中高年は逃げ切ったのか。
城繁幸さんが次のように述べています。
賃金カーブの低下を指して「中高年も賃下げされている」と屁理屈を述べる労働組合関係者がたまにいるが、中高年は賃下げされたのではなく逃げ切ったというのが正しい。90年頃、「若い間は辛抱辛抱」と言い聞かせて頑張った元若者は、20年近く経って、かつての上司・先輩より3割以上も給料が安い結果に終わったということだ。
果たしてそうでしょうか。
賃金センサスの平成10年版と平成20年版を比べてみましょう。
全ての性別・学歴を総合した30〜34歳の賃金労働者の平均年収は、平成10年度は約492万円、平成20年は約446万円ということで、確かに下がってはいますが、その下落幅は約9パーセントです。大卒男子(ただし、平成20年度の賃金センサスでは「大卒・大学院卒」と一括して表示されています。以下同じ。)に限定しても、平成10年度は約599万だったのが約551万円ということで、確かに下がっていますが、その下落幅は約7パーセントです。
では、中高年は逃げ切ったのかを見てみましょう。大卒男子50〜54歳の平均賃金は平成10年度が1011万円だったのが平成20年度は約867万円ということで、その下落幅は、約14パーセントです。大卒男子55〜59歳の平均賃金は、平成10年度が約1012万円だったのが平成20年度は約844万円ということで、その下落幅は約17パーセントです。大卒男子60〜64歳の平均賃金は、平成10年度が約708万円だったのが平成20年度は約638万円ということで、その下落幅は約10パーセントです。
城さんのエントリーからリンクされている東京新聞の記事に掲載されているグラフを見ても、1989〜90年の数値と、2007〜08年の数値との差がもっとも開いているのは、40代後半から50代前半に掛けてなのですから、どこをどう見たら、「中高年は逃げ切った」という結論を導けるのかは不明です。
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Voici les sites qui parlent de: 中高年は逃げ切ったのか。:
» 若者に媚びるお笑いダイヤモンド [非国民通信]
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