« 報道機関に専門家のいる米国、専門家を排除する日本 | Accueil | 憲法の番人としての内閣法制局に代わるシステム »

24/01/2010

ビデオ録画がなされている状況でもなお、被疑者は、殴打もなく、心理的な圧力もない状態で任意に自白するものだ

 産経新聞社は、民主党が「取り調べの全過程を録音・録画する刑事訴訟法改正案(可視化法案)を今国会に提出する準備に入った」ことについて、

民主党がこの時期に突如として今国会提出を持ち出したのは、東京地検特捜部の捜査を牽制(けんせい)し、圧力をかけるのが狙いだと受け止められる。しかし、問題の多い可視化法案を、こうした政治的な思惑で提出することは筋違いだ。

述べています。しかし、民主党は野党時代から議員立法により可視化法案を提出し、参議院で社民党らとともに多数派となった後は参議院ではこれを可決してきたわけですし、可視化法案を提出することについてはマニュフェストでも謳ってあります。可視化法案の提出を先送りすることは、可視化法案が成立していれば防げたはずの虚偽自白→冤罪を生み出すことに繋がりますから、一刻も早く提出するに越したことはないのであって、これを今通常国会で提出することを「東京地検特捜部の捜査を牽制(けんせい)し、圧力をかけるのが狙いだ」と捉えるのは、物の見方がゆがんでいる故なのではないかと危惧してしまいます。

 また、産経新聞社は、

 しかし、検察・警察の現場からは、「すべてにカメラが回っているとなるとプライバシーを含め容疑者の口は重くなり、真実の解明に大きな支障をきたす」という反対意見が大勢だ。冤罪を許してならないのはもちろんだが、未解決事件も増えることになっては治安が守れない。

とも述べています。しかし、いやしくも報道機関の一角を担う以上、検察・警察の現場からそのように言われたからといって、それを鵜呑みにするのはいかがなものかという気がします。報道機関ならば、「既に取調べが全面的にビデオ録画されているところでは、実際のところどうなっているのだろうか」と言うことに思い至り、調べてみるのが常道ではないかと思います。

 日弁連の調査団に対して、オーストラリアのニューサウスウェールズ州のニコライ・カウデリー検事総長は、

わが州での実務的な経験や、取調べがビデオ録画されている他の州等における実務的な経験では、ビデオ録画がなされている状況でもなお、警察は被疑者と適切な信頼関係を築くことが可能である。そして、被疑者はそれでも多くの事件において、殴打もなく、心理的な圧力もない状態で任意に自白するものだ

述べています

 産経新聞のことですから、産経新聞社を中心とすれば左の側に位置づけられる日弁連の報告など信用できないと仰るのかもしれません。それならば、産経新聞が独自取材によって、取り調べの全面録画義務づけが施行された国や地域において治安が悪化したか否かを取材したらよいことです。全国紙である以上、オーストラリアに特派員を派遣していないということはさすがにないでしょう。それをせずに、検察・警察の声を鵜呑みにして、検察・警察の実務運用の改革を押しつぶそうとする。それでは、ジャーナリスト失格との烙印を押されてもやむを得ないとさえ思ったりします。

« 報道機関に専門家のいる米国、専門家を排除する日本 | Accueil | 憲法の番人としての内閣法制局に代わるシステム »

Commentaires

L'utilisation des commentaires est désactivée pour cette note.

« 報道機関に専門家のいる米国、専門家を排除する日本 | Accueil | 憲法の番人としての内閣法制局に代わるシステム »

octobre 2017
dim. lun. mar. mer. jeu. ven. sam.
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31