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novembre 2010

21/11/2010

プロバイダ責任制限法検証WGへのメッセージ

 総務省が「プロバイダ責任制限法検証WG」を開いているようです。

 ただ、「プロバイダ責任制限法の現状」という資料の「6 今後の検討課題(案)」を見ると、「プロバイダ責任制限法を検証するにあたり、以下の点について議論すべきではないか。」としているのが、

  • 平成13年のプロバイダ責任制限法制定時からインターネット環境、情報通信技術等について、同法の改正を要するような変化があったか。

  • プロバイダ責任制限法の円滑な運用のため、業界団体や権利団体等から成る「協議会」において作成されている実務上の行動指針となる「ガイドライン」 の運用実態について、どのような状況になっているか。

  • 諸外国のプロバイダ責任に係る法制度について、どのような状況になっているか。

となっている点でだいぶがっかりです。現行プロバイダ責任制限法の、被害者側から見た欠陥を直視して、これを改善しようという意図は全くないように見えます。

 「プロバイダ責任制限法の検証に関して考えられる個別の論点(案)」という資料を見ると、この危惧はよりいっそう強くなります。

 そこで、被害者からしばしば相談を受け、また、被害者のために様々な活動をしている実務家としての視点として、現行プロバイダ責任制限法の問題点をざっと列挙してみることとしましょう。


  •  第3条関連
    •  役務提供者自体の氏名・住所等がわからず、または、削除要求する窓口が明らかではない場合が多い→削除要求する窓口の設置を義務づける必要

    •  フォーム形式でしか削除要求を受け付けていない場合が多い→原則電話窓口の設置を義務づける必要

    •  特定電気通信設備が外国に設置されている場合が多い→日本国民または日本在住者が被害者である場合、日本の裁判所が裁判管轄を有することを明示する必要

    •  広告等営業行為のみを行い、特定電気通信設備の設置・管理は別会社(外国会社である本社が行う場合を含む。)に行わせている場合が少なからずある→かかる事業者(ヤドカリ事業者)にも連帯責任を負わせる必要

    •  名誉毀損やセンシティブ情報の開示、犯罪煽動等について、迅速に削除する必要があるのに、自分たちには法的な判断ができないとして任意の削除に応じない例がある→法律専門家によるADRを設置する必要

    •  特定人につき特定の内容の権利侵害情報が反復継続的に発信され続けることがしばしばある→特定人と特定のキーワードを組み合わせた情報のフィルタリングを行う義務の必要

    •  様々な理由で第4条の発信者情報開示を行わない役務提供者が後を絶たず、その場合被害者は裁判を受ける権利が事実上奪われる→発信者情報開示を行わない場合には第3条の免責を受けられないようにする必要


  • 第4条関係
    •  アクセスプロバイダと独立したCGMサービスに権利侵害情報が投稿される通常ケースでは、2段階以上の発信者情報開示請求が必要→IPアドレスおよび発信時間については、原則即時開示を義務づける必要

    •  特定電気通信設備が外国に設置されている場合が多い→日本国民または日本在住者が被害者である場合、日本の裁判所が裁判管轄を有することを明示する必要


    •  特定電気通信設備が被害者の住所からみて遠隔地に設置されている場合が多い→被害者の住所地を管轄する裁判所に裁判管轄を置く必要


    •  広告等営業行為のみを行い、特定電気通信設備の設置・管理は別会社(外国会社である本社が行う場合を含む。)に行わせている場合が少なからずある→かかる事業者(ヤドカリ事業者)にも連帯責任を負わせる必要

    •  CGMサービス事業者からIPアドレスの開示を受けたころにはアクセスプロバイダがアクセスログを廃棄してしまっている場合が多い→アクセスプロバイダにアクセスログ保存を要請する義務をCGMサービス事業者に負わせ、この要請に応ずる義務をアクセスプロバイダに負わせる必要

    •  プロキシサーバを使用して権利侵害情報を発信する場合が多い→ID、パスワード等により発信者の氏名。住所等を把握できる場合を除き、プロキシサーバからのアクセスを排除する義務を負わせる必要

    •  名誉毀損投稿について発信者情報開示請求を行った場合、真実性の抗弁が成立しないことの証明を求められるが、特に発信者側がいかなる資料に基づき摘示事実が真実であると信じたかを示すことがない場合、反証が困難な場合が少なくない→違法性阻却事由の証明・疎明までは必要でないことを明示する必要


 

20/11/2010

新聞社は新聞広告を出さない修習生には冷たい

 日経新聞の論説委員様は、司法修習生の給費制が1年維持されることにお冠のようです。

 給費制には年間約100億円の国費が要る。同じ司法予算で、資力のない人を援助する民事法律扶助事業に今年度支出した87億円よりも大きい額だ。最高裁によると、新修習生の約15%は貸与を申し込んでいない。修習中の生活を自分でまかなえる人が結構いるのではないか。経済的に余裕のある人たちにまでお金を出すのは、おかしい。

 厳しい財政下、給費制復活に動く各党議員は限られた予算の使い方をもっと真剣に考えてもらいたい。


 まず、司法修習生は約2100人とのことなので、年収300万円として、必要な国費は63億円ではないかという気がします。まあ、10億の位を四捨五入すると、約100億円とはなりますが。で、その額が民事法律扶助予算と比べて大きいからけしからんという論理はアクロバティックに過ぎます。若手法曹が多額の借金を抱えていたら、少し食らう予算を増やしたところで、法律扶助事件などできなくなるのですが(そんなことやっていると借金で首が回らなくなるという意味で。)。そういう意味では、「法律扶助を活用して広く国民が法律サービスを受けられる」ようにすることを目指すのであれば、「給費制を維持しつつ、法律扶助予算も拡大する」のがベストです(財源ですか?法科大学院制度を廃止すればOK!。まあ、法科大学院からの広告費を当てにしている新聞社には飲めない話かもしれませんが。)。

 さらに、「修習中の生活を自分でまかなえる人が結構いるのではないか」っていわれても、1年分の生活費を法科大学院在学中、あるいは、司法試験受験期間中のアルバイトで貯蓄するというのは原則考えがたいので、貸与を受けずに生活できる人がいるとすれば、それは「親御さんから生活費を出してもらえる人」に限られるでしょう?そんなごく一部の恵まれた人(って感覚が日経新聞の論説委員にはたぶんないのでしょうね。20代後半を過ぎた子どもの生活費を丸抱えするなんて何の苦にもならない特権階級に囲まれて生きているので。)にあわせて制度設計するのって、間違っていると思わないですかね。

 司法制度改革の狙いは社会に法の支配を行き渡らせることにあり、法曹人口の劇的拡大はこの目的を実現するのに必要な条件だ。給費制が復活すれば、計画通りに増えていない司法試験合格者の数が、財政の要請で頭打ちになる恐れが生じる。

 法曹人口を劇的に拡大したければ、新規法曹になろうという人たちに過大な経済的負担をかけるべきではない、というのが普通の考えなのではないかと思うのですけどね。ハイコスト、ローリターンな仕事に優秀な人材は集まらない、っていう程度の当たり前の話を理解していない人たちが「経済」を全面に押し出す新聞社で論説委員をやっていられるって、いいなあ。

11/11/2010

最高裁がなぜ給費制の廃止にこだわったのか

 最高裁がなぜ給費制の廃止にこだわったのかについては、いろいろな意見が出ているようです。ただ、どれも的を射ていないように思います。

 最高裁がなぜ貸与の際に2名の保証人を要求したのか、なぜ地元での修習を希望する地方出身者を縁もゆかりもない地域に配点するのかを考えれば、全く別の答えが出てくるんじゃないかという気がします。

 給費制廃止に反対する人たちは、経済的にめぐまれない階層(階級)の出身者が法律家になる道を狭められることは不合理だということを問題視するわけですが、逆に言えば、「経済的にめぐまれない階層(階級)の出身者が法律家になる道を狭め」たいという人々にとっては給費制の廃止というのはまさに合理的だということになります。

 「苦労しらずのお坊ちゃんやお嬢ちゃんばかり」の集団において、「経済的にめぐまれない階層(階級)の出身者」というのは異質な存在であり、事務官や書記官などの「使用人」として存在するのはかまわないけど、そういう人たちが自分たちと対等の立場になるのは耐え難いということは、想像に難くありません。法科大学院制度を導入し、修習期間中給費制度を廃止するなどして、法曹資格を得るために必要なコストをどんどん上昇させていけば、そういう異質な人々の新規参入を排除できるわけです。

04/11/2010

カジノ特区に反対する理由

 大西宏さんが「なぜカジノ特区に反対なのか理由がわからない」というエントリーをアップロードしています。

 私も「カジノ特区」には反対です。

 「国民の射幸心を煽り、勤労の美風を損い、国民経済の影響を及ぼす」が故に賭博行為を刑罰規定を持って禁止するというのが今の時代に合わないというのであれば、全国一律で賭博行為を合法化すべきだからです。他方、賭博罪の存在価値は今なお薄れていないということであれば、「特区」を作ってそこでのみ賭博を合法化する合理的な理由はありません。すなわち、特定の地域でのみ賭博を合法化するというのは理屈に合致していないのです。

 もちろん、賭博サービス業は歴史的に暴力団の資金源となりがちですし、また、インチキも横行しがちですから、認可制等を採用した上で、運営の透明性を強化する等の法規制は必要だと思います。しかし、それは、特定の地域のみをえこひいきする「特区」制度を作ってよいという理由にはならないように思われます。

 「カジノ特区」の提唱者が予定しているのは、多くの場合、「カジノ特区」の住民のみが賭博を許されるというたぐいのものではなく、他の地域の居住者等が「カジノ特区」にて開設されている賭博場で賭博をすることを合法化するというたぐいのものです。すなわち、特定の地域が他の地域からお金を集めるために、他地域の住民の射幸心を煽り、勤労の美風を損い、他地域の経済に影響を及ぼすことを辞さじという、いわば、たいそう身勝手な発想に基づくものといえます。

 そんな身勝手な構想、反対されて当然ではないでしょうか?


PS

 トラックバックを送ってみましたが、私のブログからアゴラにトラックバックを貼ることはできるでしょうか?

03/11/2010

だから困るんだ。

 Chikirinさんが「本の感想)日弁連ってそうなんだ!」というエントリーで、次のように述べています。

博士号をとろうという人や法律家にとって、「事実や情報を集めて分析し、自分の頭で考えて独自の仮説をたて、それを検証する」のが、基本プロセスのはず。

そういうプロフェッショナルを目指す人たちが、「自分が就職できないのは制度が悪い」と、まるでロスジェネ派遣期間工の人たちと同じことを言うってのは、どうなんだろうね。

ロースクールや博士課程の学費、奨学金の状況、就職状況なんてちょっと調べれば最初からわかるはず。事前に現役の博士号課程にいる先輩や弁護士の先輩に意見を聞けば、新たな制度がどう見られているかだってわかったはずだよね。それでもチャレンジしたのは自分なりに考えた上で「やれる」という仮説があったからなんでしょ。


 いや、だからこそ困るのです。

 事実や情報を集めて分析し自分の頭で考えてしまうと、さらにいえば、ロースクールの学費や奨学金の状況、就職状況をちょっとしらべ、事前に弁護士の意見を聞いたりしてしまうと、一般家庭の子どもは、本人が相当優秀でも、とてもではないが法律家を目指す気にならないという制度になってしまったから、困ってしまっているのです。

 そういう意味では、法科大学院制度自体が困りものなんだけど、さらに修習期間中の給費制が廃止されると、「合理的に考えるとチャレンジすべきでない人」の枠が拡大してしまうのが、困りものなのです。

 なんだかんだいって給費制は延長されるはずだってことに賭けて賭けに破れた輩は自己責任だぜ、ざまあみろ、って話ですめばいいんだけど、それでは、先人のそのような惨めな姿を見た次の世代が法曹に新規参入してくれなくなってしまうのです。

 ビジネススクールだって同じじゃん、っていわれちゃうかもしれないけど(っていうか、現にいわれているようだけど)、欧米のビジネススクールに留学するって、日本ではそもそも「優秀な若者が目指すコース」ではなかったし、MBA持ちが大して珍重されず、MBA持ちも庶民なんぞ相手にしない日本では、優秀な若者がそこに目指す必要なかったわけではないですか。

 でも、弁護士や裁判官や検察官に、お馬鹿なぼんぼんしかいないって社会って、結構悲惨です。だって、それは、やってもいない犯罪で起訴されたり有罪とされたりする危険が高まるということだし、本来あるべき権利が認められず、理屈に合わない義務を負担させられる危険が高まるということですから。

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