1789年のlibertarianismは現代の新自由主義とは全くの別物
池田先生がまた不思議なことを述べています。
Neoliberalismという言葉が使われるようになった最初はHarvey "A Brief History of Neoliberalism"(2005)で、さかのぼると1996年にメキシコで開かれた「反グローバリズム」集会が最初のようだ。これに対してlibertarianismの最初は1789年。どっちがオリジナルかは議論の余地もない。
池田先生が「libertarianismの最初は1789年」とする出典は,「merriam-webster」のようですが,それでいうならば,「neoliberalism」の初出は1945年ということになります。従って,「neoliberalism逆輸出説」は実際と合致していないといえそうです。
さらにいうと,「merriam-webster」の初出年情報は,当該単語が最初に用いられた年を表示してくれるのですが,それがそのときにどのような意味で用いられたのかまでは表示してくれません。従って,「libertarianism」という単語の初出が「neoliberalism」という単語の初出よりも早かったとしても,それが今日「neoliberalism」という語で表される意味で用いられていなければ,「libertarianism」の方がオリジナルだということにはなりません。
で,英語版のwikipediaをみると,「libertarianism」との語を最初に用いたWilliam Belshamは,"necessitarian" に反対する概念としてこの語が用いられていたことがわかります。経済学的な意味で「libertarianism」という言葉が用いられるようになったのはそれよりもずっと後のようで,英語版のwikipediaによると,1940年代に入ってから,Leonard Readが自分のことを「Libertarian」と呼ぶようになったと記載されており,Dean Russellが「Foundation for Economic Education magazine 」の中で,"Let those of us who love liberty trademark and reserve for our own use the good and honorable word "libertarian.""と記載したのは1955年とのことです。
なお,日本の新自由主義者たちは,むしろ,アダム・スミスが批判した重商主義的な「低賃金経済論」に近づいていますから,自分たちの考え方を「ヒュームやスミス以来の古典的自由主義であ」るかのように述べるのは如何なものかなあと思ったりはします。
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Voici les sites qui parlent de: 1789年のlibertarianismは現代の新自由主義とは全くの別物:
» リバタリアニズム新自由主義 [肉団子閑居為不善]
言葉の定義は事前によく確認しておかないと、正しい議論にならない。日本語の新自由主義をめぐって池田先生との論争に新しい戦線を拡げたla_causetteの小倉さんが、新しくエントリーを投稿された。
「新自由主義という言葉はlibertarianismの訳語ではない」と
「1789年のlib... [Lire la suite]
» 池田氏と小倉氏にはもっと大事な議論を望む [文理両道]
池田信夫氏と小倉秀夫氏が「新自由主義」という訳語の元の用語が「neoliberalism」か「libertarianism」ということでお互いのブログで議論を繰り広げている。
ハッキリ言ってどうでもいい。
影響力のある2人のことである。こんなことで議論をするよりもっと社会が良くなるようなテーマで議論してほしいものだ。
ちなみに理工学系の私にとっては、「○○主義」という言葉自体が胡散臭い。「○○主義」と言ったとたんにそこで思考停止になっているような気がするからだ。
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