« 開示義務のない被差別属性を自主的に開示しなかったことを糾弾することの非人道性について | Accueil | その決議を選ぶかなあ,普通。 »

15/09/2009

司法研修所卒業見込みの人間を対象とする法務部門の人材募集をやっているか否かを明らかにしていない企業にまで司法修習生が数十人単位で応募してくるようになって当たり前?

 「法務人材などこれっぽっちも欲していないくせに」というエントリーに対し,「企業法務戦士の雑感」のブログ主さんから反論を頂きました。

 

だが、現在「採用された人数が絶対的に少ない」ということを、「『実務の側は法務人材を欲しているから司法試験合格者の大幅増員を求めていたのだ』ということが真っ赤な嘘である」という結論に結びつけるのは、あまりに短絡的に過ぎるのではないだろうか。
どんな会社でも、毎年新卒採用を行っているし、法務部門の中途採用の募集も定期・不定期に行っているが、新規に法曹資格を取得した人が数十人単位で応募してきたなんて話は、まず聞かない。

とのことです。しかし,司法研修所卒業見込みの人間を対象とする法務部門の人材募集をやっている企業がどれだけあるというのでしょう。「実務の側は法務人材を欲しているから司法試験合格者の大幅増員を求めていた」のだとすれば,司法研修所を通じて求人票を出すなり,法曹資格新規取得者を法務人材として採用しようとしている会社で集まって司法修習生向けに合同説明会を開いたりと,学部新卒を採用しようとする場合に通常行う活動くらいしそうなものです。しかし,実際には,自社のウェブサイトにおいて,司法研修所卒業見込みの人間を対象とする法務部門の人材募集をやっている企業すら稀です。司法研修所卒業見込みの人間を対象とする法務部門の人材募集をやっているか否かを明らかにしていない企業にまで司法修習生が数十人単位で応募してくるようになって当たり前だということなのかもしれませんが。

現在の制度に基づいて“生産”される大多数の新規法曹資格取得者の目が、“普通の法律事務所に勤務弁護士として雇ってもらうこと”に向いていること(それゆえ、綿密な企業研究や採用手続の確認よりも事務所訪問をまず優先する)や、“大きな会社になればなるほど、就職を希望する人がきちんとした採用ルートに乗っかってくれない限りその人を採用することはできない”という人事の現実を踏まえるならば*3、これもやむを得ないことなのだろうが(少なくともあと数年は)、だからといって「実務の側が法務人材を欲していない」なんてことは全くない

 ただでさえ,新司法試験組の修習カリキュラムは1年であり,うち8カ月が実務修習にあてられ,全国各地に飛ばされます。そして,「普通の法律事務所に勤務弁護士として雇ってもら」えるのは,新規資格取得者のうち半分程度になっていきます(つい最近まで2万人程度しか実働メンバーがおらず,その後一気に増やされた人材はしばらく雇う側には回らないので,年1000人採用するのだって大変です。)。このような状況下では,司法研修所卒業見込みの人間を対象とする法務部門の人材募集をやっているか否かを明らかにしていない企業についてまで綿密な企業研究を行い,採用手続の確認を行っている暇はとりあえずありません。本当に「実務の側が法務人材を欲して」いるのであれば,採用のサイクルを彼らに合わせることはできるはずです。他方,彼らには,学部の4年生が大学の授業を欠席するほど自由に修習カリキュラムを欠席して就職活動につぎ込む余裕はないのです。

 いずれにせよ,年間数千人単位で新規資格取得者が法務人材として企業に採用される気は全くしていないのですが。

そして、何よりも、“認識のズレ”が一番顕著に現れているのは次のくだりだ。
何であれ新司法試験に合格し、司法修習を経て、新規に法曹資格を実際に取得した新人弁護士すら欲してもいない「実務の側」が、新司法試験にすら合格できないような人間を「法務人材」として「喉から手が出るほど」欲しているわけないではないか、としか言いようがありません。(太字強調筆者)
弁護士の業界の中では、資格を持っているかどうか、ということが決定的な意味を持つのだろうが(そもそも資格がないと業界に参入できないのだから当たり前の話だ)、法務の実務の世界で、「弁護士資格を持っているかどうか」とか、「司法試験に受かったかどうか」ということが、会社の中で仕事をするうえで決定的な意味を持つとまではいえない。

 本気でそう思っているのであれば,是非とも三振してしまった法務博士を雇ってあげて下さい。法科大学院制度を始めるときは,法科大学院で一流の教授陣の元で高度の法学教育を受けた者は,たとえ司法試験に合格しなくとも,引く手あまただということになっていたはずなので,三振法務博士が路頭に迷うという事態が生じていること自体裏切られた思いで一杯です。

 なお,

これまで学部新卒として採用され、会社の中で実務者として鍛えられてきた上記のような層の学生が、法学部の定員削減や“真面目に法律を勉強した人はとりあえず法科大学院に行く”的現象によって大幅に減少し、採用エントリーの時点でほとんど拾い上げることができなくなってしまっている(あるいは内定を出しても進学を理由に辞退されてしまう)というのが現実なのだ。

との点ですが,学部の教員からみると,認識がずれているような気がします。もちろん,「東大卒にあらざれば人にあらず」みたいな組織では専ら東大の動向に左右されるからあるいはそうなのかもしれないですが,死ぬほど試験が好きな人たちが多い東大を除くと,いまだ法科大学院幻想があった1〜2年目を除けば,優秀な学生ほど法科大学院には行かないというのが現状ではないかと思われます。

« 開示義務のない被差別属性を自主的に開示しなかったことを糾弾することの非人道性について | Accueil | その決議を選ぶかなあ,普通。 »

Commentaires

Poster un commentaire

Les commentaires sont modérés. Ils n'apparaitront pas sur ce weblog tant que l'auteur ne les aura pas approuvés.

(Ne sera pas visible avec le commentaire.)

« 開示義務のない被差別属性を自主的に開示しなかったことを糾弾することの非人道性について | Accueil | その決議を選ぶかなあ,普通。 »

octobre 2017
dim. lun. mar. mer. jeu. ven. sam.
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31