« 池田先生や木村剛さんが望むような経済政策を実行するとどうなるか | Accueil | 原文を確認しないと危ない »

15/02/2009

もっとも典型的な実施例の暗澹たる結果に触れないというのはいかがものか。

 池田先生が何か怒っておられるようです。私は池田先生に私の主張をずいぶんと枉げて紹介されたにもかかわらず「〜しろ」みたいな乱暴な言い方はしなかったわけですが,その辺は,学問分野の違いから来る流儀の差でしょうか。

 池田先生の理論が正しいのであれば,ピノチェト政権前期の新自由主義的経済政策によって,チリの実質平均賃金は大幅に下がったわけですから,失業率も大幅に下がらないとおかしいわけです。でも,実際には,失業率は大きく上がったわけです。特に,雇用者に「to modify individual labor contracts and to dismiss workers without "cause"」する権限を与えた1979年の法改正(池田先生のご主張はこれに近いですね!)以降の経済の落ち込みというのはひどいものでした。民主的に選ばれたアジェンテ政権を倒すために米国が行った経済制裁等はピノチェトがクーデターで政権を握ってから解除されていますから,アジェンテ政権時代よりも経済的な環境はむしろ良好だったはずなのにです。そして,ピノチェト政権末期の1991年に,"restricted the causes for firing employees, increased the compensation that firms had to pay to lay off employees, and restricted employers' recourse to lockouts"な労働法制の改正がなされるや,3年で,「貧困層の収入は3割増加.貧困層の割合はピノチェト時代の45%から30%にまで低下」したわけです。

 労働者保護制度を解体して賃金水準を引き下げたのに,チリでは,失業率が上昇し,国全体の経済成長も果たせなかったわけです。雇用の流動化による賃金水準の引き下げにより失業率が下がるというのであれば,なぜチリではうまくいかず,日本ではうまくいくと言えるのかを理論的に説明する必要があります。

 なお,「雇用の流動化」により,「ワーキングプア」と表現される非正規雇用労働者のレベルに一般の労働者の雇用条件を引き下げる方向で「世代間格差」なり「正社員と非正規労働者との格差」を是正するという経済政策を,池田先生は,議会制民主主義のもとでどのようにして長期的に実現しようというのでしょうか。国営企業の民営化程度の新自由主義的政策ならば議会制民主主義国でも採用できますが,大多数の国民に貧困を押しつける経済政策は,それが「失業率の低下」というさほど意味のない成果を仮にもたらすとしても,議会制民主主義のもとでは相当困難でしょう。

« 池田先生や木村剛さんが望むような経済政策を実行するとどうなるか | Accueil | 原文を確認しないと危ない »

Commentaires

L'utilisation des commentaires est désactivée pour cette note.

TrackBack

» 理工系人にとって経済学は趣味として最適では [文理両道]
 私は元々工学系の人間だが、趣味で放送大学などで経済学系の勉強もしてきた。常々思うのだが、経済学というのは、理工系の人間の趣味としては最適ではないだろうか。特に定年後などの知的な趣味としてもいいのではないかと思う。  現代の経済学というのは、結構数学をつかう。数学を使って物事を理解し解析するのは、元々理工系の得意とするところだ。だから海外には、理工系出身の経済学者も結構いる。わが国でも野口 悠紀雄氏が工学部出身だというのは良く知られた話である。また我が国で一番ノーベル経済学賞に近いと言われている宇... [Lire la suite]

» 新自由主義は結果としてチリに成功をもたらした [Mutteraway]
1970年代のチリは、国有化された銅山の富が国を養っているような状態だったのではないでしょうか。当時は輸出の70%をが銅が占めており、それ以外にはワインやアンチョビなど、第一次... [Lire la suite]

« 池田先生や木村剛さんが望むような経済政策を実行するとどうなるか | Accueil | 原文を確認しないと危ない »

octobre 2017
dim. lun. mar. mer. jeu. ven. sam.
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31