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14/01/2009

雇用コストを誰かに転嫁しようとしているのは誰か。

 私のブログのエントリーに対し、木村剛さんに言及していただきました(トラックバックもいただきました。)。

 人権派弁護士であることを標榜している「la_causette」さんは、表層的な現象を取り上げることに懸命で、雇用問題を経済のメカニズムとして解決するという視点をお持ちではないようです(これは、法学と経済学の根源的な違いでもあります)。アピールの重要性を私は否定しませんが、アピールするだけでソリューションを持っていなければ、雇用コストを誰かに転嫁するという「下策の中の下策」しか出てこないという現実にそろそろ気付いていただきたいと思います。

とのことで、結局、空虚なレッテル貼りしかしていただけなかったのが残念です。

 そもそも私は「人権派弁護士であることを標榜」したことは一度もないのですが、私のブログのどこをご覧になったら、私が「人権派弁護士であることを標榜している」と誤解することができるのでしょうか。最近は他人の人権が尊重されることに耐えられない身勝手な一軍の人々の間で、自分とは異なる意見の持主に「人権派」とのレッテルを貼ることにより、その意見をとるに値しないものと位置づけるのが流行しているようですが、まさか木村さんほどの方がそんなみっともないことをしているとは思いたくないところです。

 また、表層的な現象を取り上げることに懸命で、雇用問題を経済のメカニズムとして解決するという視点をお持ちではないようですとのことですが、私は、年末年始の寒空にそれまで住んでいた住居を追い出され、行くところもない人々が生命身体の危機にさらされるということが、取り上げるに値しない「表層的な現象」だとは思わないのです。そういう意味では、抽象化された経済主体としてではなく、具体的な人格として人間を把握することが前提となる法学分野に進んで良かったなあと実感いたします。

 それにしても、企業のわがままをそのまま認める視点以外は「雇用問題を経済のメカニズムとして解決する視点」として認識できないあたりが、木村さんの限界でしょうか。日本経済がもっぱら輸出のみを行う経済体制であって、そのような体制で居続けることが今後も許されるのであれば、工場労働者に食うや食わずの生活水準を押しつけることも(倫理的ないし道徳的な側面を無視すれば)可能かもしれませんが、国内政治的にはもちろん、国際政治的にもそのようなことが許される情勢にはないので、内需の核となる中間層を維持することは、我が国の経済体制を維持するためにも不可欠です。

 また、雇用コストを誰かに転嫁するという「下策の中の下策」という言い方がされていますが、その労働収入では健康的で文化的生活を行うことができないような状況に労働者を置くこと自体が雇用コストの労働者への転嫁であり、非正規雇用労働者を突然解雇して即時に寮から追い出すことにより、これらの労働者が健康的で文化的生活を行えるようにするにはボランティアや公的機関の助けが必要な状態に追い込むこともまた雇用コストの国家ないし社会への転嫁に他なりません。

 また、「【ネットEYE】新『もりもり』の『今』を読むブログ」さんが正確に指摘しているように、「よく『ヨーロッパは労働者の権利が手厚く保護されてる』と言いますけど、それは『すでに職に就いている人』のことであって、若年層の失業率は、日本の何倍も高いんですよね。つまり、『雇用法制の強化』は、雇用の拡大につながらない、そういうことです…」という経済的事実に尽きるのですとのことですが、フランス等は、「すでに職に就いている人」の権利が手厚く保護されているだけでなく、「今は職に就いていない人」の権利も、日本よりは手厚く保護されています。さらに、若年層の失業率については、我が国では大学の授業料が国公立であっても高額である上奨学金が不十分であるため、多くの学生が恒常的にアルバイトをしなければならない状況に追い込まれており、そのことが若年層の失業率を引き下げていることは既に触れたとおりです。


 ところで、木村さんのこのエントリーのタイトルは「おフランスは雇用天国なのか?」というものですが、木村さんからトラックバックをいただいた元エントリーでは、フランスが雇用天国である云々という話はされていません。そこまでミスリーディングなタイトルをつけてまで不適切なレッテル貼りをしなければならないほど、焦っておられるのでしょうか。

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