「『就職氷河期』世代の非正規社員」問題を単なる「錦の御旗」として掲げる人々
既に見てきたとおり,法律上の解雇規制があっても,景気回復期において企業は大量の新卒者を正社員として雇用してきたし,また,多くの非新卒者についても正社員として採用してきたわけです(なにしろ,前職正社員の場合,7割以上が正社員として採用されています。)。他方,いわゆる「就職氷河期」のときに正社員として採用されずその後も長らく正社員として採用されなかった人々は,ここ数年の景気回復期においても,なかなか正社員として採用されなかっらということが事実としてあり,景気後退期に突入した際には,非正規社員から先に解雇していくというルールの下,「就職氷河期」世代の非正規社員らが大量に解雇されることになったわけです。
従って,「就職氷河期」のときに正社員として採用されずその後も長らく正社員として採用されなかった人々を中長期的に救済する方策を模索するにあたっては,企業は,新卒者や前正社員を正社員として採用したのに,なぜ「就職氷河期」世代の非正規社員らを正社員として採用しなかったのか,ということを研究していかなければなりません。そのように考えてみると,法律上の解雇規制を撤廃したところで,企業が新卒一括採用をやめて「就職氷河期」世代の非正規社員らを正社員として雇用するようになるとか,正社員を気軽に解雇して空いた分を「就職氷河期」世代の非正規社員らをもって補充するとかというストーリーはほぼ期待薄であることが容易に想像可能です。多くの実務法曹は,「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいなスキームには非常にネガティブなので,「手の見えない神真理教」の信者とは見解があわないことが多いようです。
もちろん,「手の見えない神真理教」を唱道している人々がみな,「正社員に対する解雇規制を撤廃すれば,「就職氷河期」世代の非正規社員らが普通に家庭を持てる程度の処遇を得られるようになる」と本気で考えているのかというと多分に疑問だったりはします。所詮は,ある種の人々に対する憎悪ないし嫉妬に基づく行動を正当化するためのある種の「錦の御旗」として,「『就職氷河期』世代の非正規社員」が利用されているに過ぎないようにも見えます。「『就職氷河期』世代の非正規社員」の処遇の改善」が,例えば正社員の処遇を悪化させる提案を正当化し,これに対する批判を封じ込める文脈でのみなされている場合,まず間違いないといえるでしょう。
「就職氷河期」世代の非正規社員らの不遇を「世代間闘争」のせいにして,「階級間闘争」という面をなかったものにしようとしている人々には注意した方がよいでしょう。「世代間闘争」を問題視するのであれば,旧世代が「墓場まで持って逃げた」財産はなるべく「相続税」という形でいったん国庫に集めて,「就職氷河期」世代の非正規社員らの待遇改善等に用いるように主張しているはずですが,「階級間闘争」から目を背けさせるために「世代間闘争」を煽っている人々は,そんなことは口にしないか,下手をすると,むしろ「相続税」の廃止や減税を主張して,これが「就職氷河期」世代の非正規社員らの待遇改善等に用いられることを拒否する傾向にあります(なお,相続税と起業のインセンティブとの関係については,小飼さんや堀江さんなどの起業により一代で財をなした人がむしろ相続税の100%化を主張されていることなどから,推して図るべしです。)。
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