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12/10/2009

自家用車に高い税金をかけてタクシーと競合させるという政策の不毛

 池田信夫さんは次のように述べています。

特に重要なのは、環境問題です。民主党のCO2を現状から30%以上削減するという政策を実現するには、新車の90%、既存の車の40%をハイブリッド車にしなければならない、と前政権は推定していますが、これは不可能です。それより簡単なのは、自家用車を減らすことです。普通の家庭で車を使うのは、家族旅行や買い物などが主で、なければ困るものではない。レンタカーやタクシーで十分です。自家用車を保有して維持するコストに比べれば、必要なときだけ借りるほうが安い。

 池田さんは何を根拠に「普通の家庭で車を使うのは、家族旅行や買い物などが主で、なければ困るものではない。」と仰っているのかわかりませんが,都合の悪い事実は見なかったことにして論理を積み上げられるのが経済学の特徴ですから,驚くような話ではありません。実際のところ,毎日の通勤に自家用車を用いている人というのはそれほど珍しくありません。また,主婦や家内労働者等が遠隔地に通勤する家族を最寄り駅まで自家用車で送り届けるというのも我が国ではそれほど珍しい話ではありません。そういう日々の活動に用いる自動車は高級車である必要も新車である必要もありません。中古の軽自動車で良ければ,数十万円で購入できます。反復的に自動車で移動する距離にもよりますが,毎日タクシーで最寄り駅まで通うことを考えたら,半年もしないうちに元が取れてしまいます。それに,毎日の通勤・通学で最寄り駅に向かうのでタクシーを使うということになると,その地域における遠隔地通勤・通学者のほとんど全てを,その遠隔地に向かう電車に間に合うような時間帯に運搬できるだけのタクシー運転手がその地区に存在することが必要となります。そして,その地区では,その時間帯を過ぎるとタクシー需要が一気に減少することが予想されるので,その地区のタクシー運転手は朝の通勤時間帯に一日の稼ぎのほとんどを得ておく必要がでてきます。しかし,毎朝の通勤・通学にそれほどのコストをかける余裕のある過程は非常に限られているように思われます。

 従って,自家用車を減らすには,自家用車に高い税金をかけてタクシーと競合させるという政策は,自動車産業云々という以前に,最寄り駅から徒歩や自転車でおいそれと通えるわけではない場所に住んでいる人々の生活を破壊してしまうという意味で,適切さを欠くといわざるを得ないでしょう。環境対策のために自家用車の使用を減らすのであれば,その方法は,公共交通機関を充実させることによるのが近道です。ただし,公共交通機関が日常的な通勤・通学のための「足」として自家用車と競合するためには,


  1. 乗降車するポイントを多くとる。

  2. 1時間あたりの本数を3本以上とする。

  3. 早朝,夜等にも走らせる。

  4. どこの乗降車ポイントからも地域内の他の乗降車ポイントに1〜2回の乗り換えで到着できるようにする


等の工夫をする必要があり,それを実現しようと思えば当該公共交通機関は相当の赤字事業とならざるを得ないでしょう。どうせ財政支出をするのであれば,電気自動車の購入代金の一部を助成してしまうという方法もあり得るわけですが,それでは自家用車から吸い上げる税金で自由が丘駅の駐輪場を無料にするというプランは成立しなくなってしまいそうです。

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