検察による恣意的・政治的な権力の行使を肯定する人の教員適正
法科大学院において,罪刑法定主義を軽視したり,党派的に偏らず公平・公正に司法が運用されるということに特段の価値を見出さないという人が刑事系の教科を教えるというのは,私は適切ではないと思っていたりします。そういう考え方を植え付けられた法科大学院生が法曹資格を取得し,検察官や裁判官になったときに,社会に与える害悪はとても大きいからです。
「検察官等の捜査機関はアドホック的に刑罰法規を拡張解釈して市民を逮捕・起訴してよく,しかも,その捜査権は政治的に中立的に行使する必要はない」ということを認めてしまうと,捜査機関にその構成員を相当数送り込んだ組織は,その組織にとって都合の悪い者を警察・検察権力を用いて社会的に葬り去ることが合法的にできるようになってしまいます。捜査機関が如何にアドホック的に刑罰法規を拡張しても自分には逮捕される要素は一切ないというほど綺麗に生きている人間などほとんど存在しませんから。多くの実務法曹は,司法がそのような政治的な手段として活用されることをとても嫌います。それ故,多くの実務法曹は,今回の小沢一郎秘書逮捕事件については批判的です。
さらに,検察が,野党第一党の党首を追い詰めるために,被疑事実と直接関係のないことを含めてマスメディアに情報を「リーク」するということは,多くの実務法曹はこれを許されないことだと考えます。捜査機関が公的資金と公的権力の元で収集した情報は,誰を起訴しまたは起訴しないかを適切に判断し,起訴した場合に適切な広範活動を行うためにのみ活用されるべきであって,政権与党の援護射撃等,その他の政治的な目的に活用されるべきではないと考えるのが,実務法曹の間では一般的だと思います。捜査機関はそれが虚偽でない限りマスメディアに捜査情報をリークすることは何ら問題はなく,これを取り上げて報道するマスメディアのみを批判すれば足りるとか,どこまでが捜査機関のリークによる報道かについて正確な情報を有しない一般市民どもは捜査機関によるリーク云々を批判する資格はない等と嘯く人々が,法科大学院の刑事法分野の教員として後進の指導をしているということは,彼らの指導を受けた人間がその教えに従って検察権限を政治的な目的で濫用する危険が高まるという意味で,私たちをぞっとさせるものです。
検察権力が,アドホック的に刑罰法規を拡張解釈して,自分たちに都合の悪い法改正を指向する政党を追い詰めるために,総選挙に近い時期を見計らって,野党第一党の党首の側近のみを逮捕・起訴し,被疑事実と直接関係のないことを含めてマスメディアに情報を「リーク」するということの問題点を指摘し,この点について検察の首脳がどのような認識でいるのかを問いただし,検察がそのように政治的な権限の濫用を行えないような仕組みを講ずることというのは,まさに立法機関でありかつ政府の行動についての監視機関でもある国会がまさになすべきことです。現実に検察権力の恣意的な行使を受けた野党第一党がそのような行動をとろうとしたことを逆手にとって,当該政党が政権を取ったら大変なことになると煽り立て,検察権力が如何に恣意的に濫用されようとも何人も(国会であっても)これを制御すべきではなく,検察にはその権力を恣意的に濫用するフリーハンドを未来永劫与え続けるべきと主張される方というのは,実務法曹の中では極めて特殊だと思われます。そういう方に,それが正しいこととして教え込まれる法科大学院の学生というのは,彼らが検察官や裁判官になった暁には,末恐ろしい存在になるなあと危惧してやみません。
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