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22/02/2009

建設業者の手続コスト等を人命より優先させる人々

 池田信夫さんが次のように述べています。

よくこれで弁護士をやってるね。私がどこで「人命に特段の価値を見出さない」と書いたのか、と反論されたら、訴訟なら終わりだ。

 池田さんの頭の中にある「訴訟」っていうのは,きっと厳格な直接証拠主義なのでしょう。今時一般的なシステムとしてそのようなものを採用しているところはないと思いますが。その割には,池田さん自身は,他人の意見を歪めずに要約することがとても不得手のようです。

何度も書いたように、リスク管理の目的はリスクをゼロにすることではない。人命が他のすべてに無条件に優先するのなら、まず自動車を禁止すべきだ。重要なのは、リスクと便益のトレードオフの中で何を選ぶかという目的関数の設定である。

 「重要なのは、リスクと便益のトレードオフの中で何を選ぶかという目的関数の設定である」としても,「阪神淡路大地震クラスの大地震にあった場合に建物が崩壊して人命が損なわれるリスク」に目を瞑ってまで選択すべき「便益」があることを,池田さんは説得的に主張し切れていません。建築基準法の改正により「官製不況」になったとしてこの改正を批判する人々は,「景気」を「人命」に優先させているということであり,より具体的にいえば,建設業者の設計コストや建築コスト,手続コスト等を人命に優先させているというだけのことです。これに対し,我が国の立法府は,建設業者の手続コスト等を軽減させることよりも人命を重視したということですし,世論も概ねそうだったということです。

 そして,この問題に関して,「リスクとリターン」という観点から話をすると,建設業者は,建設業者の手続コスト等を低く抑えることにより利潤の増大というリターンを受ける反面,当該建物の崩壊による死傷というリスクを原則として負わないで済みます。このリスクを負うのは,大地震発生時に当該建物の中や周囲に居合わせた人であり,彼らのほとんどは,建設業者の手続コスト等を軽減されることによって特段の利益を得ることはありません。このような場合には,リスク軽減のために特定の措置を高ずることを法的に義務づけることが必要となります。しかも,ことは人命の関することなので,「果たして震度6以上の地震が起きて建物が崩壊して死傷者が出たときには多額の賠償金を支払えばいい」というものでもないのです。従って,事後規制では不十分であって,相当の事前規制を敷くことが望まれます。実際,既に紹介したとおり,建物の建築に関しては,安全性を確保するために様々な事前規制を課すというのが先進国では標準的となっています。

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