「新しい産業を育てて投資機会を増やし、内需拡大する」ために必要なこと
池田先生は,次のように述べています。
製造業を捨てる必要はないが、競争力のない製造業にこだわると日本経済全体が沈没する。新しい産業を育てて投資機会を増やし、内需拡大することが究極の経済対策だ——という点で、意外にも多くの論者の基本的認識は一致している(これは野口氏も同じ)。ようやく日本でも、まともな政策論争が可能になってきたようだ。
そこまで分かっていて,消費性向の高い中低所得者層の給与水準を更に押し下げ,かつ,この階層にまで,ある日突然解雇されても次の再就職先が見つかるまでホームレスとならずに済むだけの相当の貯蓄を強いる「北風」政策を推進されるというのは不思議でなりません。そりゃ,「供給はそれ自身の需要を創造する」と要約される「セイの法則」というのはあるわけですが,現実には,およそ全ての商品は原材料費等の要因故に価格に下方硬直性がある(だから,一般労働者の労賃をただ同然に引き下げたところで,商品価格はただ同然にはなりません。)ので,「供給が増え供給超過になっても、かならず価格が下がるので、結果として、需要が増え、需要と供給は一致する」という前提が成立しないため,需要者側の購買力を無視して供給量の拡大のみを図ったところで,「拡大された供給量に合わせて需要が拡大する」ということはないのです。
従って,内需を図るためには,消費性向の低い企業や高額所得者から消費性向の高い中低所得者への財貨の移転を図ることが急務であり,それは所得税の累進性を引き上げたり,資産課税を強化したりして,公的部門が吸い上げた財貨を,失業者や低所得者向けの公営住宅への投資や中高等教育の無償化,失業給付の期間延長等の形で中低所得者へ配分したり,解雇規制や労働組合の保護等によって一般労働者の所得水準を維持し上昇させていくことが必要となります。そのようにすることで,国内向けに供給する商品・サービスが,製造原価に適切な利益を載せた価格で相当数購入される環境を作り出すことなしには内需は拡大されないし,内需を見込んだ投資がなされることも期待できないということができます。
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