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27/02/2010

「迷信」なんかではない。

 アゴラに「『需給ギャップ35兆円』という迷信」というコラムが掲載されています。

 このタイトルだけを見ると、巷では需給ギャップが35兆円もあると広く信じられているが実際にはそうではないのだという趣旨の文章なのかなと思ってしまいがちですが、本文を読むと、「需給ギャップ35兆円」という見解が正しいのか正しくないのかについての言及はありません。需給ギャップがあることを前提に、何をすべきかということを論じているに過ぎません。

 「何をすべきか」という点についても、イケていないように思われてなりません。

リフレ派は、まず需給ギャップを埋めてから構造改革をすればよいというが、なぜ「まず」なのか。需給ギャップが埋まるまで、生産性を引き上げる改革はできないのか。需給ギャップを埋めることは経済運営の唯一の問題でもなく、最優先の問題でもない。安定化政策と成長戦略は両方ともやらなければならないのだ。

とのことなのですが、普通に考えれば、需給ギャップを放置したまま労働生産性を向上させれば、(生産量が増えるため)過剰在庫が生ずるか、または(生産量を維持するのであれば労働力が削減されますから)失業率が上昇します。

だから突き詰めれば、問題はどういう政策の効果が大きいかである。デフレを止めるだけなら財政政策がベストだが、財政危機に瀕している日本でこれ以上バラマキ福祉をやったら、国債が暴落して破滅的な事態をまねく。他方、企業が貯蓄超過になっている(金を貸している)日本では、借り入れの金利やマネーストックを操作する金融政策の効果はほとんどない。したがって有効な経済政策は、リアルな生産性を高めて投資を促進する規制改革しか残されていない。

とも述べられていますが、大きな需給ギャップが存在している環境下にあって、「リアルな生産性を高めて投資を促進する規制改革」にどのような効果があるのかを述べなければ、そのような「規制改革しか残されていない」といいうる程に他の政策と比べて効果が大きいか否かがわかりません。

 「企業が貯蓄超過になっている」という状況からは、需要が低下している現在投資をして生産性を高めるインセンティブが企業に乏しいことが看取できるのであり、従って、需要を高めることこそが投資のインセンティブを高めることにつながることは容易に推知できるように思われます。そして、そのためには、「自社のみが給与水準を低下させ製品価格を引き下げる分には市場において優位に立てるが、みんなが一斉にそれを行うと、市場自体が縮小してしまい、却って利益を損ねてしまう」という合成の誤謬を脱することが必要であり、賃金水準を高める方向での労働規制の強化が必要になってくるように思います。

 このレベルの記事は編集レベルで落とせばいいのにとも思いましたが、その筆者が池田信夫編集長自身ではそういうわけにはいきませんね。

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