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03/03/2009

構造改革によって、供給だけが増えて需要は増えないという根拠

 池田信夫さんの,「不況についての迷信」というエントリーの,特に5番は,池田さんの経済理論の限界を如実に示しているように思います。

 

不況の最中に構造改革を行なうと、供給を増やしてGDPギャップが拡大する:構造改革によって、供給だけが増えて需要は増えないという根拠は何だろうか。構造改革(産業構造の改革)は、潜在GDPを高めるものだから、需要と供給をともに高める。たとえば土建業から医療・福祉に労働力が移動すれば、労働供給も労働者の需要も増える。

とのことですが,「構造改革」が労働者への労働の成果の配分の現象を生じさせるものであれば,それは家計収入自体の減少をもたらしますから,国内需要が減少するのは当然のことです。原材料やエネルギーを輸入に頼っている我が国では,国内における労働者の所得水準の減少ほどには工業製品の生産コストは下落しませんから(製品の生産コストを100としたときの人件費が20と仮定した場合,解雇規制の撤廃により,全ての従業員の賃金水準を高卒の2年目の水準に合わせることで人件費を半減させたとして,生産コストは10%しか減少しません。),需要は大幅に落ち込むことにならざるをを得ません。

 結局,解雇規制の撤廃により労働者の賃金水準を引き下げていった場合に国内消費の原資はどこから出てくるのですかという問いかけには一向に答えていただけなかったわけです。

 なお,月収25万円で働いていた土建業労働者1万人が,公共事業の縮小により,月給15万円の福祉現場で働くことになっても,労働供給は増えていません。そして,それまで25万円だった月収が15万に減少するわけですから,国内消費の原資は毎月10万円×1万人=10億円減少することになり,それは彼らを消費者として想定した国内産業の売り上げを減少させることに繋がります。所得税の累進比率を引き上げることで,例えば国内消費では所得分を費消しきれない富裕層により米国国債の購入等にあてられていた資金を国家に吸い上げた上で,これを元に福祉現場労働者の給与水準を月30万円に引き上げることで土建業者から福祉現場に労働者を1万人移転させるのなら,そういう負の影響はなくなっていくわけですが。

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