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08/01/2009

失業率の高低の持つ意味の差

 池田信夫先生からトラックバックをいただきました。ただ、表面的な若年失業率が日本のそれよりフランスのそれの方が数倍高いことから、労働者の切り捨てが容易な日本の雇用政策を擁護する根拠とするのはいかがものかと思います。

 まず、失業率は、(失業者)/(就業者+失業者)×100で算出するわけですが、ここで就業者とは、①「有給就業者」,すなわち,賃金又は給料を得る目的で,調査期間に1 時間以上の仕事をした者(仕事を持っていながら休んでいた者を含む。),又は②「自営就業者」,すなわち,利益又は家族の利得のために,調査期間に1 時間以上の仕事をした者(事業を持っていながら休んでいた者を含む。)で,一定年齢以上のすべての者」をいうのであって、その労働の対価によって独立して生計を立てることができる全ての者をいうわけではありません。他方、失業者とは、調査期間中,①「仕事を持たず」,すなわち,有給就業者でも自営就業者でもなく,②「現に就業が可能で」,すなわち,有給就業又は自営就業が可能で,③「仕事を探していた」,すなわち,最近の特定期間に,有給就業又は自営就業のために特別な手だてをした一定年齢以上のすべての者」をいいます。すなわち、求職活動をしていない人は失業者とはなりません。また、若年失業率とは、15歳から24歳までの国民の失業率を指すのが通常です。

 ここで注意すべきは、「15歳から24歳まで」という年齢は就学年齢と相当程度重なるということです。日本では、大学の授業料が欧州各国より高く、通常の奨学金では授業料の全額をそこから出すことすら不可能であり、従って、富裕層出身者以外は恒常的にアルバイトを行うことが必要であり、また富裕層出身者であっても、遊興費等を捻出するために、恒常的にアルバイトを行う学生が少なくありません。そして、調査期間中にアルバイトを行う学生は「有給就業者」にカウントされるため、若年失業率を低下させる方向に働きます。また、「主婦」というのも統計上やっかいな存在で、専業に徹する場合は失業者に入らず、パートを始めると就労時間・収入の多寡にかかわらず、就業者にカウントされ、分母を拡張します。従って、「妻は、子供が大きくなるまでは子育てに徹するか、または1日数時間程度のパート労働を行うにとどまる」という観念が残存している社会では、若年婚の女性を中心に、若年失業率を引き下げることになります。

 他方、我が国で社会問題となった「ニート」「引きこもり」と呼ばれる人々は「有給就業又は自営就業のために特別な手だて」をしていないので、統計上失業者とはなりません。

 また、日本は、その他の多くの国と同様に失業者数の調査を労働力調査(標本調査)により行うのに対し、フランスは職業安定所の登録区分別登録により行います。フランス方式ですと現在ホームレスでも職業安定所に登録してあれば「失業者」にカウントされますが、日本方式ですと、ホームレスやネットカフェ難民等は調査票を受け取ることがないので統計から漏れることになります。

 ですから、日本の若年失業率が低く表示されるのは当然のことであって、そのことから日本の雇用政策の方がましであるとの結論を導くのは早計です。

フランスの失業率がOECD諸国で最悪グループであることはよく知られているが、若年失業率は特に悪く、23.9%(右から4番目)にのぼる。「格差」がいわれる日本はまだ8%だが、日雇い派遣の禁止などの規制強化を進めれば、フランス並みの「失業先進国」になるだろう。

とのことですが、統計上「失業者」にカウントされないということは、実際にはさほど重要ではありません。若年就業率は92%だかその3分の1は低賃金の非正規雇用というのと、若年就業率は78%だかその全てが正規雇用というのと、どちらが若年者にとってやさしいのだろうかということが問題となりそうです。

【追記】

 ちなみに,これによれば,季節調整をした2008年6月及び8月期のフランスの若年失業率はともに18.9%です。これは全体の失業率の約2.36倍にあたります。米国の2008年8月期の1.99倍と比べると高いようにみえますが,米国においては全体の失業率が2007年8月から2008年8月にかけて4.7%から6.1%に上昇したのが大きいのであって,2007年8月期でいえば,米国の若年失業率は全体の失業率の約2.30倍なので,解雇規制の緩やかな米国と,解雇規制の厳しいフランスとで果たして若年労働者の処遇に大差があるのだろうかという疑問がないではありません。

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