反・「返還ビジネス」というジャーナリストのビジネス
司法改革に関する提案の多くは、弁護士に対する嫉妬や憎悪に突き動かされたものであり、それゆえに社会により大きな歪みを生じさせることを躊躇しないものとなりがちです。
そのような提案の一つが、伊藤博敏というジャーナリストによる「「過払い金」に続く「返還ビジネス」を模索する弁護士業界」という記事です。
この記事の結論は、
弁護士のための「返還ビジネス」の急増をこのまま許していいのか――そんな論議をすべき時にきている。
というものです。では、伊藤氏が急増を許すべきでないと考えている「弁護士のための『返還ビジネス』」とは何かというと、上記記事の本文を読む限り、過払い利息の返還や、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害する条項に基づき支払いを余儀なくされた金銭の返還、未払い残業代の支払い等が義務者により任意になされない場合に、代理人に就任し訴訟内外の行為を行うことによりその返還・支払がなされるようにし、その対価として、返還・支払いされた金員の一部を報酬として受領する弁護士のビジネスをいうようです。
そのような「返還ビジネス」の急増を許さない方法として2つの方法があります。ひとつは、警察的規制を強化し、上記のような不法の利益を事業者が自分の懐に入れたまま本来の権利者に任意に返還しないという状況の存在を許さないというものです。もうひとつは、弁護士が権利者の代理人に就任することで上記の不法の利益が本来の権利者に返還されることを妨害するという方法です。後者には、実体法を改正して上記利益を合法的なものにしてしまうという方法と、上記返還等を実現するのに寄与した弁護士の報酬を制限することで弁護士がプロボノ枠を超えてこれに従事することがないように仕向けるというものです。
伊藤氏は、
過払い金返還請求がもたらしたのは、商工ローンのロプロ(旧日栄)、SFCG(旧商工ファンド)といった老舗の倒産、あるいは消費者金融大手四社の一角のアイフルが私的整理に入るなど、小口無担保金融モデルの破たんだった。20万人近い雇用を抱える業界は揺らぎ、多くのノンバンク社員は職を失った。社会的損失は大きい。と述べていますので、「返還ビジネス」の急増を許さない方法として、「不法の利益が本来の権利者に返還されること」を妨害すべきと提唱されているように見受けられます。これを未払い残業代に当てはめると、「返還ビジネス」の急増を許さないために、労働者が未払い残業代を企業に請求することを法的に制限せよということになっていくのでしょう。
それは、「『返還ビジネス』で儲けている憎き弁護士どもをやっつける」代償としてはあまりに大きすぎるのではないかと思ってしまいます。
なお、伊藤氏は、この記事の冒頭で、
弁護士業界に、「返還ビジネス」という新しいジャンルが誕生した。
と述べているのですが、代理人に就任して訴訟内外の活動をすることにより、本来の権利者に任意に返還されない金員が返還されるようにすることで対価を得るという業務は、弁護士としては古典的なものの一つです。しかし、某知事等が高利貸しのためにそのような業務に従事して相応の報酬を得ていたときにはその種の「返還ビジネス」を漫然と放任していたのに、逆に、高利貸しが返還請求を受ける立場に転じてしまったら、それを「弁護士のためのビジネス」と位置づけて嫉妬心を煽ることで、「弁護士のための「返還ビジネス」の急増をこのまま許していいのか」などと呼びかけてみる。
とても、人間らしくてわかりやすい人です。
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