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08/05/2009

普通に経済学の教科書を読んだのでは

 池田信夫さんが次のように述べています。

この記事では面倒なので書かなかったけど、ここでいう複数均衡は、厳密にいうと二つのポートフォリオ(混合戦略)がナッシュ均衡になっている状態です。1では長期雇用から有期雇用までのオプションがあるのに対して、2では(規制と判例によって)全員が長期雇用という組み合わせしかないので、コーナー解になってしまう。

http://agora-web.jp/archives/599359.html

解雇規制をやめても横並び意識があるかぎり、どんどん解雇が起こることはありえない。特に中核の社員については、ほとんど変わらないでしょう。変わるのは、ブルーカラーの雇用形態が多様化することです。これは政府が強制なんかしなくても、経済合理的であればそういう均衡に近づいてゆく。意味不明なことを書いている某弁護士は、ナッシュ均衡という概念を理解していない。ウィキペディアの読みかじりで変なことを書かないで、経済学の教科書をちゃんと読んでみろ。


 普通に経済学の教科書を読むと,池田さんとは異なる理解に達してしまいます。池田さんが,クルーグマンやスティグリッツを超えるような経済学の体系書を書かないと,「経済学の教科書を読んでしまうと,池田さんの唱える主張に納得できなくなる」という状態が継続されることになりそうです。

 それはともかくとして,労働問題について言及するにあたっては,労働法の教科書くらいお読みになった方がいいのではないかと思います。現行労働法でも,短期雇用というオプションは認められているのであって,「全員が長期雇用という組み合わせしかない」わけではありません。ただ,短期雇用の場合はその雇用期限が到来するまで,長期雇用の場合は「定年」に達するまで,雇用が継続されると期待することは合理的なので,この合理的期待を安易に裏切ってはならないということで,解雇規制が設けられているに過ぎません。もちろん,実際には長期雇用を予定しているにもかかわらず形式的には短期雇用とその連続的更新という形態がとられている場合に,更新の拒絶(雇止め)を,実質的には長期雇用の途中解除として制約することはあるにせよ,そういった脱法行為的なものでない限り,一定の事業の完了に必要な期間を定めるものや3年以内の短期雇用は普通に認められています。だから,長期契約の有する効用よりもとにかく低賃金であることが望ましいという部門には現行法の下でも短期雇用の従業員をあてることができます。

 なお,長期雇用契約においては法律上の解雇制限があるということは,実は,労働者を長期雇用する企業にとってもメリットがあります。「長期雇用契約を結んでも,企業はいつでもこれを保護にして恣意的に労働者を解雇することができる」ということでは,「この企業は十分を長期雇用してくれているのだ」との信頼を従業員にもってもらえなくなるので,長期雇用がもたらす効用が十分に得られなくなります(いつでも恣意的に企業から解雇される場合,当該企業が長期的に成長することは従業員にとって大きな意味を持たず,それよりその企業にいる間にできるだけ多くの富をそこで得るか,または次の企業に雇用される際の自己の商品価値をできるだけ高めるための行動をとることが最優先の課題となります。)。法律上解雇制限がなされることにより,長期雇用の雇用者にとっての効用も従前となっていくのです。従って,一部の製造業者の経営者の近視眼的な利害に振り回されて解雇制限を廃止して長期雇用に対する労働者の信頼を破壊してしまうことは,日本経済にとっても却ってマイナスである可能性が十分にあります。

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