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12/01/2009

ブルーハーツは偉大だ

 新自由主義に反するようなエントリーをアップロードすると、匿名さんから、人格攻撃含みのエントリーをいただくことが多いです。大きな敵は叩けないから、小さな敵を叩きたいとの信条から、新自由主義に縋っている方々を見ると、ブルーハーツは偉大だなと思ってしまいます。

 経済学の教科書を読めというコメントもいただきますが、もちろん本職の池田先生とは比べものにはならないにせよ、日本語になっている、教科書レベルのものはそれなりに読んでいます。ただ、読んだものを鵜呑みにしないだけのことです。もちろん、学問領域の経済学には敬意を払いますが、そこでの結論がそのまま現実の政策として採用するに値するのかといえば、多分に否定的だからです。

 その大きな理由の一つは、経済学でいう「効用」の考え方自体に問題があることであり、もう一つは、不都合な現実を捨象して都合良く単純化されたモデルを用いるという経済学の手法に問題があるということです。

 例えば、人口100人の村で毎日卵が200個生産されると仮定します。あるとき、富裕層の間で、生卵を投げつけて遊ぶことが流行り、そのために、一部の富裕層が、生卵の値段をつり上げてこれを買い占め、そのために、それ以外の村民は卵を口にすることができなくなったとします。経済学の「効用」概念では、これは卵の「効用」が高まったのであるからむしろ好ましいことであって、見かねた村役場が卵市場に介入し村民が上昇前の値段で一人1日一個は卵を購入することができるようにすることは市場による資源の「効率」的配分を妨げるということになります。このような「効用」概念は、しばしば私たちの健全な常識に反するところです。

 「空気抵抗を無視します」という仮定の下では、「上空1万メートルから落下する場合、パラシュートを開こうが開くまいが、地上に到着する時間は一緒である」という結論を導くことができるわけですが、その結論をもって「落下中、パラシュートを開くことは意味がない」と提言する物理学者がいたら、周囲の人はかわいそうな人を見るような目でその人を見ることでしょうし、そもそも物理学者のほとんどは、単純化したモデルにより導かれた結論と現実との違いを十分に認識しています。しかし、経済学においては、過度の単純化(=不都合な現実の捨象)により非現実的な結論を導き出した上で、これを現実と混同して政策提言する方々が散見されます。我が国において「法と経済学」が流行らない要因の一つは、我が国における「法と経済学」の初期の担い手がまさにこのような愚を犯していることにあることは否めないでしょう。

 この種の論者がしばしば犯す間違いの一つは、「選択」を行う主体をごく一部のセクターに限定してしまう点でしょう。労働者への富の配分を減少させてその分を株主に回しても、企業活動の成果たる商品・サービスの需要に変動がないと仮定するがごときはその一例です。しかし、解雇規制が撤廃され、企業が解雇をちらつかせて給与水準の大幅カットを果たした場合には、給与水準が大幅にカットされた労働者とその家族はもちろん企業が国内で提供する商品・サービス等の購入を差し控えることになります。また、経営者からいつ何時気まぐれで解雇されるかわからないということになりますと、長期ローンを組まなければ購入できない住宅等の需要は壊滅的な打撃を受けることになります。「失業さえしていなければ、その収入では健康的で文化的な生活を支えられなくとも、将来『幸福』に慣れる見込みが立たなくとも、労働者は現状を不満に思うことがなく、財産犯が増加することは考えがたい」というのも非現実的な仮定だなあと思います。

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» [勉強予定]目的も定めずに効率性を定義できるのか [ひまつぶし日記]
以降の参照元la_causette: ブルーハーツは偉大だ 例えば、人口100人の村で毎日卵が200個生産されると仮定します。あるとき、富裕層の間で、生卵を投げつけて遊ぶことが流行り、そのために、一部の富裕層が、生卵の値段をつり上げてこれを買い占め、そのために、それ以外の村... [Lire la suite]

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