想像力の方向と読解力
国籍法改正案ですが,無事に参議院法務委員会も通過したようです。
さて,「化けの皮」と名乗る方から2通のコメントをいただいています。一つ目は,
大体認知しようとする男性が血液の採取をなぜ否定すのでしょうか?それほど、もし自分が親でなかったら困ることでもあるのでしょうか?
結局は、DNA鑑定を表向き義務ずけたほうが、男性も、虚位の認知をさせられないで助かるのではないでしょうか?だって、認知したら、民法により扶養義務が出てくるんですよねえ。
でもその民法にも、子供の母親が養育費要らないといったら、それでOKではないのですか?なにも強制的に払えーと国ができるものなのですか?
どこかの市役所で、外国の方が”仕事がなくて生活できないのですが生活保護受けれますか?”という質問に、”日本人の子供を養っているので生活保護がその子に対して支給されます”と回答してありました。
というものなのですが,この種の方々の読解力につける薬って何かないものだろうかというのが最初の感想です。
私の一連の国籍法関係のエントリーを普通の読解力を持って読んでいただければ,日本国籍を有しない,妻ではない女性を妊娠させる男性の中には,可能な限り生まれてくる子の面倒など見たくないというものが相当程度存在すること,そして,そのような男性でも,認知請求訴訟でその場合,DNA鑑定が行われなくとも,他の間接事実により生物的な父子関係が証明されて,敗訴して認知させられる場合があること,また,認知請求訴訟の途中であるいは認知請求訴訟を起こすことを告げられてやむなく任意認知をする場合があること,そして,それらの場合に,「DNA鑑定のための血液の採取等を拒めば,子供とその母親が強制送還される」ということになれば,その種の無責任な男性は,子供とその母親を強制送還してもらうために,頑として血液の採取等を拒むことが予想されること等をご理解いただけるのではないかと思います。
それほど、もし自分が親でなかったら困ることでもあるのでしょうか?
との点に関して言えば,その種の男性は,DNA鑑定により自分が親でないことが判明したらとても喜ぶと思うのですが,自分が親であることが明らかになると嫌だから,DNA鑑定等をこれまでも拒んできたし,ゼノフォビアな人たちが望むように「DNA鑑定のための血液の採取等を拒めば,子供とその母親が強制送還される」ということになれば,相当の罰金を支払ってでもDNA鑑定への協力を拒むことでしょう。その民法にも、子供の母親が養育費要らないといったら、それでOKではないのですか?なにも強制的に払えーと国ができるものなのですか?
との点に関して言えば,件の違憲判決が下されたような事案を想定していただければ,そこで「子供の母親が養育費要らないとい」う合理的な理由がないとしか言いようがありません。
また,生活保護の点についていえば,実務的にいえば,認知をした父の養育を受けられないことを立証しないと生活保護はおりません。しかも,日本の生活保護の受給額は,健康で文化的な最低限の生活を送るのに,本当に最低限度の生活をできる程度しか支払われませんので,ブローカーに大金を支払ってその程度の生活しか送れないのでは,全く元が取れません。
次に,
フランスでもDNA鑑定が義務ずけされたそうですが、フランスもやっぱり強制的に嫌がる父の血液を取って、DNA鑑定するのですか?
との点ですが,当該法律の条文を見ていただけると,今回の国籍法改正との関係でゼノフォビアな方々が要求したものとは全く性質が異なることを理解していただけると思います(普通の日本語読解力のない方には難しいかもしれませんが)。
第13条第1項
外国人の入国及び滞在並びに庇護権に関する法典L.第111-6条に次の9項を加える。「民事的身分の証明に欠陥のある国の者で、外国人の入国及び滞在並びに庇護権に関する法典L.第411-1条及びL.第411-2条に規定され、又は難民の身分を得、若しくは補充的保護(laprotection subsidiaire)を受けている両親の一方に合流する、若しくは付き添われて入国することを望む、3か月を超える滞在のためのビザを申請する者又はその法定代理人は、身分証書(l’acte de l ’etat civil)が存在しない場合又は民法典L.第311-1条に規定されるような身分の保有によっても解消することのできない、身分証書の真正性に関する深刻な疑いがあると外務省職員又は領事館職員から知らされた場合には、ビザ申請者の母との間に、明白な親子関係の証拠となるデータを得るために、DNAによるビザ申請者の身分証明を調査することを求めることができる。身分証明をそのようにして調査される者の同意は、事前に、かつ、明確に得られなければならない。この措置の適用範囲及び結果に関する適切な情報は、その者に提供される。
つまり,これは難民等の資格でフランス国内に滞在する資格を有している者がその子供を呼び寄せる際のものですから,ここでは,親自身がその子供にフランスに来てもらいたがっている場合のみを想定することができ,「いやがる父親」云々ということを想定する必要がありません。さらにいえば,そのような制度の下でも,DNA鑑定がなされるのは,身分証書(l’acte de l ’etat civil)が存在しない場合又は民法典L.第311-1条に規定されるような身分の保有によっても解消することのできない、身分証書の真正性に関する深刻な疑いがあると外務省職員又は領事館職員から知らされた場合
に限定されるのであって,日本のゼノフォビアな方々が国籍法改正の際に要求したような,「全件DNA鑑定」のようなばかげた話はされていません。
なお,このような法改正であっても,上下両院60名以上の野党議員から違憲ではないかとの意見が出され、憲法院に付託された。憲法院は、DNA鑑定以外の、親子関係を明らかにするあらゆる手段を尽くした上で、最後の手段としてDNA鑑定に頼るという条件付きで、第13条は合憲であると判断した
というのが実情です。
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