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12/01/2009

雇用者報酬の減少は景気変動の誤差?

 池田先生から「6兆円減少した」などといかにも大きいように表現しているが、雇用者報酬は7年間で271兆円が265兆円に3%減っただけで、景気変動の誤差の範囲内だとのご指摘をいただきました。

 しかし、名目GDPは2003年を境に上昇に転じたのであって、具体的には、2000年の名目GDPが約503兆円なのに対し、2007年の名目GDPは約516兆円となっており、この間約2.6%増加していますから、「景気変動」に伴う動きだとすれば、雇用者報酬自体は増加すると考えるのが素直です。実際、経営者および株主が受け取った分け前はこの間増えているのです。したがって、2000年から2007年にかけての雇用者報酬の減少を「景気変動の誤差の範囲内」と考えるのは、無理があるように思います。むしろ、従前正社員が行ってきた労働の一部についてこれを給与水準の低い非正規労働社員に行わせることにより、労働者層が受け取る賃金総額が減少したと考える方が素直でしょう。

 なお、ここでは「労働分配率」ではなく、それぞれのセクションが受け取った額自体を問題としているわけですが、池田先生が労働分配率はその逆に、利益が増えると下がり、業績不振のときは上がる。だから日本の労働分配率は図のように1990年から2002年までの不況期に10%上昇し、その後の景気回復で5%ほど下がった。と仰るので労働分配率に言及すると、1994年ころから2003年までは概ね54%前後を推移していたのが、製造業者への労働者派遣を認めた2004年になって51%台に急落したのは、示唆的です。2004年度のGDPの伸び率は、1996年、1997年のそれより劣るわけですが。さらにいえば、この後、景気拡大局面はしばらく続くのですが、しかしながら、2006年末までは労働分配率は緩やかに上昇します(でも、約52%にまで回復するにとどまっていますが。)。

 また、「階級間闘争」という言葉にも言及されているようですが、ベルリンの壁が崩壊しようが、資本家と労働者が、相互に依存しつつも、利害が対立し、様々なチャンネルを通じて、絶えず闘争を繰り返している事実は否定しがたいところです。法学、とりわけ実務法曹は、どのようなセクターのどのような利害と、どのようなセクターのどのような利害とが対立しているのかを見据えることを余儀なくされているので、ベルリンの壁がなくなったくらいで、労働者と資本家との階級対立は消えてなくなり、ただ中高年正社員のみが社会敵として君臨しているというような理解をすることができないのです。

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