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11/03/2010

ニュータイプは生まれない

 昨日の日弁連会長選挙を受けて、日経新聞が「内向きの日弁連では困る」という社説を公表しています。

 弁護士が地域にいない司法過疎の問題や、お金がない人の民事訴訟や刑事弁護を引き受ける弁護士が少ない問題などを解消してからでなければ、弁護士の増員反対の訴えは、国民の目には、高い収入を失いたくない特権的職業集団のエゴとしか映らないだろう。

とのことですが、司法改革問題になるとデマ満載の日経新聞らしさが良く現れています。

 宇都宮先生の公約は、司法試験合格者数を1500人とするというものですから、判事・検事に200人程度採用していただけるとして、1300人程度の新人弁護士が新たに生まれることになります。日弁連からの退会者(死亡者を含む。)は、毎月の「自由と正義」に掲載されますが、毎月100人以上退会しているとかそういう状態にはない(意識して数えていませんが、毎月10〜20名くらいでしょうか。)ので、宇都宮先生のプランでも、弁護士の人数は着実に増員されます。従って、宇都宮先生の訴えが「弁護士の増員反対の訴え」であるかのように摘示する上記社説の言い回しは、悪質なデマだということになります。

 日弁連の会員数は29000人弱ですから、1300人の新人会員というのは、全体の約4.5%にあたります。それだけの新人をなお引き受けますよというのが宇都宮案です。従業員数約3500人の日経新聞社において毎年約130人の新入社員を採用するのに匹敵します。「高い収入を失いたくない特権的職業集団」ではない日経新聞社におかれましては、是非とも大学新卒者を130人、いや260人採用していただけると、大学教員としてはうれしいです。

 また、「お金がない人の民事訴訟や刑事弁護を引き受ける弁護士が少ない問題などを解消してからでなければ」云々という点についてですが、これは、「弁護士を増員していけば、お金がない人の民事訴訟や刑事弁護を引き受ける弁護士が必要なだけ現れる」ということが経験則上成り立つということが前提となっています。しかし、どのような因果の流れを経由するとそのようになるのか私にはそのメカニズムが分かりません。

 日経新聞としては、スペースコロニー間の戦争が激化する中でアムロ・レイのような「ニュータイプ」が出現したのと同様に、弁護士数の大幅増員による弁護士間の競争が激化する中でリアルに霞を食べて生きることができる「ニュータイプ」が出現するだろうとお考えなのかもしれません。しかし、前者がアニメ上でのお話に過ぎないのと同様、後者もおとぎ話の世界です。世界的には、「お金がない人の民事支障や刑事弁護を引き受ける弁護士が少ない問題」の解消は、法律扶助予算を増大することによって行うのが通常です。日本の場合、法律扶助事件を引き受ける弁護士をいくら増やしても、法律扶助予算自身が途中で底をついてしまう体たらくです。とりあえず、3500人の日経新聞社社員が一人100万円ずつ法テラスに寄付していただければ、昨年開いた穴が解消できます。日経新聞社の平均年収は約1300万円ですから、年間100万円くらい寄付しても、なお高収入を維持できます。「「お金がない人の民事訴訟や刑事弁護を引き受ける弁護士が少ない問題」に心を痛めている日経新聞社におかれましては、これを解消するために、他力本願ではなく、積極的な寄与をしていただければ幸いです。

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