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janvier 2010

30/01/2010

公共心のあるテレビ局の人が金輪際使うべきでない人

 城繁幸さんが、OECDの雇用統計について、次のように述べています。

だが、この「雇用保護の厳格性」(Strictness of employment protection)を文字通りに
受け取ってはならない。

以前も述べたとおり、この数値は以下の3つの指標を総合したものだ。

1. 手続きの不便さ

2. 会社都合解雇の場合の告知期間と補償額

3. 解雇の難しさ

 OECDによれば、この指標は、


  1. Individual dismissal of workers with regular contracts

  2. Additional costs for collective dismissals

  3. Regulation of temporary contracts


の3つのサブ指標を総合したものとされています。あれ、既に城さんの解説は、OECDのものと異なっているようです。

 なお、「Individual dismissal of workers with regular contracts」に関して雇用保護が緩やかな順に並べると、

United States0.56
Canada 1.17
United Kingdom 1.17
Switzerland 1.19
Australia 1.37
Denmark 1.53
New Zealand 1.54
Ireland 1.67
Italy 1.69
Hungary 1.82
Belgium 1.94
Poland 2.01
Japan 2.05
Iceland 2.12
Austria 2.19
Norway 2.20
Mexico 2.25
Greece 2.28
Korea 2.29
Finland 2.38
Spain 2.38
Slovak Republic 2.45
Turkey 2.48
France 2.60
Luxembourg 2.68
Sweden 2.72
Netherlands 2.73
Germany 2.85
Czech Republic 3.00
Portugal 3.51

 OECDの統計を見る限り、日本は正規雇用労働者の保護も、世界水準で見るとさほど手厚くないようです。

 さらに、OECDの報告書を見ていくと、「Individual dismissal of workers with regular contracts」はさらに、


  1. procedural inconveniences that employers face when starting the dismissal process, such as notification and consultation requirements

  2. notice periods and severance pay, which typically vary by tenure of the employee

  3. difficulty of dismissal, as determined by the circumstances in which it is possible to dismiss workers, as well as the repercussions for the employer if a dismissal is found to be unfair (such as compensation and reinstatement).


に分類されるとされています(6頁)。城さんは、「Individual dismissal of workers with regular contracts」を構成する要素のことを、「Strictness of employment protection」を構成する要素と勘違いされたのかもしれません。

 ただ、城さんは、
よって、議論すべきは3番となる。

ちなみに、この指標での日本の順位は、最新データである2008年度版ではOECD加盟30カ国中第一位。
栄えある「先進国で一番正社員が解雇しにくい国」となっている。

「日本の解雇規制は厳しくない」どころの話ではないのだ。※

と述べており、

※リンク先の「Individual dismissal of workers with regular contracts」項参照のこと。

  生データについては同じリンク先にあるExcelシート参照。

と述べているのですが、「difficulty of dismissal」について、「日本の順位は、最新データである2008年度版ではOECD加盟30カ国中第一位。」とする情報は、「リンク先にあるExcelシート」には掲載されていないよう見えます。

 「OECD Indicators of Employment Protection」からリンクされているxlsファイルは2つ。うち、「Employment protection annual time series data 1985-2008」をみると、正規雇用労働者の解雇の難しさを示す指標として、「REGULAR3_v1」と「REGULAR3_v3」の2つを用意しており、それぞれ「Difficulty of dismissal - calculated as unweighted average of items REG5, REG6, REG7, REG8」、「Difficulty of dismissal - calculated as unweighted average of items REG5, REG6, REG7, REG8, REG9」と定義されています。

 REG5〜REG9については、

REG5Definition of justified or unfair dismissal
REG6Length of trial period
REG7Compensation following unfair dismissal
REG8Possibility of reinstatement following unfair dismissal
REG9Maximum time to make a claim of unfair dismissal

と説明されています。

 で、「REGULAR3_v1」については、

United States0.50
United Kingdom 1.25
Israel 1.25
Iceland 1.33
Switzerland 1.50
Denmark 1.50
Australia 1.75
Belgium 1.75
Poland 1.75
Canada 2.00
Ireland 2.00
South Africa 2.00
Spain 2.25
New Zealand 2.25
Turkey 2.25
Hungary 2.50
Czech Republic 2.75
Finland 2.75
Greece 2.75
Netherlands 2.75
Slovak Republic 2.75
France 2.75
France 3.00
Korea 3.00
Luxembourg 3.00
Germany 3.25
Italy 3.25
Japan 3.25
Brazil 3.25
Chile 3.25
Slovenia 3.50
Mexico 3.67
Austria 3.75
Norway 3.75
Estonia 3.75
Russian Federation 3.75
Portugal 3.75
Portugal 4.00
Sweden 4.00
India 4.25
Indonesia 4.25
China 4.75

ということなので、やや厳しめと言うことは言えそうですが、「日本の順位は、最新データである2008年度版ではOECD加盟30カ国中第一位。」ということはなさそうです。

 さらにいうと、「REG5:Definition of justified or unfair dismissal」についていえば、

Australia0
Belgium 0
Canada 0
Switzerland 0
Czech Republic 0
Denmark 0
United Kingdom 0
Hungary 0
Ireland 0
Italy 0
New Zealand 0
Poland 0
Slovak Republic 0
Turkey 0
United States 0
South Africa 0
Israel 0
Iceland 0
Greece 1
Austria 2
Spain 2
Japan 2
Korea 2
India 2
Luxembourg 2
Netherlands 3
Germany 4
Finland 4
France 4
Portugal 4
Sweden 4
China 4
Slovenia 4
Estonia 4
Russian Federation 4
France 4
Portugal 4
Norway 5
Mexico 6
Brazil 6
Indonesia 6
Chile 6

ということですから、どのような解雇を「不公正」なものとするかについての基準が、日本において特に厳しいと言うことはないように思えてなりません。

 城さんは、次のように述べています。

もしここを見ているテレビ局の人がいるなら、お願いしたいことがある。

あなた方に公共心があるのなら、もうこの男は金輪際使わないで欲しい。

 公共心のあるテレビ局の人が金輪際使うべきでないのはいったい誰なのでしょうか。

28/01/2010

石川議員の供述内容を知りうる立場の「小沢氏側の関係者」?

 元の文章が消えているので、finalventさんのところから孫引き

  ⇒NHKニュース “銀行の融資 小沢氏に報告”
民主党の小沢幹事長の資金管理団体をめぐる事件で、逮捕された石川衆議院議員が大久保秘書も資金調達にかかわっていたことを認める供述をしていることが、小沢氏側の関係者への取材でわかりました。


 これをみて考えるべきことは、まずは、「小沢氏側の関係者って何?」ということであり、次に、石川議員の供述内容を知りうる立場の「小沢氏側の関係者」なんているのだろうか、ということです。

 これを見る限り、石川議員には接見禁止処分が下されているので、石川議員の口から取り調べに対する供述内容を知ることができるのは石川議員の弁護人に限られているし、すると、石川議員の弁護人って安田先生だから「小沢氏側の関係者」と表現するにあたらないことは明らかです。で、安田先生は、1月27日の時点で、このような書面を提出しているくらいなので、「小沢氏側の関係者」に対し「石川衆議院議員が大久保秘書も資金調達にかかわっていたことを認める供述をしている」云々と伝えることはなさそうな気がします。

 ということで、本当に「小沢氏側の関係者への取材」の結果しか論拠がないのだとすると、ずいぶんと薄弱な根拠で断定的な報道をするものだと驚かざるを得ないし、そもそも石川議員が取調べに対してどのような供述をしているのかを「小沢氏側の関係者」に聞きに行くものかいなということを疑問に思わざるを得ません。

 まさか、小沢氏への捜査を担当している検察官を「小沢氏側の関係者」と表現している、というオチではないですよね。

27/01/2010

検察からのリークがあるかをもっともよく分かっている新聞社がこの点について沈黙していることについて

 朝日新聞の報道によれば、

 鳩山内閣は26日、民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体による土地取引事件をめぐり、「(報道機関への)情報漏洩(ろうえい)があったとは考えていない」「(検察当局が)捜査情報や捜査方針を外部に漏らすことはない」とする答弁書を閣議決定した。鈴木宗男衆院議員の質問主意書に答えた。

とのことです。

 このことからは、逮捕された後の石川議員の言動に関する情報は、弁護人が述べたことが分かっているもの以外は、報道機関による想像の産物だということが言えそうです。報道機関も、上記閣議決定に対して異議を述べていないことからすると、これまで、「見てきたような嘘を付」いてきたことを自認しているとみて良いでしょう。

 以前私が担当していた事件でも、全国紙系の週刊誌が全くのでっち上げ証言をもとに特定の事業者を糾弾する記事を書いていたことがありますので、そういうことが全くあり得ないわけではありません。

 ただ、実際には検察官からリークを受けて記者が書いた記事を掲載した新聞社は、検察から報道機関への情報漏洩はなかったとする閣議決定の内容が事実と反していることを今明らかにしないと、その記事が検察からのリークに基づいて作成されたことが後に明らかになった場合、その新聞社は読者を平然と騙す会社であると認識されることは必定です。

 「赤信号、みんなで渡れば」的に気楽にお考えなのだとは思いますが、新聞社ギルド自体が崩壊しかねない昨今、新聞自体の信頼性を失わせる行動をとって大丈夫なのだろうかと人ごとながら思ってしまいます。

26/01/2010

大学そのもののインフレ?

 上武大学の池田教授が次のように述べています。

企業の人事担当者もこうした実態を知っているので、大学の偏差値を信用しなくなった。特に偏差値の低い大学の扱いは専門学校以下で、大学を卒業してから(大学院ではなく)専門学校へ行く学生が増えている。講義の内容も専門学校化し、特定の資格を取るための学科が増えている。一部の難関校を除いて大学そのものがインフレになっており、今や専門学校より役に立たない一般教養を教える機関にすぎない。

 私のような法学系の人間には、池田教授のような経済学系の人の論理は理解できません。

 「偏差値の低い大学の扱いは専門学校以下」という扱いを企業の人事担当者がしているのであれば、企業の人事担当者は未だ「大学の偏差値を信用」しているように私には思えます。「講義の内容も専門学校化し、特定の資格を取るための学科が増えている」のであれば、既に「役に立たない一般教養を教える機関」ではないように思えます。

 「大学そのものがインフレになって」いるという言い回しに至っては何を言いたいかのか皆目見当がつきません。「インフレ」って価格高騰ってことではなかったのでしょうか。そうだとすると、「大学そのものがインフレになって」いるという言い回しは、「大学の価値がうなぎ登りに上がっている」ということを意味するように思われますが、それは全体の論旨には合致していないように見えます

 さらにいうと、私のアルバイト先(中央大学法学部)では大学中に専門学校に通うダブルスクール族はそこそこいるようですが、大学卒業してから専門学校に行く学生の話は今のところ聞いたことがありません。もちろん、中央大学法学部はそこそこ偏差値の高い大学なので、ここで兼任講師をしているだけでは「偏差値の低い大学」の学生がどうなっているのかわからないのですが。

 大学入試時に偏差値が低かった学生が、大学入学後も、論理的な思考が不得手な教員に教わっていたのでは、卒業後に専門学校に通わないとどうにも使えないということになる可能性はあるのですが、どうにも私には感覚的に理解できない世界です。


注:この点については、「学歴インフレ」という用法は一部でなされているようですが。でも、経済学者が用いるべき言葉ではないように思います。

憲法の番人としての内閣法制局に代わるシステム

 提出された法案に憲法違反の疑いがある場合、主に判事や検事の出向組からなる内閣法制局に憲法判断をさせるのではなく、各会派が推薦する憲法学者からなる審議会に諮るようなシステムにした方がよいのではないかと思ったりします。

 その場合、結論が一つにまとまるとは限らないですが、両論併記されれば、それでもその法案を成立させるべきか否かを各議員が判断することができますし、合憲論が少数(例えば、N大学のM先生以外みんな意見説とか。)に留まりかつその論理に問題があるにもかかわらず議員の多数が当該法案の可決に踏み切った場合には、立法過程における過失を認定しやすくなりそうな気がします。

 その場合でも、条文間の整合性とか、条文の言い回しの統一だとか、議員さんの手に余る事項はたくさんありますから、内閣法制局が不要になるとは思いませんが。

24/01/2010

ビデオ録画がなされている状況でもなお、被疑者は、殴打もなく、心理的な圧力もない状態で任意に自白するものだ

 産経新聞社は、民主党が「取り調べの全過程を録音・録画する刑事訴訟法改正案(可視化法案)を今国会に提出する準備に入った」ことについて、

民主党がこの時期に突如として今国会提出を持ち出したのは、東京地検特捜部の捜査を牽制(けんせい)し、圧力をかけるのが狙いだと受け止められる。しかし、問題の多い可視化法案を、こうした政治的な思惑で提出することは筋違いだ。

述べています。しかし、民主党は野党時代から議員立法により可視化法案を提出し、参議院で社民党らとともに多数派となった後は参議院ではこれを可決してきたわけですし、可視化法案を提出することについてはマニュフェストでも謳ってあります。可視化法案の提出を先送りすることは、可視化法案が成立していれば防げたはずの虚偽自白→冤罪を生み出すことに繋がりますから、一刻も早く提出するに越したことはないのであって、これを今通常国会で提出することを「東京地検特捜部の捜査を牽制(けんせい)し、圧力をかけるのが狙いだ」と捉えるのは、物の見方がゆがんでいる故なのではないかと危惧してしまいます。

 また、産経新聞社は、

 しかし、検察・警察の現場からは、「すべてにカメラが回っているとなるとプライバシーを含め容疑者の口は重くなり、真実の解明に大きな支障をきたす」という反対意見が大勢だ。冤罪を許してならないのはもちろんだが、未解決事件も増えることになっては治安が守れない。

とも述べています。しかし、いやしくも報道機関の一角を担う以上、検察・警察の現場からそのように言われたからといって、それを鵜呑みにするのはいかがなものかという気がします。報道機関ならば、「既に取調べが全面的にビデオ録画されているところでは、実際のところどうなっているのだろうか」と言うことに思い至り、調べてみるのが常道ではないかと思います。

 日弁連の調査団に対して、オーストラリアのニューサウスウェールズ州のニコライ・カウデリー検事総長は、

わが州での実務的な経験や、取調べがビデオ録画されている他の州等における実務的な経験では、ビデオ録画がなされている状況でもなお、警察は被疑者と適切な信頼関係を築くことが可能である。そして、被疑者はそれでも多くの事件において、殴打もなく、心理的な圧力もない状態で任意に自白するものだ

述べています

 産経新聞のことですから、産経新聞社を中心とすれば左の側に位置づけられる日弁連の報告など信用できないと仰るのかもしれません。それならば、産経新聞が独自取材によって、取り調べの全面録画義務づけが施行された国や地域において治安が悪化したか否かを取材したらよいことです。全国紙である以上、オーストラリアに特派員を派遣していないということはさすがにないでしょう。それをせずに、検察・警察の声を鵜呑みにして、検察・警察の実務運用の改革を押しつぶそうとする。それでは、ジャーナリスト失格との烙印を押されてもやむを得ないとさえ思ったりします。

23/01/2010

報道機関に専門家のいる米国、専門家を排除する日本

 AFPBBの報道によれば、

米CNNテレビで医療ニュースを担当する人気記者で、現役の神経外科医でもあるサンジェイ・グプタ(Sanjay Gupta)氏が18日、ハイチ沖の米空母船内で、負傷した12歳の少女の脳外科手術を行った。

とのことです。

 ここで注目すべきは、CNNでは、現役の医師が医療ニュースを担当していることです。専門知識が必要な分野に関する報道は、その道の専門家が担当する。その当たり前のことを米国の一流の報道機関は当然のように行っているということです。

 翻って、日本はどうでしょう。司法関連のニュースを現役の弁護士である記者が担当している報道機関があるでしょうか。テレビ局や朝日・日経新聞の記者の給料は非常に高いので、現役の弁護士を記者として雇用することは容易なはずですが。法律の素人のみで裁判報道がなされる結果、検察のリークに簡単に踊らされてしまっているということはないでしょうか。

 私は以前、脱税の疑いをかけられた企業の代理人として、リークに基づく報道を行った新聞社を訴えたことがあります。そのとき驚いたのは、税務報道を担当するセクションに税理士・公認会計士がいないだけでなく、それが脱税にあたるのか否かを税理士・公認会計士に照会する体制すらなかったということです。その結果、従前セーフとされてきた処理を事前通達無しに突然アウトにしてしまう「特定の税務署職員の勇み足ケース」であっても、そのことに気がつかず、さもその企業が悪質な所得隠しを行ったというストーリーで記事を作り上げてしまうことになってしまうのです。

20/01/2010

弁護士過疎解消のために大学等ができること

弁護士過疎問題が解消されない最大の要因は、もっぱら弁護士にのみ負担を押し付けることにより対処しようとしている点です。

その地域に弁護士が開業していることが必要であるとその自治体が考えているのであれば、高額の顧問料を継続的に支払い続けることを前提に法律事務所を誘致したって良いはずですが、そのようなことはなされていません。「公設」事務所に赴任した弁護士の売上が想定に満たなかった場合にこれを補填するのは、何故か弁護士会です。そこに弁護士がいることを望んでいる自治体は何もしてくれません。

あるいは、法科大学院だって、過疎地に赴任する弁護士を教授職に任命することにより、財政的な負担を分かち合うことができます(夏休み時期等に学生を研修させれば、教員としての実態を満たすことができます。)。また、サテライト授業を行うという名目で、大学の費用負担で過疎地赴任弁護士のためにIT設備の設置•提供を行なうことだってできます。)。それに、法科大学院が持っているリーガルクリニックが都心部にある必然性はないので、これを弁護士過疎地に置くことだってできます。

19/01/2010

需要が増えていないのに、拡大期の企業以上に大量の新人を採用し教育せよと言われても。

 前回のエントリーについて、企業法務戦士さんから、「3000人」という数字を引き出したのは、……「(当時)弁護士の」中坊公平委員であるとのご批判をいただきました。

 ただ、当時財界人が「司法試験合格者数の増員幅は、既存の弁護士だけでOJTの場を提供できる範囲内の人数でよいですよ」と言っていた状況の中で中坊先生が「3000人」という数字を出したのであればともかく、当時の財界人は、根拠なく「司法試験合格者の数は多ければ多いほどよい」と無責任に曰っていたのであり、「3000人」という数字は妥協的なものに過ぎなかったというのが実態です(そのころのNBL等を読むと、いい加減な議論がなされていたことが分かります。)。

 それでも「3000人」という数字を出したのは弁護士の側なのだから、新人弁護士を教育する為のコストは専ら弁護士のみが負担せよと言われてしまうと、何だかなあと思ってしまいます。

 まあ、日弁連選挙で宇都宮先生が当選した場合には弁護士会として司法試験合格者数の大幅削減を要求することが予想されるわけですが、そのときに財界人が「『3000人』という数字は中坊先生が勝手にお出しになった数字ですから、我々はそれにこだわりません。1000人でも、2000人でも、既存の弁護士がOJTを施せる範囲内で結構です。」と口々に言ってくれて削減案に反対しないでいただけるのならそれでもよいのですが、おそらくそうはならないでしょうね。司法試験合格者数の大幅削減には反対した上で、では新規法曹資格取得者を雇ってくださいというと「何で俺たちが教育コストを払わなければいけないのだ」と怒り出すのでしょう。

 なお、企業法務戦士さんは、

だが、少なくとも傍で見ている限り、新規採用を中止ないし大幅縮小せざるを得ないような企業と同じくらい、今「弁護士の新規募集をしていない」法律事務所の経営が追いつめられているようには見えないのであって、法律事務所が「人を雇わない」のには、もっと違う理由があるんじゃないの?と思いたくなるような状況があるのも確かなのだ。

と仰っているのですが、過払金返還請求訴訟を除く新規係属訴訟件数が増えていない現在、客観的に言えば、大幅に人員を増やす環境にないことは明らかです。もちろん、弁護士が経済合理性を追求することは許されないとの立場に立てば、自宅を売り払い、家族を捨てて、ネットカフェで寝泊まりするようになってでも、既存の弁護士たちは、財界人が納得するだけの数の新人の育成にあたるべきだということになるのでしょうが、弁護士もまた普通のサービス業者であると位置づけようとした司法改革推進論はどこに行ってしまったのだろうという気になってしまいます。

17/01/2010

後進育成の役割を既存の法律事務所にのみ押しつけるのなら、その上限人数について財界は口を挟まないで!

 「企業法務戦士の雑感」というブログにおいて、次のような発言がなされています。

なお、蛇足ではあるが、「修習直後に企業に入るのが有意義である」からといって、「既存の法律事務所(特に首都圏の法律事務所)が本来果たすべき後進育成の役割を放棄して、企業に対して安易に雇用の“受け皿”としての役割を求めること」が正当化されることにはならない*10。

この点については、先日のエントリーで述べたとおりだから、今ここであらためて繰り返すことはしないが、「法曹人口が過剰で既存の法律事務所では吸収しきれない」という認識をお持ちの業界の方が、もしこのブログを読まれているのであれば、ご自身の事務所の仕事量と人員のバランスや、運営経費(ご自身の報酬も含め)に過剰なところがないかを良く見直された上で、本当に「吸収しきれない」のかを、まず足元からご検討いただきたいものだと思う。

 そこまで仰るのであれば、司法試験の合格者数を今後どうするかについて、企業人は今後一切口を挟まないでいただきたいところです。

 現在の司法試験合格者数自体、企業が企業内弁護士を多数雇用することを前提としています。2009年2月9日段階で日本の弁護士の人数は26,976名、その後の新規登録者を含めても、3万人弱といったところでしょう。しかも、うち約1万人は登録5年以下であって、未だOJTを施す立場ではありません。そのような人数構成の団体に「年2千人、3千人の新人を受け入れてOJTを施す」なんてことができようはずがありません(まだ「売り手市場」といわれていた2009年新卒採用ですら、年間2000人以上の採用を計画していたのは、三井住友銀行(従業員数約2万2000人、みずほFG(従業員数約5万人)、トヨタ自動車(従業員数約7万3000人)のみです。2010年新卒採用については2000人以上の採用を予定している企業はありません。1位のみずほFGで1750人、2位の三菱重工(従業員約3万4000人)で1500人です。「日弁連」より大きな企業は数有れど、安定して2000人以上の新人を採用している企業など、日本にはありません。)。

 もちろん、「ご自身の事務所の仕事量と人員のバランスや、運営経費(ご自身の報酬も含め)に過剰なところがないかを良く見直された上で」と仰っていることからすると、「法律事務所なんて規模的には中小零細企業に過ぎないのだから、中小零細企業の人間としての『分』をわきまえた所得レベルを甘受すれば、もっともっと新人を受け入れられるはずだ」ということを仰りたいのだと思います。ただ、大企業系の方々は、企業のみが経済合理性に基づいて行動する存在であることを前提とし、それ以外の人々は企業のために自己犠牲を図って然るべきだと考えがちなのですが、自分の収入を減らし、例えば自分の子どもが高校・大学に進学することを断念させてまで、必要もない新人を雇いOJTを施してやろうと既存の弁護士どもは考えるべきといわれても、そうそうなんでも大企業の思い通りには行かないのではないかと思います。

 企業が新人弁護士を雇う気がないのであれば、既存の法曹三者が無理なく吸収できるのはせいぜい年間800〜1000人前後です(この数年、弁護士のみが、無理して吸収していました。)。すると、新司法試験合格者数を1000人前後に戻すのが合理的だということになります(「路頭に迷う弁護士が大量に現れるのを見て溜飲を下げたい」というのであれば、既存の法曹三者の吸収能力を無視して、司法試験合格者数を3千人だ、1万人だと闇雲に増やすのが合理的だということになろうかと思いますが、その場合、「もはや優秀な人材は法曹にはならない」社会となることを覚悟していただく必要があります。)。1000人前後であれば、法科大学院制度をやめて法科大学院につぎ込まれていた補助金を司法研修所に振り向けることによって、2年間・給費制の司法修習制度を復活させることが可能です。

16/01/2010

The Spirit Level

Newsweek日本版の2010年1月20日号の19頁のウィリアム・アンダーヒルの「イギリス労働党の不都合な真実」という記事によれば、

保守党のデービッド・キャメロン党首は最近、2人のイギリス人学者が書いた『気力のレベル──なぜ平等社会の方が勝っているのか』に言及することが多い。不平等と社会悪の関連性を指摘した著書に触れることで、より平等な社会派より幸福だというメッセージを発信している。

とのことです。

 『気力のレベル──なぜ平等社会の方が勝っているのか』の原題は、「< a href = “http://www.equalitytrust.org.uk/resource/the-spirit-level”>The Spirit Level: Why More Equal Societies Almost Always Do Better」。著者は、Richard WilkinsonKate Pickett

 日本では、経済学者を中心に、格差を拡大することを希求する声が囂しい昨今ですが、サッチャー時代に広がった不平等のひずみをブレア時代になっても修正しきれなかった英国で、むしろ保守党が格差社会の是正を口にするというあたりがおもしろいところです。

 それこそ、谷垣さんも、次の総選挙で政権を奪回できると目されている英国保守党にあやかって、「The Spirit Level」路線を採用していった方が、古くさい復古的会見路線に進むよりも、よくよく政権奪取の可能性が高まるように思えます。

08/01/2010

上武大学では、ドイツやオランダは社会主義国であると教えているのでしょうか?

 池田信夫さんは、「アゴラ」という、その名前とは裏腹に池田さんのお気に召さない意見はコメント欄から排除されトラックバックも受け付けられないネット空間において、次のように述べています。

その典型が、民主党政権が来年の国会に出そうとしている公開会社法である。これは連合が求めている「労働者参加」を法的に義務づけ、日本を資本主義から社会主義に変える法案だ。このような時代錯誤の法案が21世紀になって出てくるのは、日本が社民党政権で痛い目にあった経験がないからだろう。

 しかし、労働者代表の経営参加は既に、EU会社において義務づけられていますが、一般にEUは社会主義経済をベースとはしていないと考えられています。しかも、EUの「欧州会社への労働者の関与に関する指令」が成立したのは2001年10月です。すなわち、「時代錯誤」どころか、極めて21世紀的な考え方だということができます。

 しかも、民主党の提案は、労働者代表を監査役の一員とするという穏当なものでしかありません(「監査役」の法的権限を知らずに、会社法を語る経済学者がいるとは信じたくありません。)。濱口先生の報告によれば、ドイツでは、労使の代表者からなる経営評議会に「人事管理、教育訓練、労働時間、解雇など労働関係の広範な分野」に関する共同決定権があるとのことですし、また、オランダの従業員協議会の権限は、オランダのホイセン法律事務所のニールズ・ファン・ヘルダーさん=山田千鶴子さんがこちらで開設されるとおり、かなり強力です。

 そして、ドイツもオランダも社会主義を採用していると一般には評価されていません。

 池田さんは、

「私は株主至上主義だ」とか「私は市場原理主義だ」と自称する人はいないので、そういうレッテル貼りで議論するのは非生産的。藤末さんの議論は、出発点が間違っていると思います。 http://bit.ly/4P4X0k

つぶやいたようなのですが、池田先生ほどは労働者を敵視していない見解に「社会主義」とのレッテルを貼って議論をするのは非生産的なのでやめた方がよいと思います。

06/01/2010

日弁連選挙

 それにしても、高山先生が出馬できないことの反射的な効果として、日弁連会長選挙の帰趨が却って読めなくなっているのは興味深いです。

 まるで、共産党が出馬をやめた小選挙区のようです。

05/01/2010

城さん的な「労働市場改革」は却って「日本のイスラム化」を推し進めるのでは?

 城繁幸さんが次のように述べています。

ついでに言っておくと、労働市場が硬直している日本の場合、大卒女性が出産と
同時期に退職してパートタイムとして復職すると、キャリアにとどまった場合と比較
して2億円以上の経済的損失となる。

“子供手当”だけでカバーするつもりなら、最低2億円は出さないと効果が無いだろう。

というわけで民主の子供手当ては、(少子化対策としては)やるなとは言わないが
本丸には程遠い。

本丸は日本のイスラム化…ではなく、労働市場改革だ。

 しかし、現行法では、正社員入社した女性労働者は、産休、育休を取り、その後職場に復帰することが認められています。これに対し、城さんが唱えるような「労働市場改革」が実現した場合、妊娠し、一時的にせよ労働能力が減退した女性労働者を企業は解雇することができ、さらに、育児期間終了後その女性労働者を再雇用する義務を負いません。

 さらにいえば、城さんが唱えるように企業が中高年を自由に解雇できることにした場合、女性労働者については結婚したら、あるいは、容姿が衰えたら、程なくして解雇するという運用を公然と行う企業がそれなりに増加することが予想されます。もちろん、解雇規制撤廃派の論理でいえば、鑑賞目的、あるいはお嫁さん候補としての採用を禁止することは女性労働者の雇用枠を減少させることに繋がるから却って女性労働者の敵となるのだということになるのかもしれませんが、それって今の時代どうかなという感じがいたします。

 結論としていえば、城さん的な「労働市場改革」は、却って「日本のイスラム化」を押し進めそうな気がしてなりません。

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