« août 2009 | Accueil | octobre 2009 »

septembre 2009

30/09/2009

異論と併存する度量

 学者,研究者というのは,異論を述べるのがお仕事です。従って,一つの論点について,自分とは異なる見解を述べる学者,研究者がいるのが正常な姿であるし,自分の見解について否定的な意見を述べる学者,研究者がいるのが正常な姿です。

 ですから,真っ当な学者,研究者は,自分の見解について否定的な意見を述べる学者,研究者等に対し礼を失することなく向き合える程度の度量を有しているのが通常です。自分の見解について否定的な意見を述べる学者,研究者等をその人格面に至るまで一々否定していたら,シンポジウム一つまともに運営できません。逆に言うと,そういう度量を持ち得ない人は,学者,研究者には向いていないということができそうです。まして,自分の見解と相容れない見解を有している人をちゃんとした名前で呼ぶことができないという幼児性の強い人物は,異論が飛び交い併存することが予定されている「研究セクション」にいるべきではないといえるでしょう。

28/09/2009

「一段階論理の不正義」は結局正義にはならない

 最低賃金を引き上げることは中小企業の倒産に繋がるから許せないが、中小企業元本返済猶予法を制定して中小企業の倒産を防止することは許せないという「経済学者」がおられるようです。

 この種の「経済学者」にとって、中小企業を倒産させないという政策目標は、労働者がその賃金のみによって健康的で文化的な生活を行えるようにするという政策目標よりは優先されるけれども、空前の不況期においても銀行は中小企業から優先的に元金の返済を受けられるようにするという政策目標よりは劣後されるべきものだということなのでしょう。まさに、金貸しの都合が最優先で、労働者の幸せなど眼中にない、新自由主義者の「一段階論理の不正義」そのものです。

 「一段階論理の不正義」とはいいましたが、では、その種の論理は二段階以降は正義に転ずるのかというと、通常、そんなことはありません。中小企業元本猶予法など制定せず、空前の不況期においても銀行は中小企業から優先的に元金の返済を受けることができるということにしてみたところで、資金にゆとりのない中小企業は元金を支払うことができませんから、現実には銀行は中小企業からの元金返済を受けられないことになります。すると、銀行としては、元金返済を猶予するか、その中小企業を倒産に追い込むしかなくなってしまいます。もちろん、利息制限法や出資法を撤廃すれば中小企業は高利貸しから資金を借りて銀行への元金返済に充てられるはずだという考え方もあるかもしれませんが、銀行への弁済資金を高利貸しから借りるようになったら、結局その企業は早晩倒産です。

 そして、不況期に融資先の倒産件数を増やすことは銀行にとって別に得策ではありません。利益が少ない時に貸倒れをがんがん計上しても仕方がありませんし、不況期に担保不動産を競売に掛けてもその評価が下がっているので面白くも何ともありません。また、再び好況が訪れても、不況期につぶしてしまった会社からは元金の弁済等受けることはできません。そういう意味では、むしろ、元金の支払いを猶予する代わりに一定の「アメ」が与えられるのであれば、大不況期の暫定措置として、一定の要件を満たす中小企業の元本支払いの猶予を義務づけられることは、金融機関としては「渡りに舟」的な要素があるとすら言えます。

27/09/2009

検索オプションで指定?

 池田信夫さんがそのブログのコメント欄で次のように述べています。

当ブログには毎日、膨大なコメントがつくけど、匿名のイナゴと実名のストーカーは(検索オプションで"-la_causette -hamachan"などと指定して)無視しているので、実名の批判らしきものは月に1回ぐらいしかない。それもこういうトホホな代物です。

 池田さんは,匿名であっても,自分と一緒に特定の第三者を批判するコメントはしっかり載せる一方,自分に批判的な見解はトラックバックすら許さない傾向が強いので,批判コメントを投稿しても無駄だと思われているだけだと思うのです。といいますか,「検索オプションで"-la_causette -hamachan"などと指定」することに何の意味があるのか不可解です(コメント投稿の際にハンドルの全部又は一部に「la_causette」という文字列を用いている実名ブロガーっていないと思いますが。)。まあ,「など」という言葉が用いられているので,「自分に迎合的ではない,実名ブロガーの氏名ハンドル名等を全てコメント投稿禁止キーワードにしている」ということが言いたかったのかもしれませんが。

24/09/2009

確かに道義的に言えば「詐欺」っぽいかも

 法曹養成制度改革が失敗に終わったことは一般メディアでも広く報じられるところとなりました。まあ,単年度合格率が2〜3割程度に収斂していくこと,及び,その結果として必然的に相当数生ずることとなる受験資格喪失者の社会的な受け皿がないこと,需要を無視して水増しされた新規法曹資格取得者の相当数の社会的受け皿もないこと等は,最初からわかっていたことです。なのにどうしてこういう稚拙な制度改革が行われたのか,その過程で不当に利益を貪った者はいないか,民主党政権は十分に検証していただきたいところです。

 なお,極端に司法試験合格率の低い法科大学院というのは,「従来の法曹養成制度の下においては前期修習終了時に身につけるべき法的な素養を身につけている」かを検証する新司法試験に合格するレベルに到底達していない学生を大量に卒業させているのであり,法科大学院に課せられた責務を十全に果たしていないということがいえます(今年に関して言えば,法務省は目標数値を大幅に下回る合格者しか出せなかったわけで,「定員が予め定められているために,「従来の法曹養成制度の下においては前期修習終了時に身につけるべき法的な素養を身につけている」ことが確かめられた受験者の一部を不合格とせざるを得なかったわけではないことがはっきりしています。)。

 当初入学者の7割程度を新司法試験に合格させられないのは法科大学院の教育能力の欠如の現れと言えますが,卒業生の7割程度を新司法試験に合格させられないのは法科大学院の学位授与過程における怠慢を示すものということができます(青山学院大法科大学院の宮沢節生教授は「定員削減はまだ不十分。現状を放置すれば法曹志望者は今後も減り、特に未修者が遠ざかって、多様な法曹を養成できなくなってしまう」と指摘しているとのことですが,新司法試験合格率9%の青山学院大学法科大学院は,「従来の法曹養成制度の下においては前期修習終了時に身につけるべき法的な素養」を身につけていない学生に学位を授与しすぎでしょう。)。

 もっとも,ごく一部の秀才のみが「学部4年+前期修習4カ月」で習得できるレベルを,より「幅広い人材」に「法科大学院3年」で習得させる教育手法などないことを知りながら,法科大学院3年で「従来の法曹養成制度の下においては前期修習終了時に身につけるべき法的な素養」を身につけさせることを前提とする法曹養成制度を推進した人々がいるとすれば,より積極的に,それは倫理的・政治的な意味において「詐欺」だということができるでしょう。未習者の司法試験合格率が低いことを問題視するのであれば,まず,未習者コースを用意している法科大学院は,如何にすれば,ごく一部の秀才のみが「学部4年+前期修習4カ月」で習得できるレベルを,より「幅広い人材」に「法科大学院3年」で習得させることができると考えていたのか,そこには教育学的な検討がなされていたのかをまず検証すべきでしょう。

22/09/2009

消費者信用団体生命保険の悪用を防止することも,経済学者に言わせれば,「一段階論理の正義」として糾弾されてしまうのか

 池田信夫さんが次のようにつぶやいています

消費者信用団体生命保険を廃止して、連帯保証人の自殺が増えた。http://j.mp/1xOJvk RT @mikeexpo: 貸金業者が債務者に保険に入らせていた

11:26 AM Sep 21st Tweenで

 しかし,根拠は示されていません。金融庁が問題視したのは,

債務者が知らないうちに被保険者になっている、比較的少額で短期の貸付債権の回収のために保険が不当に利用されているといった指摘等がなされているところ

であり,これを受けて金融庁が取り組むことにしたのは,


  1. 「貸金業者が債務者等に対し保険金による債務の弁済を強要又は示唆するような言動を行うことは、「威迫」に該当することを明確化するため、事務ガイドラインを一部改正すること」

  2. 「保険会社等に対し、顧客が保険商品の内容を理解するために必要な「契約概要」と保険会社が顧客に対して注意喚起すべき「注意喚起情報」に整理のうえ、顧客に対しわかりやすく説明することを求めているところです。このような取組みを消費者信用団体生命保険を含む団体保険についても徹底するよう文書により各保険会社に要請」すること


の二つです。これに伴い,社団法人生命保険協会は,「消費者信用団体生命保険の実務運営に関するガイドライン」を定めたわけですが,そうしたら,ほとんどの消費者金融業者が消費者信用団体生命保険への加入手続きを中止することになりました。「消費者金融業者が借主に無断で借主を被保険者とする消費者信用団体生命保険に加入した上で,その借主が借金を返済できなくなった場合に,貸金業者が債務者等に対し保険金による債務の弁済を強要又は示唆するような言動を行うこと」が禁止されるのであれば,消費者信用団体生命保険に加入する理由はないということだったのかもしれませんし,そこのところはよくわかりません(住宅ローンや事業資金融資などでは,この種の信用団体生命保険はなおも生きているのですが。)。まあ,「消費者金融業者が借主に無断で借主を被保険者とする消費者信用団体生命保険に加入した上で,その借主が借金を返済できなくなった場合に,貸金業者が債務者等に対し保険金による債務の弁済を強要又は示唆するような言動を行うこと」を禁止するのは「一段階論理の正義」であって許されないという方も,経済学者の中にはいらっしゃるかもしれませんが,ごくごく一部の新自由主義者以外には受けが悪いのではないかと思います。

 さらにいうと,上記のような消費者信用団体生命保険の運用実態が問題視されたのはいわゆる消費者金融関係ですが,一般に消費者金融系は連帯保証人をとらない場合が多いです。連帯保証人を連れてこないと融資を受けられないということになると,敷居が高くなってしまいますから。連帯保証人をとるのは,商工ローン系や住宅ローン系など,「気軽」に受けるってわけではない融資に多いです。従って,「連帯保証人の自殺が増えた」ことを示す統計があるのか寡聞にして存じませんが,仮にあったとしても,それが,消費者金融において消費者信用団体生命保険が利用されなくなったこととどれほど因果関係があるのかというと,大いに疑問を禁じ得ないところです。

17/09/2009

千葉景子新法務大臣に望むこと

 弁護士出身の千葉景子参議院議員が法務大臣に選ばれました。

 千葉大臣がまず行うべきことは、取調べの全面可視化を中核とする刑事訴訟法の改正作業を行うことでしょう。幸い、冤罪を生む余地を残すことに積極的だった勢力と連立を組む必要がないので、司法取引と交換条件とする必要もなく、録音・録画物の複製物を弁護人に交付しない(見たければ弁護人が自分自身で全部見ろ)などというばかげた付加条件も付けずに済みます。

 次に行うべきことは、実務家の意見を聞くことなく推し進められている債権法の改正論議にブレーキを掛けることです。「こういう場合にどうなるのか」という想定問答の「問」の部分を研究者だけで作って研究者だけで「答」を作っても、だいたいうまくいきません。イレギュラーパターンの多くは判例になってませんから、研究者しかしていない人はイレギュラーパーターンの経験値が足りないのです。

 さらに、保証制度の改正(特に、金融機関等が、主債務者の親族や(主債務者が法人である場合の)役員又は従業員を(連帯)保証人として徴求することの禁止等)や、サービサー制度の改正(債権買取価格の債務者への開示義務の創設や、買取価格を大きく上回る履行請求の制限等)まで行えればなおよしといえます。頭の悪い新自由主義者ほど、ただただ規制を緩和すれば起業が盛んになると思いがちですが、チャレンジをして失敗をした時に陥る不幸を緩和しなければ、規制を緩和しただけでは、危なくて起業など行えません。極めて下位に位置づけられた比例単独候補が選挙公報に「破産手続中」と明記しなかっただけで詐欺だの業務妨害だのと無責任に糾弾される風土の中では難しいかも知れませんが、起業を盛んにするために再起を容易にする必要があるのです。

 次に行うべきことは、法曹養成制度の抜本的な改正です。端的に言えば、旧司法試験制度の復活です(頭が少々悪くても親がお金持ちなら法曹資格を取得できる法科大学院コースが併存されても構いませんが。)。貧しい家庭に生まれたら如何に優秀でも法曹になれない現行制度を改めることは、経済的弱者に優しい社会党マインドを引き継いでいる千葉大臣と親和性が高いはずです。

その決議を選ぶかなあ,普通。

 産経新聞は,日弁連について次のような解説をしています。

 弁護士は、法律で各弁護士会を通じて日弁連への加入が義務付けられている。日弁連は自衛隊のイラク派遣や海賊対策で自衛隊の随時派遣を可能にする海賊対処法に反対する会長声明を発表するなど、リベラル色の強い団体といわれている。

 日弁連は産経新聞社よりはリベラル色が強いことは認めざるを得ませんが(そうでない団体の方が珍しいので),そのことを示すのに,公正を重視した,古典的自由主義への修正というリベラリズムの特質とは直接的な関係のないそれらの決議を選ぶものかなあと思ったりします。

15/09/2009

司法研修所卒業見込みの人間を対象とする法務部門の人材募集をやっているか否かを明らかにしていない企業にまで司法修習生が数十人単位で応募してくるようになって当たり前?

 「法務人材などこれっぽっちも欲していないくせに」というエントリーに対し,「企業法務戦士の雑感」のブログ主さんから反論を頂きました。

 

だが、現在「採用された人数が絶対的に少ない」ということを、「『実務の側は法務人材を欲しているから司法試験合格者の大幅増員を求めていたのだ』ということが真っ赤な嘘である」という結論に結びつけるのは、あまりに短絡的に過ぎるのではないだろうか。
どんな会社でも、毎年新卒採用を行っているし、法務部門の中途採用の募集も定期・不定期に行っているが、新規に法曹資格を取得した人が数十人単位で応募してきたなんて話は、まず聞かない。

とのことです。しかし,司法研修所卒業見込みの人間を対象とする法務部門の人材募集をやっている企業がどれだけあるというのでしょう。「実務の側は法務人材を欲しているから司法試験合格者の大幅増員を求めていた」のだとすれば,司法研修所を通じて求人票を出すなり,法曹資格新規取得者を法務人材として採用しようとしている会社で集まって司法修習生向けに合同説明会を開いたりと,学部新卒を採用しようとする場合に通常行う活動くらいしそうなものです。しかし,実際には,自社のウェブサイトにおいて,司法研修所卒業見込みの人間を対象とする法務部門の人材募集をやっている企業すら稀です。司法研修所卒業見込みの人間を対象とする法務部門の人材募集をやっているか否かを明らかにしていない企業にまで司法修習生が数十人単位で応募してくるようになって当たり前だということなのかもしれませんが。

現在の制度に基づいて“生産”される大多数の新規法曹資格取得者の目が、“普通の法律事務所に勤務弁護士として雇ってもらうこと”に向いていること(それゆえ、綿密な企業研究や採用手続の確認よりも事務所訪問をまず優先する)や、“大きな会社になればなるほど、就職を希望する人がきちんとした採用ルートに乗っかってくれない限りその人を採用することはできない”という人事の現実を踏まえるならば*3、これもやむを得ないことなのだろうが(少なくともあと数年は)、だからといって「実務の側が法務人材を欲していない」なんてことは全くない

 ただでさえ,新司法試験組の修習カリキュラムは1年であり,うち8カ月が実務修習にあてられ,全国各地に飛ばされます。そして,「普通の法律事務所に勤務弁護士として雇ってもら」えるのは,新規資格取得者のうち半分程度になっていきます(つい最近まで2万人程度しか実働メンバーがおらず,その後一気に増やされた人材はしばらく雇う側には回らないので,年1000人採用するのだって大変です。)。このような状況下では,司法研修所卒業見込みの人間を対象とする法務部門の人材募集をやっているか否かを明らかにしていない企業についてまで綿密な企業研究を行い,採用手続の確認を行っている暇はとりあえずありません。本当に「実務の側が法務人材を欲して」いるのであれば,採用のサイクルを彼らに合わせることはできるはずです。他方,彼らには,学部の4年生が大学の授業を欠席するほど自由に修習カリキュラムを欠席して就職活動につぎ込む余裕はないのです。

 いずれにせよ,年間数千人単位で新規資格取得者が法務人材として企業に採用される気は全くしていないのですが。

そして、何よりも、“認識のズレ”が一番顕著に現れているのは次のくだりだ。
何であれ新司法試験に合格し、司法修習を経て、新規に法曹資格を実際に取得した新人弁護士すら欲してもいない「実務の側」が、新司法試験にすら合格できないような人間を「法務人材」として「喉から手が出るほど」欲しているわけないではないか、としか言いようがありません。(太字強調筆者)
弁護士の業界の中では、資格を持っているかどうか、ということが決定的な意味を持つのだろうが(そもそも資格がないと業界に参入できないのだから当たり前の話だ)、法務の実務の世界で、「弁護士資格を持っているかどうか」とか、「司法試験に受かったかどうか」ということが、会社の中で仕事をするうえで決定的な意味を持つとまではいえない。

 本気でそう思っているのであれば,是非とも三振してしまった法務博士を雇ってあげて下さい。法科大学院制度を始めるときは,法科大学院で一流の教授陣の元で高度の法学教育を受けた者は,たとえ司法試験に合格しなくとも,引く手あまただということになっていたはずなので,三振法務博士が路頭に迷うという事態が生じていること自体裏切られた思いで一杯です。

 なお,

これまで学部新卒として採用され、会社の中で実務者として鍛えられてきた上記のような層の学生が、法学部の定員削減や“真面目に法律を勉強した人はとりあえず法科大学院に行く”的現象によって大幅に減少し、採用エントリーの時点でほとんど拾い上げることができなくなってしまっている(あるいは内定を出しても進学を理由に辞退されてしまう)というのが現実なのだ。

との点ですが,学部の教員からみると,認識がずれているような気がします。もちろん,「東大卒にあらざれば人にあらず」みたいな組織では専ら東大の動向に左右されるからあるいはそうなのかもしれないですが,死ぬほど試験が好きな人たちが多い東大を除くと,いまだ法科大学院幻想があった1〜2年目を除けば,優秀な学生ほど法科大学院には行かないというのが現状ではないかと思われます。

13/09/2009

開示義務のない被差別属性を自主的に開示しなかったことを糾弾することの非人道性について

 民主党の渡辺義彦議員が自己破産手続き中であったことを報告しなかったことに関して,落合先生は「一種の議席詐欺と言われても仕方がないでしょう。」と言い,町村先生にいたっては,「この男、いやに堂々としていて、ジャンパーを頭にかぶるでもなくマスコミの前に出ているが、正気だろうか?」とまで言っています。

 しかし,就職活動であれ,選挙活動であれ,マイナス評価を受ける可能性が高い属性をわざわざアピールしようとしないことは当然です。自分の属性のうち,ある種の有権者がネガティブに評価する可能性があるものは全て開示すべきだなんてルールを作り出したら大変です。それは,「私は,これほどの被差別属性をもっています」ということの表明を強いることに繋がりますし,それは,自分の有するその属性は差別ないし偏見を持たれるに値するものであるということを認めさせられることに繋がるからです。

 その属性を有するか否かを開示するということが法令であるいはその所属政党内のルールとして定められているならば,その属性について情報を開示するにあたって,その属性が差別又は偏見を持たれるに値するものであるということを自ら認めるという葛藤ないし屈辱からはひとまず逃れることができます。だから,公式に開示することを求められていない属性を自主的に開示しなかったことを糾弾するということは,よくよく回避すべきことだと思います。

 

【追記】

 mohnoさんから「「知ってたら投票しなかった」という人は裏切られたと思うんじゃない?」というはてブコメントを頂きました。ある属性に差別ないし偏見を抱いている人は,その候補者がその属性を有していると知っていたら,その候補者に投票しなかったかもしれません。しかし,その人が偏見を有する属性を有する候補者はその属性を選挙公報等に掲載しているはずとの信頼をその人がもっていたとして,それは保護するに値するのでしょうか。その,しばしば差別される属性を開示しないことは「詐欺」として糾弾されるべきでしょうか。例えば,被差別部落出身者はその旨を選挙公報に明記しなければならないのでしょうか。同性愛者はその旨を選挙公報に明記しなければ詐欺でしょうか。アブノーマルな性的嗜好を有していることについてはどうでしょうか。若いころに,生きていくために,社会的な評価が極めて低い職業に就いていたことはどうでしょうか。

小選挙区制での連立政権のメリット・デメリット

 民主・国民・社民の連立政権は来年の参議院選挙までの暫定的なものであるという声が巷では大きいようです。果たしてそうでしょうか。

 比例代表中心の選挙制度であれば,それぞれの政党が独自の政策を訴えて選挙運動を行った後に,選挙結果を踏まえて新たにどことどこで組むのかを協議して調整すれば足ります。ですから,選挙ごとに,「議員数」という必要に応じて連立の枠組みを組み替えることができます。

 しかし,小選挙区中心の選挙制度の下では,複数政党で選挙協力をした方が,選挙協力せずに選挙運動を行うより圧倒的に有利となります。国民新党や社民党の支持者数は民主党の支持者数よりも圧倒的に少ないかもしれないわけですが,小選挙区制というのは,その相対的に少ない支持者が民主党系の小選挙区候補にはいるか否かで,当選者数ががらっと変わっていく可能性があるのです。

 そういう意味では,来年の参議院選挙で民主党が勝利し衆参とも民主党が単独で過半数を占めたとしても,その次の衆議院選挙のことを考えれば,民国社連立政権を継続した方が合理的だということになります。大臣ポスト2つと,いくつかの政策的な妥協など,そのためにはお安いものではないかという気がしてしまいます。特に,国民新党は,基本的に郵政民営化反対のシングルイシュー政党ですからある意味御しやすい政党ですし,社民党への譲歩はほぼ民主党内左派への配慮に繋がりますから,さほどマイナスにはならないですし。

11/09/2009

法務人材などこれっぽっちも欲していないくせに

 「企業法務戦士の雑感」に次のような記述があります。

 

報われない人間が圧倒的多数になった現状を踏まえるならば、“既卒”にならないと試験そのものを受験できないような現在のシステムは直ちに改められるべきで、最終学年の年度の真ん中あたりで受験機会を与えるようなスケジュールにしないと、当の受験者にとっても、喉から手が出るほど法務人材を欲している実務の側にとっても、どちらにとっても不幸なことになってしまうだろう。

 正直な話、「何と白々しい」という気持ちになります。何であれ新司法試験に合格し、司法修習を経て、新規に法曹資格を実際に取得した新人弁護士すら欲してもいない「実務の側」が、新司法試験にすら合格できないような人間を「法務人材」として「喉から手が出るほど」欲しているわけないではないか、としか言いようがありません。「実務の側は法務人材を欲しているから司法試験合格者の大幅増員を求めていたのだ」ということが真っ赤な嘘であることは、新規法曹資格取得者の進路調査で明々白々になっているわけです。

 それに、学部を卒業して法科大学院に入学しなければ司法試験を受験できないという時点で、「退路を断」たなければ司法試験を受けることすらできないシステムにしてしまっているわけですから、「最終学年の年度の真ん中あたりで受験機会を与えるようなスケジュール」に代えたところで、五十歩百歩というより他ありません。本当に、出身階層にかかわらず優秀な「法務人材」を実務の側が欲しているというのであれば、学部の3〜4年生でも司法試験を受験できるようなシステムに転換するように、財界を挙げて政府に要求すべきでしょう。どうせ、22歳を過ぎなければ理解できないような授業なんか法科大学院では行われていないのですから、それで何の問題もないはずです。

05/09/2009

pinkな過去

 報知新聞が次のように報じています。
 

先の衆院選で比例復活当選し、民主党大勝の象徴となった「小沢ガールズ」の代表格、田中美絵子氏(33)について、4日発売の写真週刊誌「フライデー」が過去にコスプレ風俗ライターとして活動していた前歴を報じている。今選挙ナンバーワンと称された美ぼうをもち、石川2区で自民党・森喜朗元首相(72)に善戦した田中氏の意外といえる過去だけに、話題を呼びそうだ。

 その真偽の程は明らかではありませんが,だからなんだ,という感じがします。大学新卒時に読売新聞社や講談社に入社された方には見当がつかないのかもしれませんが,若くて経験の浅いクリエイターにとっては,とにかく作品をつくって発表することが,生活という面においても経験という面においても重要であって,そのためであれば,ピンク方面に進出することだって厭わない。そんなの当たり前ではないですか。それは必死に生きてキャリアを積み上げてきた証です。

 「コミック雑誌なんかいらない!」で第11回報知映画賞作品賞を,「おくりびと」で第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎監督が1980年代前半に「痴漢電車」シリーズを撮っていたことも,「夢千代日記」の撮影監督であった安藤庄平が「小柳深志」との名前で「団地妻 昼下りの情事」の撮影監督を務めていたことも,「春の波濤」の脚本家であった中島丈博が「四畳半襖の裏張り しのび肌」の脚本を手がけていたことも,スキャンダラスに捉えること自体がおかしな話です。

 「映画関係者ならそれでも構わないが,国会議員だから問題なのだ」という人もいるかもしれません。しかし,国会議員って,自分の力で道を切り開いたことにない人ばかりが集まるべきところではないのです。

03/09/2009

はてなブックマークは議論には向かない

 はてなブックマークを使って議論を仕掛けてこようという人がいます。でも、はてなブックマークでは、せいぜい、「エントリー」→「エントリーへの批判」→「批判に対する反論」までが限度ではないかと思います。「エントリーへの批判」コメントを書き換えて「批判に対する反論」に対する「反論」を記載し、IDコールを行うという使い方は如何なものかと思わざるを得ません。「批判に対する反論」コメントが何に対する反論か、後からそのはてなブックマークを見た人が分からなくなるではないですか。

 そんなにそのエントリーについていろいろなことがいいたいのであれば、自分のブログで批判エントリーを立ち上げるなり、Twitterでつぶやくなりすればいいのにと思ったりなんかします。

02/09/2009

翻訳の際に文意を歪められたらチェックしきれない。

 「鳩山氏のNYT論文は捏造?」というエントリーのコメント欄で池田信夫さんがまたも奇妙な議論を行っているようです。

 「寄稿」とは、「原稿を新聞・雑誌などに載せるように送ること」をいいますから、既に別の媒体で掲載されている文章を翻訳等の加工をして別の媒体に掲載したいとの申し出を受け入れたということは、「寄稿」とは似ても似つかないものです。

 その際に文意が歪められた場合に誰が責められるべきかというえば、文意を歪めたメディアの側であって、文意を歪められた側ではありません。それは、仮に翻訳加工されたものを事前に送られてこれにOKを出したとしてもです。

 そうでないと、自分たちの側でニュアンスを含めてチェックできる言語への翻訳掲載しかOKできなくなってしまいますから。そういうルールができてもっとも損をするのは、欧米の要人にとって謎の言語である日本語を常用する我々日本国民です。


 なお、田舎者云々という話についていえば、米国において「小さな政府」路線を標榜する共和党は、むしろ農村部に強いことになっています。 

01/09/2009

私物化に対する嫌悪

 4年前大勝した自民党がなぜたった4年間で国民の支持をこれほど失ったのかについては,内外の研究者が様々な研究をすることでしょう。

 その要因の一つとしては,ある種の「私物化」に嫌気がさしたというのがあるのではないかという気がします。

 小泉政権末期の小泉総理のはしゃぎっぷり,そして,安倍総理によるイデオロギー優先政策,派遣法改正からホワイトカラーエグゼンプション等の財界優遇策,かんぽの宿払い下げ騒動等,そして最後は小泉元首相による後継指名に端を発する世襲問題。これだけ,ごく一握りの人々が社会の富や公的なシステムを私物化するのを4年間見せつけられれば,政権与党に投票する気がなくなるのは当然のことのように思います。

 まあ,敗れた自民党に対して新自由主義への回帰を薦めるセンスの悪い人たちもいるようですが,我が国においては,新自由主義路線の結果,輸出産業が稼ぎ出した富は,従業員に給料とした支払われて爾後国内で還流するのではなく,株式配当や金融機関等を介した外国投資等を通じて国外とりわけ米国に流出することとなるため,経済成長を阻害することになるし,それよりなにより,この4年間の間に,「トリクルダウン幻想」を信じる人が大幅に減少してしまったのだから,新自由主義への回帰によっては党勢は回復しないように思われてなりません。

« août 2009 | Accueil | octobre 2009 »

octobre 2017
dim. lun. mar. mer. jeu. ven. sam.
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31