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26/01/2009

解雇規制の撤廃と、非正規雇用労働者の処遇への一本化という実験は、まず経済学部からやってみたらいかがでしょうか。

 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の処遇に雲泥の差が付いている典型例の一つが、大学です。

 何しろ、「大学非常勤講師実態調査アンケート報告書」に記載された2005年から2006年の調査では、専業非常勤講師は、平均年齢45.3歳で、平均9.2コマを担当しているのに、講師給の平均が277万円/年であって、250万円/円以下が全体の約半分を占めるなど、典型的な「ワーキングプア」状態です。他方、こちらのデータによれば、大学教授、助教授、講師の平均年収は、1167万円、906万円、757万円となっています(平均年齢45.9歳の助教授と、平均年齢45.3歳の専業非常勤講師との給与格差は注目に値するでしょう。)。さらに、教授、準教授、助教等の正規労働者には毎年一定額の研究費等が給付されるのに対して、専業非常勤講師には一切給付されません。また、専業非常勤講師は職場の社会保険に加入できない等の差別的処遇を受けています。その結果、専業非常勤講師の約7割が扶養家族ゼロということになっています(平均年齢45.3歳でこの数値です。)。

 もし、正規雇用労働者の労働条件を非正規雇用労働者の労働条件のレベルに近づけることが非正規雇用労働者の処遇を引き上げるための最善の施策だというのであれば、大学こそ、教授、準教授、助教等の特権を全て剥奪してその処遇を専業非常勤講師のそれに近づけるべきだということになります。特に、解雇規制法理によって正規雇用労働者が手厚く保護されることを特に問題視する新自由主義派の経済学者は、教授会にて、教授、準教授、助教等の特権を全て剥奪する旨の提案をすべきなのではないかと思ったりはします。解雇規制を受ける正規労働者がいなくなるとどうなるのかという社会実験は、まず限定的な範囲から行っていくのが吉というものです。

 しかし、経済学部ですら、そのような政策を採用している大学はほとんどありません。一般労働者について解雇の自由が保障されている米国においても、大学においては、「テニュア(終身在籍権)」という制度が用意されています。「American Association of University Professors」の「1940 Statement of Principles on Academic Freedom and Tenure With 1970 Interpretive Comments」では、

Tenure is a means to certain ends; specifically: (1) freedom of teaching and research and of extramural activities, and (2) a sufficient degree of economic security to make the profession attractive to men and women of ability. Freedom and economic security, hence, tenure, are indispensable to the success of an institution in fulfilling its obligations to its students and to society.

とまで述べられています。顧客および社会に対する義務を履行するために、有能な人材を引きつけるために、解雇が制限される「正規雇用労働者」が必要なのは、大学に限定されないのではないかと思ったりするのです。

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