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25/03/2009

起訴事実の一部を認めている

 読売新聞は,次のように報道しています。

 捜査関係者などによると、大久保容疑者は起訴事実の一部を認めているという。小沢代表からの事情聴取については、大久保容疑者らの起訴には不必要として、当面、見送ることにした。特捜部は西松建設から自民党の政治家側に提供された資金について、捜査を継続する。

 これを読んだ読者は,大久保容疑者が「半落ち」状態にあるように受け取るのではないでしょうか。しかし,注意しなければならないのは,この記事には,起訴事実のうちどの部分を大久保容疑者が認めているかについて何ら言及されていないということです。

 全くのでっち上げないし完全な人違いというのでない限り,被疑者と捜査機関との間の認識ギャップは,起訴事実(法律的に正しい言い方としては「公訴事実」ということになります。)の一部に限定されることになります。そして,その一部が裁判所に認定されるか否かによって,被告人が有罪となるか否か,結論が変わってくるということはしばしばあります。更にいえば,刑罰法規の解釈が争点となっている事件においては,起訴事実自体については被疑者と捜査機関との間に全く認識ギャップがない場合だって十分あり得ます。

 この件についていえば,大久保容疑者としては,「政治団体「新政治問題研究会」や「未来産業研究会」から受けた計2100万円の献金について、陸山会の収支報告書に両団体からの献金だと記入をした」という点についてはおそらく認識ギャップはなく,あるいはそれらの政治団体の代表を西松建設のOBが務めていたことやそのことを知っていたこと,あるいはこれらの団体に西松建設から資金が提供されていたこと及びそのことを知っていたことについても認識ギャップがないことも十分に考えられます。小沢氏側の主張は,それらの事情があったとしても,収支報告書には,それらの団体を献金主として記載するのが正しい(ないしそのように考えていた)ということだからです。

 従って,「起訴事実の一部を認めている」といっても,捜査機関に対し上記事実についてこれを認める供述をしていたに過ぎない場合,大久保容疑者は,「半落ち」状態などではなく,ばりばりに否認している状態だということになります。

 このように「起訴事実の一部を認めている」と一口に言っても,どの事実を認めているのかによって実際のニュアンスは全く異なります。にもかかわらず,「捜査関係者」から「大久保容疑者は起訴事実の一部を認めている」と聞かされて,「どの事実を認め,どの事実については依然否認しているのか」を確認することなく,記事を作成して掲載してしまう読売新聞は,マスメディアとしての基本的な資質に欠くのではないかという気がいたします。

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