「非AでもB」という実例の存在は「AならばB」という命題の反証たり得ない(経済学ではどうだか知らないけど)
池田信夫さんが、藤末健三参議委員議員の議論に対し、文句を付けているようです。
例えば、池田さんは次のように述べます。
彼が「株主保護が行き過ぎている」証拠としてあげるのが「配当性向が高い」という話ですが、これは株主保護とは関係ない。たとえばマイクロソフトは、創業以来28年間、配当しなかった。マイクロソフトは「株主を保護しない企業」なのでしょうか?
これが言いがかりに近い話であることは誰の目にも明らかでしょう。「甲という事実がある以上乙という事実がある蓋然性が高い」という推論は、「甲ではないが乙であるものがある」という事実によっては覆されないということは、少なくとも法学系の人間の間ではよく知らています(例えば、心臓をナイフのようなもので一突きされた死体のそばで血の滴り落ちているナイフを持っている人がいたらその人がその殺人の犯人である蓋然性が高いと推論されますが、そこで、猟銃を使って殺人を犯した人物の名前を出して「◯◯は血だらけのナイフなんか持っていなかった。では◯◯は殺人犯ではないというのか」など言って上記推論を否定しにかかる人がいたら、私達はむしろその人の精神状態を心配してあげることになるかもしれません。ただ、経済学では、通常の論理法則とは異なる論理法則が通用しているのかもしれませんが。)。
さらに池田さんは、次のように述べています。
配当性向というのは企業の投資戦略によって決まるもので、かつてのマイクロソフトのような成長期の(投資の大きい)企業では小さく、成熟企業では大きいのです。藤末氏は、一貫して労働分配率と配当性向を混同しています。労働分配率は賃金総額/GDPであり、配当性向は配当/利益。配当を減らしても未配当利益が増えるだけで、賃金は増えない。
特定の一企業についてであればそのようなことが言えるかもしれませんが、藤末議員はそのような話をしていません。藤末議員が引用しているグラフは東証一部上場企業全体についての配当性向の、平成18年度から平成20年度にかけてのデータに関するものです。東証一部上場企業というのはその殆どが成熟した企業からなりますので、平成18年から平成20年という短い期間のうちに全体としての傾向として「成長期から成熟期へ」移行したと考えることはできません。従って、ここでの配当性向の急上昇を、「成長期の(投資の大きい)企業では小さく、成熟企業では大きい」という一般論で説明することは困難です。
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