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14/02/2010

イレギュラーな事態に目をつぶることが許されない医師と弁護士の仕事は経済学者の仕事ほど単純ではない。

 池田信夫さんが次のようにつぶやいています。

医師や弁護士の所得が高いのは労働生産性と関係なく、免許によるquasi-rentだから、こういう定型的な業務に偏差値の高い人がつくのは社会的な浪費。

 池田さんはどういう人生を歩んだ結果、医師や弁護士の業務が定型的だという認識に至ったのか興味があります。

 実際には、医師や弁護士のように個別の案件に一つ一つ対処していかなければならない業務の場合、個々の案件の違いを見抜いてこれに対応させ、また、しばしば生ずるイレギュラーな事態にもその都度適切に対処していかなければなりません。それに、弁護士の場合、様々な手がかりを集めて相手の嘘を見抜いてそれを裁判官等の判断権者にアピールしていかなければいけません。そのような対処を適切に行わなければ、医師の場合は最悪の場合患者が死亡することになりますし、弁護士の場合は本来依頼者が負わなくともよい負担を背負い込まされることになります。この点、モデルを用いた単純な思考で事が足り、不都合な現実には目をつぶることが許される経済学者とは業務の質が異なるのです。

 だから、多くの国や社会において、医師と弁護士についてはその質を確保するための工夫が凝らされてきたのです。

 もちろん、そのための手法には国や社会、時代によって様々なバリエーションがあります。ただ、従前日本が採用してきた参入規制と報酬の上限規制の組み合わせというのは、そのための手段としては相当安上がりだったことは事実です(参入規制が緩やかな米国だと、弁護士費用のために、あのマイケル・ジャクソンですら財産を使い果たすほどの報酬を弁護士に支払っているわけです。)。参入規制を緩和しつつ、報酬の上限規制を維持することが可能かというとなかなか難しいようには思います。弁護士にしろ医師にしろ、報酬の上限規制が撤廃され、交渉次第でいくらでも報酬をとってよいということになれば、現状よりは価格帯を引き上げることができるように思われます(相見積もりを取っている余裕が無い場合が多いですから。)。実際、隣接業者等が非弁行為で逮捕された例などを報道で見ていますと、弁護士の感覚より、実際に取っている報酬水準が高いのです。上限規制がなくなれば、私達弁護士も、非弁業者並みの報酬を請求してよいということになります。

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