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14/04/2009

「予算」という要因により「トレードオフ」が生ずる場合に関していえば,単純な「二者択一」問題となることは稀

池田信夫さんは,ご自身のブログのコメント欄で,次のようなことを述べています。

某弁護士は、こう書いています:

<普通に考えれば,日本を含む全ての国において,国家予算が地球温暖化対策と貧困対策にのみ割かれているということはないのですから,他の用途に割かれている予算を削減することによって,地球温暖化対策と貧困対策の双方により多くの予算を割くことは可能です。また,必要とあらば,法人税や相続税等を増税することにより国家予算の枠自体を拡大した上で,地球温暖化対策と貧困対策の双方により多くの予算を割くことも可能です。>

こういう論理って、どこかで見たことありません?

そう、共産党がよくいう「軍事費を削減して無駄づかいを減らせば、福祉予算は倍増できる」という類の話です。自分たちが必要だと思う予算以外は、すべて定義によって「無駄」なので、いくらでも削減でき、国家予算は無限にあるわけです。これがトレードオフを知らない思考様式の典型です。

 池田式「トレードオフ」を知っている方の思考様式ではどのように考えるのかわかりませんが,一般には,優先的に対処すべき政策課題が現れた場合,これに対処するために必要な予算を確保するためには,増税等の方法により予算の枠を増やすか,より優先度が低いと考えられる政策課題に割り当てる予算を削減するのが通常です。特定の政策課題(例えば「温暖化対策」)に必要な予算の捻出は,それと一対一で対応すると池田信夫さんが指定する特定の政策課題(例えば,「貧困化対策」)に割り当てる予算を削減することにより行わなければならないというふうに硬直的に考えるべき理由などどこにもありません。「トレードオフ」という関係はいろいろな要因により発生するのですが,こと「予算」という要因により「トレードオフ」が生ずる場合に関していえば,単純な「二者択一」問題となることは稀です。

 このような思考は,他の政策課題に国家予算を用いることを「無駄」と考えなくとも可能です。優先度の高い政策課題「甲」が現れたことにより(或いは特定の政策課題「甲」の優先度が高まったために)他の政策課題「乙」の優先度が相対的に低下したが故に,全体の予算における「乙」処理のために割り当てる予算の比率を低下させるということは,政策課題「乙」を国家予算を用いて処理することを「無駄」と定義せずとも可能だからです。

 なお,池田さんには「トレードオフを知らない思考様式の典型だ」として批判されるかもしれませんが,私は,北朝鮮を含む少なくない国に関して,軍事費を削減して無駄遣いを減らして,国民福祉のために予算を増やした方がいいと思ったりします。

 また,

政府でも会社でも予算を扱ってみれば、いかに多くのトレードオフの中でぎりぎりの妥協が行なわれているかがわかるでしょう。自由に切れる「無駄」なんかないのです。

とのことですが,現在の国家予算には一切の「無駄」がないと池田さんがお考えとは思っても見ませんでした。まさか,地球温暖化対策と貧困対策の二つが嫌いすぎて,そんなものに国家予算が用いられるくらいなら,無駄な道路を造ったり,空港を作ったり,情報大航海プロジェクトに代表される政府主導の産業振興プロジェクトに国家予算を割いた方がましだと言っているわけではないと思いたいのですが。

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