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01/07/2009

労働者全体が受け取る賃金総額は変わらない?

 城繁幸氏が,そのブログのコメント欄で,

そもそも、規制で人件費の総額が上下するなんてことはありえないわけで、現状のままだろうが、完全流動化しようが、労働者全体が受け取る賃金総額は変わらない。要するに、非正規とか新卒者だけに偏っている負担を満遍なく散らせと言っているのであって、貧乏人続出なんてことにはならない。滑り落ちる人間もいれば、上がる人間もいるわけで。

と言っていますが,その根拠がわかりません。

 労働者保護法制が撤廃されて,全ての従業員が絶えず失業者と賃金の価格競争を行うことを余儀なくされた場合に,従前正規労働者として年功賃金を受け取っていた層の賃金水準が下がることは予想されるにしても,従前非正規労働者として安い賃金しかもらっていなかった層の賃金水準が上昇する理由がないからです。普通に考えれば,解雇規制の撤廃により従前正規労働者に支払ってきた賃金が浮いた分は,非正規労働者に回るのではなく,株主と経営者とで山分けされると予想するのが普通ではないかという気がします。なにせ,その非正規労働者は従前の賃金水準でも働いてくれる人たちなのですから。

 もちろん,それでは,正規労働者と非正規労働者との対立構造,ひいては世代間の対立構造を煽ってきた城さんはその存立基盤を崩されてしまうということになるので,城さんとしては認めにくいとは思うのですが。

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Commentaires

うまく説明するためには、そこそこ長くなるように思っているので、説明不足のまますっ飛ばしますが、新自由主義の主張と対立する主張の論点がかみ合わない理由は、時点のとらえ方にあると思うようになってきています。

資本・生産・消費・投資といった一連の経済サイクルを見るときに、足の速いのはお金(資本金)です。

しかし、資本というか投資資金は設備に変わると、有効になるまでには例えば工場の建設とか、公共施設ではダムや道路など、どっちにしても非常に時間を掛けて実現するものです。

同様に、人が形作っているノウハウとか技能伝承といったことも、ものすごく時間が掛かります。

この、時間が掛かるものを「お金で買う」ことは出来るわけで、工場などは既存の工場を買収してしまえば良いし、公共工事などでは「緊急だから」と資金を突っ込めばだいぶ促進できることは明らかです。

同様に、人に属する技能などをお金で買うのが、ヘッドハンティングとか派遣労働とかでしょう。

問題は、この「お金で買う」とやると、緊急時に有効ですが、それを形作ってた背景は置いてきてしまうわけです。


原理的には、同じ品質を要求した場合に、ストックが減ると単価は向上するはずで、例えば派遣労働者のストックが減ると、単価が向上するのか?というと、実際には品質(労働者の能力)を下げても、単価を下げる、そうするとストックが増えるということもあります。

さらにこちらがよほど問題なのですが、そもそも(派遣労働者の)ストックは誰が作ったのか?

これは、疑いもなく既存の企業が社内訓練したから労働者として使える人たちのストックがあるのです。

「学校で訓練すればよい」などと言うのは、日本の現状ではあり得ないし、そういう文化できているのだから、明日から方向転換もあり得ない。

そうなる、派遣労働者を使い捨てるとは、ストックをどんどん減らしているわけで、それが実害となって出てこないのは、将来派遣労働者の技能レベルが使い物にならない、という現実に直面していないからでしょう。

つまりは、派遣労働の大々的な利用は、技能者の食いつぶしのようなところがあると考えています。

にもかかわらず「人件費の総額が上下するなんてことはありえない」なんて話が堂々と出てくるのなぜか?と考えると、これは「時間の流れ」「スタートから完成までの時間が、人やモノでそれぞれ異なる」ことを無視した「現時点の静止的な、あるいはお金の移動だけだから、必要な時間が0(ゼロ)である」という考え方なのではないか?
と思っています。

振り返ってみると、小泉改革などでも「○○するから、××はできます」のような説明ばかりであったけど、その時の変化の説明については「細かいことは無視しても自由にやればうまくいく」で済ませていました。

その結果は「短時間で成果をあげること」が目標になってしまい、教育のような時間の掛かる投資をどんどん後回しにした。
当然「お金がお金を生み出すのが良い」となって、バブル崩壊ですよ。

社会は、お金だけで出来ているわけではない、お金以外のところは時間が掛かる。
という当たり前の話を置いたままで「とりあえず今だけ」とやっているのが、現在の政財界です。

これで将来の・・・・などと考えることが出来るわけがない。

時間もまた、お金に換算するのであれば、派遣労働者の最低賃金を10倍20倍にすることは至って当然ことになるはずなのですが、そういう話はほとんど出てこない。

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