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06/02/2009

必要とされる構造改革

 The Economistの2009年1月31日-2月9日号の「Asia's suffering」と題された社説は、次のように述べています。

Asian governments must introduce structual reforms(アジアの政府は、構造改革を導入しなければならない)

 これだけだと、新自由主義者から耳にタコができるほど聞かされているいつもの話のように思えてきます。が、The Economistは、このように続けます。

that encourage people to spend and reduce the need for them to save.(人々が支出することを促し、人々が貯蓄する必要を減ずるような)

 すなわち、日本を含めたアジア諸国において求められているのは、日本の新自由主義者たちが未だ声高に主張するような、庶民にさらなる北風を吹き付けるような構造改革ではなく、セーフティネットを張り巡らせて庶民の不安を安らげる構造改革だということです。労働者の賃金を抑えることで製産した低価格を輸出することに偏った経済体制は、内需を過度に抑制しているため、輸出先の経済状況の悪化に耐える余力を製造業者から奪っていくとともに、人件費を削減することで生じた内部留保は、直接又は間接に外国の株式や証券へと形を変え、投資先の経済状況の悪化により泡と消えていったわけですが、もはやそういう構造をこそ変革していく必要があるというべきです。

 勝間和代さんやブレア元英国首相は「教育、教育、また教育」というスローガンを唱えていますが、解雇規制がなされず、何歳になっても10代ないし20代前半の労働者と賃下げ競争を強いられる仕組みを作ってしまえば、一般の労働者家庭では、子供を大学に通わせるどころか、高校に進学させることすらできなくなります(木村剛さんが絶賛するbobby氏の構想に依れば、一般労働者の賃金水準は月額1万円にまで引き下げられることになります。これでは、子供の授業料を支払うどころか、子供に人間的な衣食住を確保してやることすらできません。)。そのような階層では、避妊に失敗し中絶も間に合わずに子供を産み育てざるをえなくなったとしても、法律上許される限り(あるいは法律を無視してでも)なるべく子供を早期に働かせることが必要となります。そして、そのような社会は、程なくして競争力を失っていくことが予想されます。すなわち、新自由主義者は、自分たちを中長期的視野を有している賢人だと思いこんでいるようですが、何のことはない、中産階級を崩壊させ格差を拡大させることがその社会の経済力すら中長期的に失わせることにすら気がつかない、非常に近視眼的な思考の持ち主だというべきです。非人道的で、近視眼的なのだから、誠に救いようがありません。

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