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juillet 2009

30/07/2009

ARE JUDGES OVERPAID?

 Stephen J. Choi, G. Mitu Gulati, Eric A. Posnerによる「ARE JUDGES OVERPAID? A SKEPTICAL RESPONSE TO THE JUDICIAL SALARY DEBATE」という論文が話題になっているようです。要は、「裁判官は給料をもらいすぎか」というお話しです。

 Abstractをみると、

Theory suggests that increasing judicial salaries will improve judicial performance only if judges can be sanctioned for performing inadequately or if the appointments process reliably screens out low-ability candidates.

とあるわけですが、日本の裁判官の場合、パフォーマンスが悪くてもせいぜい左遷くらいしかされないし(憲法上特別に身分保障されていますから、当然のですが。)、修習期間が短くなると能力の低い志願者をふるい分けることができなくなっていく危険が増えていくなあ等々と思ってしまうところがないわけではありません。

 そうでなくとも、弁護士の所得水準が下がっていくと、裁判官や検察官の給与水準を、他の官庁の国家Ⅰ種組の給与水準よりも高く置いておく理由ってなくなっていくのだろうという感じがしてしまいます。ただ、そこでもたらされる結論って、裁判官の給与水準を引き上げてもそのパフォーマンスは改善されない(だから給与水準を引き上げても無意味)という絶望であって、裁判官の給与水準を低いままに置いておいてもパフォーマンスが改善されるという希望ではないのが、辛いところです。

29/07/2009

控除の廃止と罰金とは同じではない

 池田信夫さんがアゴラでのご自身のエントリーのコメント欄で次のように述べています。

TBで指摘がありましたが、私もこの岡田発言には驚きました。配偶者控除や扶養控除に問題があり、特に所得制限が主婦の労働意欲を阻害していることは事実ですが、それを子供手当とリンクすると、「子供を産まない(あるいは産めない)主婦は罰金を払え」というのと同じです。

 むしろ,この池田さんの発言の方が驚きなのではないでしょうか。配偶者控除が廃止されることによって負担増となるのは主婦ではなくてその夫だということはさておくとしても,特定の控除が受けられなくなることと罰金を科されることとを同視するのは一般的ではありません。それは特定の税控除をいわば「既得権」と捉えることを前提とした考え方であり,日頃の池田さんの御主張とは相容れないのではないかという気もします。更にいえば,民主党案では,子供がいようといまいと配偶者が専業主婦であることでは控除しないこととするというだけで,「子供を産まない(あるいは産めない)主婦」に対してのみ特別な負担を強いるものではありません。

28/07/2009

サンデープロジェクトを見ての感想を遅ればせながら

 雇用に関して規制を強化しても賃金原資は増加しないということを得意げに述べる人が最近散見されるようになりましたが、雇用に関する規制を緩和した場合に賃金原資が減少して配当に回される可能性の有無について彼らが言及しないというのは誠実さを欠いているなあ、と先日のサンデープロジェクトでの城繁幸さんの発言を聞いて思ったりしました。

 あと、パネリストの一人をやりこめてやろうという意図だけが見え見えの質問って、非常に2ちゃんねる的だなあとは思ったのですが、コンサルタントとして生きていこうと思ったらやめた方が良いのではないかなあと人ごとながら思ってしまいました。コンサルタントって、顧客や相手方をやりこめることを業とする職業ではありませんから。

 あと、何かにつけて消費税の増税を政治家に迫ろうとする田原総一郎さんを見て、消費税って、一部の輸出企業以外の企業にとっては事実上の外形標準課税として働いてくるのに、理論的に最終負担者が一般消費者であるというだけで、なぜそんなに彼を惹き付けるのだろうと思ったりしてしまいました。まあ、消費しきれないほどの収入を得て資産形成を行っているごく一部の人々には、所得税や資産税を軽減してその分を消費税で賄うというのは非常に魅力的なのかも知れないけれども、消費税の大幅増税って内需産業の体力を奪っていくのだろうなあということはあまり考えなくてもよいことになっているのでしょうか。

26/07/2009

明治での学部試験 2009年・夏

 今年から,明治大学法学部で「法・情報・社会」の授業を持つことになったことは既に述べました。中大での授業はゼミ形式なので学部試験というものがなかったのですが,明治での授業は講義形式なので学部試験が避けられません。

 何しろ初めてのことなのでレベル設定をどうするのかがつかめていないのですが,とりあえず下記のような問題を出してみることにしました。

 来たる衆議院議員選挙に向けて、特設サイトをウェブ上に開設するとします。できるだけ多くの人に何度もそのサイトを訪れてもらうために、どのような工夫をしたらよいでしょうか。

 その際、法律的にはどのような点に注意すべきでしょうか。

25/07/2009

貧しい家庭の子女がそれでも高校に通うことを望んでいるのは日教組等の労組だけ?

 池田信夫さんが次のように述べています。

私は今年、民主党の勉強会に呼ばれたときにも、この点について「農家に所得補償するなら専業農家に限定すべきだし、教育費を補助するならバウチャーにするなど、市場メカニズムを生かす工夫をすべきだ」と批判しました。これについて政調会の幹部は「おっしゃる意味はわかる。子供手当は一種のバウチャーのつもりだ」と答えました。ところが最近出てきた「高校無償化」などの政策は、昔ながらのバラマキです。


アメリカのブッシュ政権でさえ労働組合の反対で(連邦レベルでは)実施できなかった教育バウチャーを、日教組に依存する民主党が実施できるとは思えない。先日の派遣労働禁止といい、この学費無償化といい、新たに出てくる政策も労組べったりの露骨なバラマキばかり。これでは国会で(16年前のように)強力な野党になった自民党の攻撃を受け、また1年ぐらいで空中分解するのが関の山でしょう。

 池田さんの目には,高等学校の学費の無償化すら「労組べったりの露骨なバラマキ」に見えるようです。

 ただ,ほとんどの地域では,どこの高校に進学したいかは生徒が自由に選択することができ,希望者数が定員を超える場合には入学試験等により各高校が入学希望者を選抜することができる以上,高校に関して「授業料の無償化」がだめで,「教育バウチャー」ならよいとする合理的な理由はないし,「教育バウチャー」ではなく「授業料の無償化」を選択することが「労組べったりの露骨なバラマキ」であるとする理由もよくわかりません。それ以前に,労働者らが労働組合を通じて一定のロビー活動を行い自分たちの利害を国政に反映させるという,概ね民主主義国家においては広く行われていることをそこまでネガティブなものとして捉えているあたりが,そもそもどうかと思わなくもないですが。

 まあ,新自由主義者の中には,

従業員を雇えるような株式会社を起業できる人を増やす為には、図の左上に人(自己抑制キャパが高く、社会適応性が高い人)の大学進学率を減らして、高収入・高安定の仕事につきにくくすれば良いのです。

自己抑制キャパと社会適応性の両方が高い人で、中卒・高卒で就職する人数を増やすと、かれらは学歴以外の方法で高収入を目指すようになります。そのような方法の中で、もっとも効率的な方法の一つが自分で起業する事です。

とした上で,

では、そのような具体的な方法とはどういった事でしょうか。乱暴な言い方ですが、ずばり、経済格差をもっともっと広げて、貧乏な底辺の家庭を増やす事だと思います。つまり日本が一旦、発展途上国に戻れば良いのです。
提唱される方もおられるので,貧しい過程に生まれ育った子供たちが高度の教育を受ける可能性を高める高校の授業料無償化というのは,一部の新自由主義者たちにとってはとても出ないが許せないものなのかもしれません。

24/07/2009

Michael Jackson's personal doctorの刑事責任は?

 一時期、日本のブログ界では、医師が医療行為に関連して患者を死に至らしめたことで刑事責任を問われるのは先進国では日本くらいなものだという言説が散見されたと記憶していますが、Micheal Jacsonの氏に関して、担当医の刑事責任を問えないかということが米国では問題となっており、警察は捜査活動を行っているようです

21/07/2009

京成電鉄荒川橋梁

 いわゆる廃墟写真訴訟の原告である丸田祥三さんと原武史さんとの対談が、「東京人」の8月号に掲載されています。

 その表紙に採用されているのが、京成本線の堀切菖蒲園駅と京成関屋駅とをつなぐ、荒川に係る鉄橋の写真です。まさに、私が、ほぼ毎日京成電車に乗って通過するところです(私の自宅の最寄り駅が、まさに堀切菖蒲園駅!)。

 小林伸一郎さんに対する上記訴訟は、同い年かつ研修所同クラスの野間啓弁護士と一緒にやっているのですが、私が丸田さんの写真に野間弁護士ほどノスタルジアを感じないのは、丸田さんがノスタルジアを感じる光景が私にとって日常の光景だからなのかなあと妙に納得してしまった次第です。

20/07/2009

「人質司法」という言葉の意味

 「人質司法」というのは「誘導尋問」とは異なり正式な法令用語ではありませんのでどのように定義しようと間違いだとは言えないのかもしれませんが,「人質」という言葉の持つ,「第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求」するために人の身柄を拘束するという目的指向的な要素を捨象した定義というのは的を外しているような気がしてなりません(なお,法令用語として「人質」との語が用いられている例としては,人質による強要行為等の処罰に関する法律があり,そこでは,第三者に対して義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求するための人質にする目的で行う逮捕・監禁の法定刑を,通常の逮捕監禁罪のそれより引き上げています。)。

 「第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求」するという要素を「人質司法」という概念から除外する目的が,「人質司法」として非難の的になっている一連の行為のうち警察・検察が主としてになっているものを「人質司法」の枠の外に置いてみせることによって,「人質司法は裁判所の問題。人質司法に関して警察・検察を責めるのはお門違い」ということを言いたいということにしかないのだとすれば,とても度量の狭い話のように思います。

18/07/2009

「検察はそんなに悪くない。一番悪いのは,検察の意見を尊重する裁判所だ」という意見について

 矢部善朗創価大学法科大学院教授は,次のように述べています。

検察官や警察官が被疑者を逮捕しようと思えば、普通は、裁判官に逮捕状の発付を請求し、検察官が被疑者を勾留しようと思えば、裁判官に勾留を請求する必要がありますが、裁判官がその請求を認めなければそれまでです。

 被疑者を釈放しなければなりません。

 つまり、裁判官が身柄拘束を認めなければ、警察官や検察官だけで人質司法などやりようがないのです。

 その意味で、ウィキペディアが検察庁を人質司法の主体のように見ているのはやや的外れという感じがします。

 脇役の一人ではありますが。

 人質司法が裁判官の問題だとしますと、人質司法と取調べ可視化の問題は直接的な関係を持ちません。

 取調べの可視化は警察官や検察官による取調べの適正を確保することについては有効ですが、供述の信用性の確保を担保するものではありません。

 となると、取調の完全可視化(全面録画)が実施されたとしても、裁判官の意識が変わらない限り、人質司法は依然として残ることになります。


 矢部教授は,以前その開設する匿名電子掲示板で

知らないのなら黙っていればいいのだが、刑法と刑事訴訟法くらいは知ってるという思いがあるからか、分かっているつもりになっているらしい。

とりあえず人質司法からいってみようかと考えています。

問題の切り分けができない小倉弁護士は、人質司法が誰の問題なのか分かっていないようです

と仰っていたので,人質司法に関して素晴らしい知見が聞けるのかと期待していましたが,すっかり拍子抜けです。

 人質司法の「人質」司法たるゆえんは,被疑者・被告人の身柄が拘束されていることに乗じて被疑者・被告人に対し義務のないことを行いまたは正当な権利を行使しないことを明示的にまたは黙示的に求める点にあります。そして,その主体は,捜査段階では警察・検察であり,公判段階では検察と裁判所ということになります。前者は,自らの見込みに従って作成した自白調書に署名・押印することを求め,後者は,少なくとも検察側立証を早期に終わらせる(そのためにできるだけ多くの供述調書を同意する)ことを求めるわけです。

 例えば,西日本新聞は,「開廷を前に 点検・裁判員制度<7>人質司法 否認すれば出られない」という記事の中で,

 「起訴猶予になるような調書を作るから、協力しろ」「約束する。10日間で出してやる」

 昨年11月、鹿児島県警に出資法違反容疑で逮捕された女性(48)は、取調官から、身柄拘束からの解放を条件に、自白を促されたという。

と報じています。これなんかは典型的な「人質司法」の悪い面が出た例ですが,それが主として裁判官の問題だといわれても,にわかには納得しがたいところです。起訴後,この女性が起訴事実を認める内容の上申書を提出するまで,再三の保釈請求にもかかわらず保釈を認めなかった(それゆえ,この女性は,意に沿わない内容の上記上申書を提出し,執行猶予つきの有罪判決を甘んじて受けることとなった)点については,罪証隠滅のおそれがあるとして保釈に反対する意見を出し続けた検察官と,その検察官の意見を聞き入れ続けた裁判官とのいわば「共犯」と評価しても良いとは思いますが。

 そして,捜査段階での人質司法的な手法を防ぐためには,警察・検察に対し,身柄拘束と絡めて「自白」を促すことを改めて禁止するとともに,取調べ状況を録画したビデオにより,特定の取調べ担当官が身柄拘束と絡める形で「自白」を促していたことが発覚した場合には,当該取調官をしかるべく処分することが必要です。あら,人質司法と取調べ可視化の問題がリンクしてしまいました。

警察のお膳立てを流れ作業で処理していっても経験密度は高まるの?

 矢部善朗創価大学法科大学院教授は,その開設する2ちゃんねる型匿名電子掲示板で次のように述べています。

ところで、刑事事件ばかりやっている検事でも、一応一人前になるには5年程度かかります。

刑事事件の経験密度で言えば、知財関係の事務所の若手弁護士と検事では100倍くらいの違いがあるかも知れません。

要するに、その程度の経験で刑事事件のディープな部分を語られてもな〜という思いを持つのは私だけではないと思います。

謙虚ならまだいいんですが。

 刑事事件の経験件数だけでいえば,知財関係の事務所の若手弁護士と検事では100倍くらいの違いがあるかも知れません。ただ,検察官の場合,警察及び裁判官に助けられる度合いが大きい分,1件処理することにより得られる経験密度は弁護士の方が大きいのではないかという気がします。普通の法律事務所だと,検察事務官ほど刑事事件に通暁している事務員も置いていない(まあ,被疑者取り調べの録音録画物のチェックをお願いするとそれを横流ししかねないような事務員も雇っているところもあまりないと思いますが。)ので,各種調査を弁護士自身が行う割合は非常に高いですし。

 矢部教授が「刑事事件のディープな部分」を語ったのを拝読したことはないので(まあ,私たちから見ると「ディープな部分」と認識されないことを,矢部教授は「ディープな部分」だと位置づけている可能性がないわけではありませんが。),どうでも良い話ではないかという気もしますが。といいますか,矢部教授のブログは,弁護士を名乗る人のブログでありながら,弁護士としての活躍ぶりを感じさせない希有なブログですので,「刑事事件のディープな部分」など望むべくもないかなという気もしたりなんかします(刑事事件に造詣が深い弁護士のブログの場合,奥村先生にせよ,落合先生にせよ,大崎先生にせよ,刑事弁護人としての活躍の一端がかいま見れるのと,対照的です。)。

16/07/2009

で、取調べの可視化はどうなの?

 矢部善朗創価大学法科大学院教授が、その開設する2ちゃんねる型匿名電子掲示板で次のように述べています。

突っ込みどころが多すぎて、どこから手をつければいいか分からない(^^;

要するに、小倉弁護士は刑事弁護について何も知らない。

知らないのなら黙っていればいいのだが、刑法と刑事訴訟法くらいは知ってるという思いがあるからか、分かっているつもりになっているらしい。

とりあえず人質司法からいってみようかと考えています。

問題の切り分けができない小倉弁護士は、人質司法が誰の問題なのか分かっていないようです。

 上記のような発言の方が法的にはやばいのではないかということはさておくとしまして、その前に、刑事弁護について造詣の深い矢部教授には、取調べの可視化を実現するための刑事訴訟法改正案として、どのようなものであれば許容できるのかを、具体的に開陳していただきたいものです。近々行われる衆議院議員選挙の結果公明党が連立与党から外れれば、取調べの可視化を実現するための刑事訴訟法改正が具体的になされる可能性が高くなるのですから。

 「人質司法」についても、矢部教授の独自説が拝見できるというのであればそれはそれで楽しみではあるのですが、「誘導尋問」にせよ「人質司法」についても、通説とは異なる定義なり説明なりをされるのであれば、ちゃんと論文にまとめればいいのになあと思ったりはします。

15/07/2009

イナゴさんの言い訳探し

 saposaposenさんは,「どこまでも陰険なイナゴさんへ」というエントリーについて,

争点関連証拠にモロに該当するのでは?/追記:「諏訪メモ」は「証拠物」(法316条の15第1項1号)で類型的証拠で開示対象では?「取調べメモに該当しないが証拠物として開示対象です。」という訂正を期待したが無駄か。

というはてブコメントをつけてきたようです。

 「改正法の最高裁判例と松川事件との関係」はどこに行ってしまったのでしょうか。改正刑事訴訟法に関連した最高裁判例で,「取調べメモに該当しないが証拠物として」開示を命じた例があるのであれば,その判決年月日を紹介して下さい。>saposaposenさん

 なお,刑事訴訟法316条の15は,公判前整理手続に関する規定であり,その時点で,「開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項 」を被告人または弁護人が明らかにした上で請求しなければいけないので,松川事件の諏訪メモのようにその存在そのものが隠匿されてしまうと,開示請求をすることすら困難だということになります。

警察・検察主導で冤罪をでっち上げて,その責任は弁護人に押しつける

 こちらの法廷傍聴記事が話題となっているようです。

 否認事件とはいえ,主犯が既に執行猶予となっている事案ですから,当該被告人が執行猶予中でもない限り,たとえ有罪認定されても実刑はないだろうということはまあ見えていることですし,これといって証拠が隠滅可能な状態で放置されている事案でもなさそうです。でも,否認していれば長期にわたって身柄を拘束されるのが,我が国の刑事裁判の実情です。

 このような人質司法をそのままにしつつ,司法取引が導入されれば,被疑者は実のところ被疑事実を犯していようといまいと,罪を認めて身柄を解放してもらうのが,経済的には合理的だということになります。たとえ被疑者段階で弁護人がついたところで,この点は何ら変わるところがありません。かくして警察・検察は,人質司法をそのままに司法取引が認められれば,無実の人間に刑罰を科すことにつき,弁護人を共犯に引き込むことができることになります。

へえ,あの事件,別の人が真犯人だったのですか。無実の被疑者に司法取引に応じさせた弁護人が悪いんですよね。おれたち警察のせいにしないで下さい。

と責任を弁護人に押しつけることができるわけです。

 矢部善朗創価大学法科大学院教授は,即決裁判について,

 ともかく即決裁判手続は、必ず弁護人の補佐のもとに被告人が同意するということが大前提になっていますので、制度が適切に運用されるためには弁護人が職責を適切に全うすることが重要です。

述べています。人質司法をそのままにしておきつつ,弁護人が職責を適切に全うすることが重要ですといわれても,「真実はやっていないのにやったと認めることで早期の身柄解放を目指すのか,長期間身柄拘束を受けることを甘受してでも,やっていないことはやっていないと言い続けるのか」という「究極の選択」を被疑者に強いる役割を弁護人に押しつけるとともに,被疑者が前者を選択し,後に冤罪だったということが判明した場合に,その責任を弁護人に押しつけようというものでしかないように思われます。

 警察・検察主導で冤罪をでっち上げて,その責任は弁護人に押しつける。捜査機関側には,誠に好都合の制度のようです。

どこまでも陰険なイナゴさんへ

 saposaposenというIDを用いて,

ならば改正法の最高裁判例と松川事件との関係に言及して。

というはてブコメントを下さった方がいるようです。プロの目から見ると無意味な質問だとわかるわけですが,一般の方はこういう言及がなされていると,私が重要な見落としをしていると誤解されるかもしれません。そこが彼らのねらい目なのでしょう。それに反論するために私が無駄な時間を使えば,それはそれで彼らにとっては好都合なのでしょう。

 最判平成19年12月25日,同平成20年06月25日,同平成20年09月30日とも警察官が作成したメモ,備忘録に関するものであるのに対し,松川事件で問題となったのは,共謀がなされたとされている日時に被告人と労使交渉に当たっていた会社側の担当者のメモであって,後者については,倉島記者のスクープがなければ,検察がこれを保管していることすら弁護人にはわからなかったわけで,近時の刑事訴訟法改正は,松川事件のような形で警察・検察が被告人のアリバイ等に関する証拠を隠匿し,握りつぶすことを克服するものとなっていません。

 こんなことは,改正刑事訴訟法に関する最高裁判例と,松川事件についての概要を読んでいれば,普通にわかる話だと思うのですよね。でも,矢部教授は,この種の印象操作は問題視しないようです。

14/07/2009

独りの博士様による「スパム」扱いの効力

 池田信夫さんが,そのブログのコメント欄で次のように述べています。

当ブログでは、悪質なIDは「拒否リスト」に入れてコメントできないようにします。それを怨んで私にEメールを出してくるバカは、Gmailで「スパム」に分類するので、Gmailが出せなくなりますよ。

 はたして,Googleは,Gmailに関して,特定のユーザーのみが特定のメールアドレスについて集中的に「迷惑メールを報告する」コマンドを実行した場合,そのメールアドレスが用いられたメールを汎用的にスパムメールと判断し,爾後,そのメールアドレスを用いたメールはどこに出したものでもスパムフィルターでカットされるようになるのでしょうか。

 スパムというのは一般に不特定多数人に同内容のメールを送信するものであり,一人のGmail利用者にのみ送られるスパムというのは通常考えがたいこと,一人のGmaiユーザーからの申告のみで特定のアドレスからのメールを全てスパムと判断することとしてしまうと,特定のGmailユーザーが復讐目的で特定のアドレスからのメールをスパム扱いにし,他のGmailユーザーに届かないようにすることが可能となってしまうこと,等を考えると,さすがにそのような単純なアルゴリズムをGoogleは採用していないように思ったりします。

13/07/2009

はてブイナゴさんの残念な人生

 特定のブログ主を中傷したい人々にとって、中傷するネタの真否などはどうでもよいことのようで、どこかに中傷ネタがあるとその真否を確認したり等はしない傾向があるようです。

 「松川事件の時と何が変わったのか」というエントリーに対し、wataru-ishizukaというはてなIDを用いて、

刑事訴訟法改正を知らない無知(類型的証拠開示,争点関連証拠開示:法365条の15~20)

というはてブコメントを付けてきた方がいます。その後、このコメントの尻馬に乗るはてブイナゴさんはいても、その間違いを正そうという方はおられなかったようです。

 少なくとも総務省が提供している法令データベースを見る限り、刑事訴訟法365条の15という規定はありません。六法等を見ていないのではないかという気もしてきます(っていいますか、360台って、上訴に関する規定です。)。。

 類型的証拠開示に関しては、刑事訴訟法第316条の15という規定はあります。

 これは、

第三百十六条の十五  検察官は、前条の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、次の各号に掲げる証拠の類型のいずれかに該当し、かつ、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その重要性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、同条第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。

一  証拠物

二  第三百二十一条第二項に規定する裁判所又は裁判官の検証の結果を記載した書面

三  第三百二十一条第三項に規定する書面又はこれに準ずる書面

四  第三百二十一条第四項に規定する書面又はこれに準ずる書面

五  次に掲げる者の供述録取書等

イ 検察官が証人として尋問を請求した者

ロ 検察官が取調べを請求した供述録取書等の供述者であつて、当該供述録取書等が第三百二十六条の同意がされない場合には、検察官が証人として尋問を請求することを予定しているもの

六  前号に掲げるもののほか、被告人以外の者の供述録取書等であつて、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの

七  被告人の供述録取書等

八  取調べ状況の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、身体の拘束を受けている者の取調べに関し、その年月日、時間、場所その他の取調べの状況を記録したもの(被告人に係るものに限る。)

○2  被告人又は弁護人は、前項の開示の請求をするときは、次に掲げる事項を明らかにしなければならない。

一  前項各号に掲げる証拠の類型及び開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項

二  事案の内容、特定の検察官請求証拠に対応する証明予定事実、開示の請求に係る証拠と当該検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし、当該開示の請求に係る証拠が当該検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であることその他の被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由

というものであって、「検察側が手持ち証拠の全てを弁護人に開示」しなければ被告人が無罪となるというものでもなければ、「弁護側が具体的に検察側手持ち証拠の証拠開示命令の申立てを行っ」た場合に必ずこれを認容させるものでもありません(なんたって、「その重要性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるとき」に開示すれば足りるのですから。)。ちゃんと条文にあたっていれば上記のようなコメントは付けなかったのではないかと思うのですが、とにかくネガコメさえ付けられればいいという方にはそのようなことは望むべくもありません。

 ただ、もう少し明るいことにエネルギーを使った方が良いのではないかと、人ごとながら思ってしまいます。

前期の授業予定終了

 中央大学、明治大学とも、私の前期の授業は無事終わりました。

 ただ、最近はセメスター制が流行なので、前期は前期で成績を付けていかなければなりません。で、何が困るといえば、4年生の出席日数の問題です。それでも、通常の授業の場合は、「学部試験一本勝負」とすることで救済が可能なのですが、ゼミの場合そういうわけにも行かないのが思案のしどころです。

 もちろん、「遊び呆けていて出席が足りなくなった」というのであれば同情の余地はないのですが、前期中に就職活動を終えることが出来なかったために出席が足りなくなってしまったということだと、教員としても単位を落としにくいところが辛いところです。

11/07/2009

太平記占い

 Wallersteinさんのところで太平記占いを紹介していたので,やってみたところ,楠木正成という対して面白くない結果に終わってしまいました。

 我が家は,基本的に,赤松家の末裔なのですが。

09/07/2009

気まぐれシェフ

 広告に関する不思議の一つとしては、少なくないレストラン等において、自店の料理人が気まぐれであることをなぜ敢えて公示するのかということがあります。もちろん、形式的には、そのような情報は顧客の誘因に役立つからという回答になるのだと思うのですが、では、その料理店の料理人が一般に又は特定の品目に関して気まぐれであるという情報を得て、そこに何を期待して、その店舗を、またはその品目を選択するのかということが問題となります。

 料理人において「気まぐれ」であるということがプラスの要素であるとした場合に、「気まぐれシェフ」と宣伝されている料理長が実は「気まぐれ」でもなんでもなかったときには虚偽広告たり得るのかという問題も生じてきそうです。

 でも、「法・情報・社会」の試験問題はもう事務局に送ってしまったので、今年はこの点を聞くことはないですが。

NHKオンデマンド苦戦

 NHKオンデマンドは苦戦しているようです。

 NODは昨年12月のスタート当初、番組購入者を「今年3月に月間8万1000人」と予想(パソコンとテレビの合計)。ところが実際は、3月、4月とも各1万4000人にとどまっている。パソコンでNODを利用するには、無料の会員登録をし、見たい番組を1本105〜315円で選んで購入する(まとめ売りもある)のだが、「会員登録はしても、意外に番組購入のボタンを押してもらえない」(NHKオンデマンド室)という。

とのことです。ただ,動作環境として,OSがWindows XP かVistaのみ,ブラウザがIE6.0以上,8.0未満のみという時点で,失敗が約束されていたようなものです。これって,アーリーアダプターを端から切り捨てているということですから。この種のサービスって,新しもの好きに飛びつかせて,彼らに布教させるのでないと,だいたいうまくいかないのであって,そう考えると,Win版及びOSX版のFireFoxに対応させるのって,必須だったと思うのです。なんで,GyaOと同じ失敗を繰り返すかなあ。まあ,複数のブラウザに対応させるのって,SEはめんどくさがるので,そこを押し切る人がいなかったのかもしれませんが。

 あと,1本105〜315円というのはストリーム配信の値段ではないですね。1時間のコンテンツにこの金額を支払える人は基本忙しいのですから,移動時間や隙間時間に視聴できるように,期間制限があってもいいけれども,可搬型メディアに収蔵できるようにしておくことが必要です。まあ,決定権限のある人の中に,電車通勤している人がいないとわかりにくい発想かもしれませんが。

08/07/2009

属性により提供の可否が決定されるサービス

 現実空間でのサービスにおいても、顧客の属性にかかわらずそのサービスが提供されるものと、顧客のある種の属性次第でそのサービスが提供されたりされなかったりするものがあります。後者の場合、顧客がその属性を有しているかを何らかの形で確認した上で事業者はその顧客にそのサービスを提供してよいかを判断しているわけですが、各事業者が0からその確認作業を行うケースはそれほど多くはなく、多くの場合、公的機関ないししかるべき規模の民間機関による認証を利用して、その確認作業を行うことになります。例えば、最近はゼミコンパ等をやる際に居酒屋に入ろうとすると、居酒屋側は、学生証の提示によりそのメンバーに未成年者が含まれないことの確認を行うわけですが、これは大学による生年月日の認証を利用して、その顧客が「成年」という属性を有していることの確認をしているわけです。

 現実空間で行われているサービスの代替となるサービスが次々とWeb上で提供されるようになれば、その中には、顧客の属性次第で提供したりしなかったりが決定するサービスが含まれていくことは必然的な流れだと思います。しかし、個々のサービス提供者が0からその確認作業を行うのは非効率的です。

 そうであるならば、公的機関ないししかるべき規模の民間機関がある種の属性に関して認証を行い、それをWeb上でのサービスの提供者が利用できるようにするということは、0ベースで顧客の属性確認が行える事業者以外にも、その提供の可否が顧客の属性により決定されるサービスの提供を行えるようになるという意味で、Web資本主義の促進にも繋がるのです。

 「個人情報を一元管理するサービス」というエントリーについて、「ncc1701」というIDを用いてはてブコメントで恐ろしいことをさらっと言う。目的はともかく、北朝鮮あたりではもう実現してるのでは? と仰る方もおられるのですが、Web資本主義が発達していない北朝鮮ではむしろまだ必要とされていない仕組みだというべきでしょう(政府批判発言を弾圧したいというだけであれば、情報発信者ないし受信者がどこの誰であるかが分かればいいのであって、性別や生年月日などの属性情報は不要だと思いますし。)。

 もちろん、Web上ではサービス提供者の属性によりその提供の可否が決定されるサービスなど提供すべきではないというのも一つの考え方だとは思いますが、そうすると、「出会い系」のように、ある一定の年齢以下の顧客に提供することについて社会的な同意が得られていないサービスはWeb上では提供すべきではないという結論へと流れていってしまいます(Web空間での出会い系は、小学生を対象にしたって良いではないかとまでアナーキーな結論って、一部のWeb空間でしか支持されなそうな気がしますし。)。

07/07/2009

松川事件の時と何が変わったのか

 「警察・検察は冤罪をでっち上げないのか」というエントリーについて、

koumet 松川事件・・・昭和24年の事件ですかあ。で、こんな酷い事例に対して警察・検察は未だに何の対策も施してないなんてヒドイ!・・・なわけないでしょうが。

とのはてブコメントがありました。

 ただ、基本的には、何の対策も施されていません。米国等とは異なり、わが国では、検察側が手持ち証拠の全てを弁護人に開示していないことが判明しても、被告人は無罪とはなりません。それどころか、弁護側が具体的に検察側手持ち証拠の証拠開示命令の申立てを行っても、裁判所によって却下されることがしばしばです。

 また、凶器等の客観証拠のねつ造問題にしても、その証拠物がいつ、どこで発見されたものであるかについては、捜査担当者の報告書に専ら頼っており、嘘をつく気になればいつでも付ける体制になっています。

 変わったのは、当時の警察・検察が共産党を敵視したのと同じ程度に現在の警察・検察が敵視している団体等が存在していないという点であって、「冤罪を生み出す余地」については、これといった手は付けられていないというのが実情でしょう。

個人情報を一元管理するサービス

 小寺信良さんが「暴走するネット規制 、あるいは「ネットで婚活」終了のお知らせ 」というエントリーを書いています。

 ただ、この種の問題の根幹は、信頼の置ける個人情報証明方法がわが国のネット環境において存在していないが故に、きちんとゾーニングすれば問題の少ないサービスをオンラインで提供することの可否が問題となるときに、その提供を諦めるか、その提供による弊害に目を瞑るかの二者択一を求められることになってしまうという点にあります。

 そういう意味では、インターネット利用者の個人情報を一元管理しつつ、必要に応じて必要な個人情報を提供・認証するサービスを作り上げることが、インターネット上で提供しうるサービスを多様化するという意味においても必要となるのではないかと思います。年齢・性別等の個人情報について、個々のサービス提供者が、利用希望者の申出の信憑性を検証するなど、所詮困難なのですから。

弁護士どもと異なり警察・検察は被疑者の秘密を勝手にばらさないと信じている人々へ

 読売新聞が、足利事件の初期報道について、検証記事を公表しています。そこには次のように記載されています。

 逮捕を伝える2日朝刊社会面では、「ロリコン趣味の45歳」の見出しで、菅家さんが週末を過ごしていた借家について「少女を扱ったアダルトビデオやポルノ雑誌があるといい、少女趣味を満たすアジトになったらしい」との記事を掲載した。

 記事は、県警担当の記者が菅家さん逮捕の約1週間前、県警幹部から取材をした情報がもとになっていた。別の複数の捜査幹部からも「逮捕できるだけの直接証拠ではないが、状況証拠の一つだ」との感触を得ていたことから、菅家さんの逮捕直後に記事にした。

 しかし、県警の捜索で少女を扱ったアダルトビデオなどは発見されなかった。このため、翌3日の朝刊社会面の記事で「ロリコン趣味を思わせる内容のものはなかった」と修正したが、菅家さんについての予断や偏見を読者に与えた可能性はある。


 このことから分かるのは、当時警察は、世論操作のために、被疑事実とは直接関係のないプライバシー情報に関して、不確かな(という言い方が穏やかすぎるのであれば虚偽の)情報を新聞記者にリークしていたということ、及び、それは現場の一警察官の独断で行われたことではなく、複数の捜査幹部が口裏を合わせていたということです(もちろん、読売の検証記事が真実であれば、という前提でお話しをしています。)。

 捜査機関から開示を受けた情報の使用方法について過度の規制がなされる場合、捜査段階でリークされた虚偽情報により被疑者・被告人が毀損された名誉や信用の回復を行うことが難しくなってしまいます。

警察・検察は冤罪をでっち上げないのか

 警察や検察がどのようにして意図的に冤罪を作り上げるかを知るには,松川事件についての各種ルポを読むと良いでしょう。この事件では,客観証拠(犯行に用いられたとされる器具)自体を警察が作り上げ,また被疑者のアリバイを立証する第三者のメモを検察が長らく隠匿していたわけです。結局,このアリバイメモは,最高裁判決が下される直前に,マスメディアのスクープ報道により隠匿しきれなくなったのですが,そういうことがなければ,検察は被告人らが無実であることを知りながら,彼らを真犯人に仕立てる証拠を作り上げ,また彼らの無実を強く推認させる証拠を隠匿することにより,自分たちと政治的に相容れない被告人を死刑にしてしまうつもりだったわけです。

 もちろん,松川事件自体は古い事件ですが,警察・検察が有実を推認させる証拠を捏造しまたは無実を推認させる証拠を隠匿するということは今でも行われています。志布志事件はまだ記憶に新しいところですし,高知白バイ事件等もそのようなものとして広く認識されています。また,警察官三人が飲酒運転のアルコール検知濃度を上げるため口臭防止スプレーを使って検知管を証拠変造・行使したことが発覚したのは2000年の話です。また,たまたま逮捕される前に真犯人が自供したため事なきを得ましたが,警察が無実の市民を犯罪者に仕立て上げようとした事件として,大阪主婦猫ばば捏造事件などもあります。これなどは,身内たる真犯人をかばうために,善意の市民を犯人に仕立て上げようとしたわけですが。

【追記】

thermalpaperという方から、 「木を見て森を無視」とのタグと共に、

個別の「捏造があった」という事例は防止策の必要性の根拠にはなるが、「全てが捏造である」根拠にはならない。では弁護士は須く清廉潔白で正義の存在か?

とのはてブコメントを頂いたようです。thermalpaperという方の読解力のもとでは、警察による捜査は「全てが捏造である」と私が主張していたかのように読めたと言うことでしょうか。世の中にはいろいろな方がおられるものです。

06/07/2009

事務所旅行at洞爺

 昨日は,事務所旅行ということで,ザ・ウィンザーホテル洞爺に行きました。

 さすがに,ミシェル・ブラスの料理は,前評判通り,とてもおいしかったし,それでいて健康的でした。一品ごとの分量は食の細い日本人に合わせつつも,最後,これでもかこれでもかとデザートが出てくるあたり,非常にフランス的だとは思いました。朝食のビュッフェも,フランスを意識しつつ,北海道の素材をきちんと生かしているあたり好感が持てます。まあ,ここはパンがおいしいので,西洋料理系は何をやっても様になります。

 ホテル内部は,洞爺湖サミットのメイン会場になったということもあって,各国首脳のメッセージを展示するなど相当サミットを意識しているようです。

 さすがに,このホテルに2泊するのは大変なので,長万部経由で小樽に向い,お寿司を食べたり,Liveを見に行ったりした後,札幌にたどり着いたところです。(私の事務所の事務所旅行って,完全現地集合,現地解散で,実際まとまって東京からやってきたり,まとまって東京に帰ったりとすることはしないのです。)。

04/07/2009

「疑わしきは罰せず」ということ

 矢部善朗創価大学法科大学院教授は次のように述べています。

小倉弁護士は、取調べに対する弁護人の立会権の制度化を支持しています。

立会権を採用した場合には、以下のような因果関係を想定することができます。



立会権の制度化

     ↓

弁護士が、真犯人に黙秘させたり調書への署名を拒否させる。

     ↓

真犯人が処罰を免れる。



という因果関係が想定可能であり、これを短絡的にまとめると



 立会権の制度化

     ↓

 真犯人が処罰を免れる。



ということになります(あくまでも小倉論法に従えばですよ)。

 もちろん,立会権が制度化され,被疑者が捜査機関から暴行脅迫偽計等を受けたことにより自白を余儀なくされることがなくなった場合,自白調書以外の証拠のみからではその被疑者が真犯人である高度の蓋然性があるとまでは言えないときにはその被疑者は処罰を免れることになるでしょう。そのようにして自白を強要されなかったがために処罰を免れた被疑者の中には,真犯人が含まれる可能性があり,その場合においては,立会権の制度化により(そのような制度がなく,捜査機関が思い通りに被疑者を「自白」させることが許されていたとしたら処罰されていたであろう)被疑者が処罰を免れることが生ずることがあり得るとはいいうるでしょう。私は,そのこと自体否定していません(捜査機関の勘が当たっている場合には,「盟神探湯」の結果のみで被疑者を処罰するという仕組みを採用していれば処罰できていた真犯人が,そのような仕組みを採用していないが故に処罰を免れるということだっていえるのです。)

 他方,自白調書以外の証拠のみからでは真犯人である高度の蓋然性があるとまでは言えない被疑者が,弁護人の立会いがないが故に捜査機関から暴行脅迫偽計等に屈して捜査機関がその見込みを一人称化して作成した自白調書に署名・捺印してしまい,真犯人として処罰されてしまった場合,通常その被疑者を起訴した段階でその事件についての捜査は終了し,他の者が真犯人ではないか更に捜査を継続することはないので,真犯人が処罰を免れることになります。すなわち,その被疑者が真犯人であるか否かにかかわらず自白調書に署名・捺印してしまう環境をそのまま維持することは,それはそれで真犯人が処罰を免れる余地を生み出すことになります。足利事件は,まさにそうだったわけです。

 自白調書以外の証拠のみからではその被疑者が真犯人である高度の蓋然性があるとまでは言えない場合であっても,捜査機関がその被疑者を真犯人であると見込んだのであるからその被疑者はまず真犯人なのだと考えるならば,その被疑者が真犯人であるか否かにかかわらず自白調書に署名・捺印してしまう環境を取り除くことは怪しからんという話になるのでしょうし,そういう場合には真犯人でない蓋然性が低くはないと考える場合は,その被疑者が真犯人であるか否かにかかわらず自白調書に署名・捺印してしまう環境は一日も早く是正すべきだと考えることになるのが普通ですが,その場合でも一般予防を重視して,無実の被疑者に刑に服してもらおうと考える人もいることでしょう。)。

 もっとも,前者の考え方を是認するのであれば,むしろ,捜査機関が有罪と見込んだ以上,客観証拠が十分になくとも自白調書抜きで被疑者を処罰することができるとした方が合理的なのではないかと思います。客観証拠が不十分な場合に自白調書がなければ被疑者を処罰できないという制度は,真犯人である被疑者が捜査機関からの暴行脅迫偽計等に耐えてついに自白しなかった場合には,真犯人が処罰を免れる仕組みということになるからです。考えてみれば,捜査機関からの暴行脅迫偽計等に耐えた者のみが処罰を免れ,耐えきれなかった者は処罰されるというのは,およそ合理性を欠く話ですし,むしろ,捜査機関による暴行脅迫偽計等の人権侵害を招来しているという意味で,客観証拠が十分でなくとも捜査機関により真犯人であると見込まれた場合には処罰されるという仕組みの方がまだましだということが言えそうです。

 なお,自白調書に署名・押印をしないことにより処罰を免れることができるのは,客観証拠のみではその被疑者が真犯人であるとの高度の蓋然性があるとまではいえない場合だけであり,それはその被疑者が真犯人である場合にはそれほど発生頻度の高いものではないのに対し,その被疑者を真犯人だとする確実な客観証拠がなくとも,その被疑者が真犯人であるか否かにかかわらず自白調書に署名・捺印してしまう環境を維持することにより被疑者を自白に追い込み刑事罰を課すことができる制度の下では,かなり広範な場合について冤罪を生み出すことができます。そのあたりの差異を捨象してしまうあたりが,何とも言えません。

02/07/2009

みんなで集まって人格攻撃と陰謀論に明け暮れて具体的な議論を回避する人々

 やはり、自分の見解を具体的に明示してしまうと批判されやすいのが分かっているからこそ、質問者を人格攻撃することで誤魔化そうとしていたのだなあと思う今日この頃です。

 自分に品位を欠く取り巻き(知財・IT畑の弁護士に対してウィグモアの「証拠法」を読まないことをなじってみせる人たちは、ウィグモアの「証拠法」を読んでいない刑事法担当の大学教授をどう見ているのか、分からないのですが。)が複数いて、相手に品位を欠くアンチが複数いるときに可能な手法ですが、そういう手法をとることで具体的な議論から逃げているようでは、どこまでも堕落していくのではないかという気がしてなりません。

取調べ状況の録音・録画物についての管理方法

 野党共同提案にかかる刑事訴訟法改正案につき,取調べ状況の録音・録画物についての管理方法に問題がある云々としてこれを批判する人もいるようです。

 ただ,弁護人としては,その事件に関する他の記録とともに事務所内のロッカーまたは貸倉庫に収蔵するか,刑事事件を多く受任する弁護士の場合別途DVD保管用のケースを用意してそこに保管するかしかないわけで,逆に言うと,それ以上何を望むのだという気がします。

 その利用方法にしても,情報主体たる被疑者・被告人の意に反してこれを漏洩させなければ本来とやかく言われる必要がないはずであって,事務員等に命じてその内容を閲覧させて問題となりそうな点をピックアップさせたり,反訳業者に委託してそこで語られたことを正確かつ網羅的にテキスト化したり,心理学者等に委託して取調べ時の被疑者の精神の抑圧状態について鑑定してもらったりすることが禁止されるいわれはないように思います。そういう意味で,弁護活動に必要な範囲内での取調べ録音物の第三者への交付を容認する上記刑事訴訟法改正案は現実的だということができます。

 そのような利用のされ方をするのはけしからんとお考えの方は,具体的に,このような利用方法は禁止する,あるいはこのような利用方法(例えば,弁護人のみが,逐一裁判所等の施設に赴いて,その取調べ状況を撮影したDVDの全てを,等速で再生して閲覧する等)しか認めないということを,修正案として提示したらよい話だと思ったりします。具体案が提示されれば,そこまで規制する必要があるのか,そこまで規制すると,せっかくの録音録画物が,不正な方法で自白調書を作成された被告人を救出するために活用できなくなるのではないかとか,そういう議論がそこからできることになります。

 もっとも,この辺の話も,結局反対しにくい総論を潰すための各論潰しである可能性が高いので,そういう実のある議論というのはなされないのだろうなあという感じはします。何たって,捜査機関側にとっては,取調室で何を言おうと何をやろうと,公判廷で知らぬ存ぜぬを決め込んでしまえば無問題という現状が永続してくれればよいのですから。

01/07/2009

具体論を述べると玉虫色ではいられなくなりやすい

 mohnoさんが、はてブコメントとして、本質的じゃないんだから、取調べの話に戻りませんかね。述べています

 でも、矢部教授にそれを求めるのって難しいのではないかという気がします。制度論って、話を具体化させればさせるほど、旗幟を鮮明にすることが求められていくからです。そして、冤罪を生み出す余地をどこまで残したいと思っているのかが明らかになってしまうからです。

 例えば、取調べの最中に録音録画が中断された場合には、その間に暴行・脅迫・偽計等がなされたことにより虚偽自白を余儀なくされたとしても後にその点を争うことが事実上困難となる(被告人と捜査機関側とで水掛け論になれば職業裁判官は捜査機関側の意見を信頼して自白の任意性を肯定する蓋然性が高い。)という現実を前提にして、そのようなリスクを冒してでも、自分が選任した弁護人に気兼ねなく、捜査機関側の人間と雑談を楽しみたいという被疑者が存在する以上、その希望は叶えられるべきだという議論はありうると思います。ただ、それを、取り調べの全面録画義務化の例外として刑事訴訟法改正案に組み入れるか否かを検討するにあたっては、無実の罪で刑罰を課されるリスクを高めてでも弁護人の目を気にすることなく捜査機関側の人間と雑談を楽しみたい被疑者がどの程度いるのか、そして、そのような雑談好きの被疑者の希望は、捜査機関側が偽計等を用いてまず録画の停止を被疑者に承諾させた上で、録画の停止後、暴行・脅迫・偽計等の方法により虚偽自白を強要するという活路を冤罪好きの捜査官らに与えてまで叶えてあげるべきものなのか等を検討する必要があろうかと思いますし、実装段階では、どのような要件の下で、どのような手続がとられた場合には、その被疑者は、虚偽自白を強要されるリスクを負ってでも捜査機関側の人間との雑談を楽しみたいと真に願っていると考えられ、かつ、その結果まんまと虚偽自白を強要され無実の罪で刑に処せられたとしても自己責任として切って捨てることが是認されるのかを論じていくことが必要となろうかと思います。

 でも、矢部教授は、捜査機関側の常連コメンテーターを切り捨てることも出来ない一方、冤罪好きの汚名を着る度量もないから、では具体的にどうするのかという点は、なかなかお答えにならないのではないかという気がします。


【追記】

「 thermalpaper 」という方が、ブクマコメンとで

経験に基づかない独自の妄想は見苦しいので、弁護士なら根拠を示しながら話しましょうね。↑意味不明です。「弁護人に知られたくない話を取調官にする被疑者」は存在しますがね。そのための開示拒否権の主張です。

と述べています。ただ、上記エントリーは、そういう人も中にはいたとしても通用する話なので、これに対する批判としては的が外れています。その希望は、捜査機関により悪用される危険をおしてまで認めてあげるべき話なのかを論じた上で、捜査機関による悪用をなるべく防ぐためにはどのような要件、どのような手続が必要なのかを具体的に提示する必要があるのです(「取調べの最中に、「取調べ状況を録画したDVDの開示を弁護士に少しでも見せたら、お前の家族がどうなっても知らないぞ」と捜査官が脅して一切を見せない運用をすることだって十分あり得るのですから。)。

労働者全体が受け取る賃金総額は変わらない?

 城繁幸氏が,そのブログのコメント欄で,

そもそも、規制で人件費の総額が上下するなんてことはありえないわけで、現状のままだろうが、完全流動化しようが、労働者全体が受け取る賃金総額は変わらない。要するに、非正規とか新卒者だけに偏っている負担を満遍なく散らせと言っているのであって、貧乏人続出なんてことにはならない。滑り落ちる人間もいれば、上がる人間もいるわけで。

と言っていますが,その根拠がわかりません。

 労働者保護法制が撤廃されて,全ての従業員が絶えず失業者と賃金の価格競争を行うことを余儀なくされた場合に,従前正規労働者として年功賃金を受け取っていた層の賃金水準が下がることは予想されるにしても,従前非正規労働者として安い賃金しかもらっていなかった層の賃金水準が上昇する理由がないからです。普通に考えれば,解雇規制の撤廃により従前正規労働者に支払ってきた賃金が浮いた分は,非正規労働者に回るのではなく,株主と経営者とで山分けされると予想するのが普通ではないかという気がします。なにせ,その非正規労働者は従前の賃金水準でも働いてくれる人たちなのですから。

 もちろん,それでは,正規労働者と非正規労働者との対立構造,ひいては世代間の対立構造を煽ってきた城さんはその存立基盤を崩されてしまうということになるので,城さんとしては認めにくいとは思うのですが。

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