全な措置を講ずるよう努めるとともに、本法の施行後の状況を踏まえ、父子関係の科学的な確認方法を導入することの要否及び当否について検討すること。
三 ブローカー等が介在し組織的に虚偽の認知の届出を行うことによって日本国籍を取得する事案が発生するおそれがあることを踏まえ、入国管理局、警察等関係当局が緊密に連携し、情報収集体制の構築に努めるとともに、適切な捜査を行い、虚偽の届出を行った者に対する制裁が実効的なものとなるよう努めること。
四 本改正により重国籍者が増加することにかんがみ、重国籍に関する諸外国の動向を注視するとともに、我が国における在り方について検討を行うこと。
というものです。重国籍については,第4号で触れているのですが,これは,従前より国籍法3条1項に基づき日本国籍を取得した者は,母親の母国法において当該国の国籍を有する女性の実子に国籍を付与する旨の規定がある場合には,我が国の国籍法14条に基づく国籍の選択を行うまでの間は二重国籍状態に置かれることとされていたところ,今回の国籍法の改正により,国籍法3条1項により日本国籍を取得できる範囲が拡大されるので,重国籍について今後どういう制度を採用するか諸外国の動向を見ながら検討しましょうね,という話でしかなく,「多重国籍を容認する」という話ではありません。
また,不法入国者や偽装結婚して日本にいつこうとする犯罪者が実際にいる
にせよ(日本の場合,多くは不法入国というより不法残留者なのですが,その数も平成5年をピークに減少の一途をたどっており,19年1月1日現在17万839人程度しかいません(ピーク時の6割程度)。),そのことは,今回の国籍法改正案に対する反対論が一種のゼノフォビアに基づくものであることを否定するものではありません。
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