年寄名跡の襲名を日本国籍を有する者に限ることと労働基準法第3条
財団法人日本相撲協会寄附行為施行細則第48条第3号は、
年寄名跡の襲名は、日本国籍を有する者に限ることとする。
との規定があります。
年寄は、「理事長の指示に従い、協会事業の実施にあたる」(第40条)とされており、給与が支給されている(第74条)ことを考えると、年寄は、日本相撲協会との関係では「労働者」であるといえそうです。すると。年寄名跡の襲名を日本国籍を有する者に限定した第48条第3号は、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と規定する労働基準法第3条または日本国憲法第14条に反しないかが問題となります(なお、労働基準法第3条の「労働条件」に「昇進・昇格等」が含まれることについては、大阪地判平成17年3月28日判タ1189号98頁等の裁判例があり、最判平成17年1月26日民集59巻1号128頁もそのことを前提としているというべきでしょう。)。
もちろん、上記最判平成17年1月26日においては、「公権力行使等地方公務員の職務の遂行は,住民の権利義務や法的地位の内容を定め,あるいはこれらに事実上大きな影響を及ぼすなど,住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものである。それゆえ,国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条,15条1項参照)に照らし,原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり,我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきであ」り、「普通地方公共団体が,公務員制度を構築するに当たって,公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも,その判断により行うことができるものというべきである」として、「普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり,上記の措置は,労働基準法3条にも,憲法14条1項にも違反するものではない」と解したわけですが、日本相撲協会の「年寄」は、公権力を行使するような存在ではありませんので、国民主権の原理とはとりあえず何の関係もありません。すると、年寄名跡の襲名を日本国籍保有者に限定する合理的な理由はなさそうに見えます。
朝青龍の場合、「その引退に際し、力士名のまま五年間年寄としての資格を与えることができる」横綱という地位にあったので、上記細則第48条第3号の違法性を争いやすい立場にいるので、是非とも法廷闘争をしていただきたいものだと思います(他の外国人横綱・大関は、早々に日本人女性を妻としており、引退前に帰化することでこの規定をクリアするつもりでいそうなので、堂々とモンゴル人を妻とした朝青龍には大いに期待しています。そのあたりが、協会から嫌われた理由なのかもしれませんが。)。
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