サービス産業における競争原理の厳しさと労働生産性の関係
サービス産業において参入規制が厳しく競争原理が十分に働かない場合、事業者は価格競争を行わなくとも済むので、人件費や利益相当分を十分上乗せした価格設定を行うことができます。これに対し、サービス産業において参入規制が緩く競争原理が強烈に働かいている場合、事業者は厳しい価格競争を強いられるので、人件費や利益相当分を十分に上乗せした価格設定を行うことができなくなります。
また、サービス産業において参入規制が緩やかとなり、多くの事業者が実際に参入するようになれば、顧客が分散されるため、労働生産性は低くなります。
製造業の場合、技術革新によって、従業員1人の単位時間あたりの商品生産量を増やすことによって、商品1個あたりの単価を引き下げつつ労働生産性を上昇させることが可能となりますが、サービス業においては、技術革新を行っても、従業員1人の単位時間あたりのサービス提供量を上昇させることが困難である場合が少なくありません。また、従業員1人の単位時間あたりのサービス提供量を上昇させることができたとしても、それに応じた料金の引き下げを求められる結果、労働生産性の上昇に繋がらない場合も十分にあり得ます(例えば、クイックマッサージ業界では、30分の施術で従前の60分の施術と同等の凝りのほぐしを可能とする技術革新が行われたとしても、30分の施術に対して6000円の価格設定は行い得ないでしょう。)。
従って、サービス産業においては、参入規制が厳しく競争原理が十分に働かない方が、労働生産性が高くなります。ですから、日本においてサービス産業の労働生産性が顕著に低いとすれば、それは、競争が甘いからではなく、むしろ、競争が厳しすぎるから、である可能性が十分にありうると言えます。
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