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mai 2011

11/05/2011

利害関係者であろうと、選挙区割りを具体的に変えるのは国会議員なんだ

 一人一票実現国民会議という団体があります。近々総選挙が予定され、そこでは自民党が敗北し下野することになると予想されていた2009年7月に発足し、果たして、自民党が敗北することとなった2009年8月の総選挙について、無効確認請求訴訟をいろいろなところで提訴していた団体です。
 そういう訴訟を提起することの意義を私は十分に認める者です。でも、私は、現在の一人一票実現国民会議の活動方針には大きな疑問を持っています。上記無効確認請求訴訟で現在の公職選挙法は違憲状態にあるとの判決が確定したわけですから、今なすべきことは、これを受けて、与野党に働きかけ、早期に議員定数の不均衡を是正する公職選挙法の改正を目指すことなのだと思います。しかし、どうもそのようなことは行われていないようです。今やっているのは、一人一票を認めない最高裁判事に、国民審査の際に不信任の「X印」を投票することを働きかける運動のようです。
 衆議院の解散がなければ次回の国民審査は2年後。そのとき同時に行われる総選挙について、無効確認訴訟を提起して認容されるのは、そのまた数年後。で、違憲無効が確認されたとして、最高裁が、その適切と考える選挙区割りを判決の中で具体的に判示するとは考えがたく、違憲無効確認判決が確定したとして、その先は暗中模索。実に迂遠な話です。
 で、先日、上記運動の中心人物の一人である伊藤真先生に「むしろ、端的に一票の勝ちの不均衡が小さい選挙区割りを実現するように与野党に働きかける時期なのではないですか?」とおたずねしたところ残念ながら政治家は利害関係者です。 とのご回答をいただきました。
 これに対して、「ということは、最高裁が「正しい選挙制度」を法創造することを期待されているのですか?実際の選挙区割りは国会以外ではできないと思っているのですが」と再質問させていただいたところ、最高が1人1票を要請することによって追い込まれることが必要ということです。 これまで国会は最高に従っています。とのご回答をいただきました。
 しかし、それならば、現在の選挙区割りは違憲状態にあるとの判決が最高裁で確定しており、現在の定数のまま解散総選挙した場合には再び違憲状態にあると判示されることが必定であり、場合によってはさらなる判断が最高裁によってなされるおそれが顕在化しているわけですから、ある意味「追い込まれている」といえます。したがって、今は、どうせ公職選挙法を改正するのであればなるべき抜本的な改正を行うように働きかけを行う時期であるように思えてならないのです。そして、一人一票実現国民会議の発起人・賛同者を見ていると、荒井寿光さんだとか、奥谷禮子さんだとか、角川歴彦さんだとか、宮内義彦さんだとか、自公連立政権時代にいろいろな政府のブレーンを務めてきた人たちが結構おられるのですから、自公両党を説得する役割を担う能力を十分に持っているはずなのにです。

08/05/2011

原子力発電のコスト(更新)

 前回のエントリーに続けて、原子力発電のコストについて考えてみましょう。

 原子力発電と火力発電、ともにうまく動いている時のコストで比べたときには前者の方が有意に低い。これが、「原子力発電を停止して火力に切り替えた場合は、株主代表訴訟」論の前提となっているのだと思います。

 ただ、今回の福島第一原発の事故によって、原子炉で大きな事故が起こったときにどのくらいの規模の損害を発生させることになるのかということが何となくわかってきました(詳細はこれからですが)。また、そのような事故に発展する危険というのは、「想定される東海地震に十分対応できるよう防潮堤の設置など中長期の対策」を講じない場合には今まだ思っていたほど低くないのではないかと認識されるようになってきました。そうすると、想定される損害の大きさと事故の発生確率とを基準に算定される「あるべき保険料」は、現在原子力損害賠償責任保険契約に基づき支払っている保険料よりも相当高いものとなることが予想されます。

 もちろん、現行法では、「一工場若しくは一事業所当たり若しくは一原子力船当たり千二百億円」という原子力損害賠償法7条の「賠償措置額」の範囲でしか保険に入っておらず、低廉な保険料で済んでいます。それが可能なのは、地震等(「異常に巨大」なものに限定されません)により損害を加えた場合については、国と電力会社が原子力損害賠償補償契約を締結することにより補償することになっている(原子力損害賠償法10条)のに加え、賠償措置額を超える部分については、「原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする」(原子力損害賠償法16条)とされている(すなわち、賠償措置額を超える賠償に備えておく必要がないのです。)からです。その補償料の額(年額)は、「補償契約金額に補償損失の発生の見込み、補償契約に関する国の事務取扱費等を勘案して政令で定める料率を乗じて得た金額に相当する金額」(原子力損害賠償補償契約に関する法律6条)であり、その補償料率は「万分の三」(原子力損害賠償補償契約に関する法律施行令3条1項)です。すなわち、細かいことを捨象していってしまうと、政府は、3333年に1回しか地震等に起因する事故を起こさないという前提のもとで、低廉な補償料で原子力発電所のリスクを担保しているということができますし(しかし、それはさすがに擬制に過ぎます。)、「賠償措置額」を超える損害については、(後で求償されるかはともかく)いったんは政府任せにすることができることになっています。

 すなわち、現在の原子力発電の運用コストの低さというのは、「あるべき保険料」と実際の保険料+補償料の差額を国が負担することによって実現されているということができます。

 さらに、原子力発電の場合、これを廃炉するためのコストも問題となります。廃炉してしまうとそれは収益を生みませんので、廃炉に必要な費用は、この原子炉が稼働中に積み立てておくのが基本です(「廃炉」という後ろ向きの事業のために投資したり融資したりしてくれる民間資本って想定しがたいですので。)。

 したがって、この積立金相当額も、本来は原子力発電の運用コストの算定に斟酌されるべきものです。もちろん、これについては、いまさら運転を中止したからといって縮小されるわけではないので、いま原子炉を停止して火力発電に切り替えることによる損失の大きさを算定する上で斟酌すべきデータではないといえばいえなくはないのですが。

 いずれにせよ、中部電力が「想定される東海地震に十分対応できるよう防潮堤の設置など中長期の対策」を講ずるまでの間の原子炉の停止要請を断った場合、この補償料率を引き上げることで政府が対抗する可能性はあります。今回の大震災で、地震等に起因する事故により損害を与える危険が思いの外高いことを知ったにもかかわらず、その危険を任意に除去することを電力会社自身が拒んだということになるので、理論的にはそれは正当化されますし、補償料率は政令で決まっていますので、ねじれ国会を通さずに改訂できるのです。さらにいえば、政府は、今回福島第一原発の原子力事故で東京電力が負うこととなった賠償額を前提に、賠償措置額の大幅な引上げを行う法改正を国会に諮ることもできます。この法案は、野党自民党もにわかに反対しがたいように思います。

浜岡原発を止めたら株主代表訴訟?

 菅首相が中部電力に対し、「想定される東海地震に十分対応できるよう防潮堤の設置など中長期の対策」を実施するまで浜岡原子力発電所の全ての原子炉の運転停止を中部電力に対して要請した件が話題になっています。その中で、不思議な議論がネット上に広がっているようです。それは、「中部電力がこの要請を受けて浜岡原発を停止したら、中部電力の取締役は株主代表訴訟に耐えられない」という議論です。

 「想定される東海地震に十分対応できるよう防潮堤の設置など中長期の対策」が果たされるまでの間原子炉を運転停止させ、その間不足する電力を火力発電で補おうとすると、発電コストが上昇し、その分中部電力の利益が減るということのようです。

 しかし、中長期的な安全対策を果たすために生産設備の一部の運用を停止するということは企業活動の中ではしばしば行うことであって、その間売り上げが減ったり、大体設備での運用によってコストが上昇したりして、利益が減少したからといって、直ちに取締役に経営責任が発生するわけではありません。

 もちろん、一般の生産設備の場合、想定される災害等に備えた中長期の対策を行うことによって第三者に損害を加えた場合は企業が賠償責任を負う危険があるので、それを回避するために上記対策を講ずる(その間、運転を停止する)ことには経営上の合理性があるのに対し、原子力発電所の場合、想定される災害等に備えた中長期的な対策を講じようが講じまいが無過失責任を負う(原子力損害賠償法第3条)上に、大震災によって巨大な事故を発生させた場合には、政治家等に働きかけることにより、国に賠償の肩代わりをしてもらえるはずだということを考えたときに、原子力発電所について「想定される災害等に備えた中長期の対策」を講ずることは、将来の損害賠償の負担を軽減させることにもならないのだという判断をされているのかもしれません。

 しかし、大震災に起因するとはいえ原子炉が事故を起こせば長期にわたる操業の停止の他、復旧等のために多大な人や金をつぎ込まなければいけないわけで、「想定される災害等に備えた中長期の対策」を行えばその発生確率を減少させることができるのですから、「想定される災害等に備えた中長期の対策」は会社の経営に資するという側面を有しているともいえます。そのことを考えたときに、「想定される災害等に備えた中長期の対策」を直ちに行い、これが完了するまでの間、原子炉を一時停止し、よりコストの高い火力発電に切り替えることが、電力会社の経営者に与えられた裁量の範囲を逸脱した、違法な判断であるとは直ちにいえないように思います。

 もちろん、「株主代表訴訟に耐えられない」という方々は、(法的強制力のない)菅首相の要請に従って上記決定を行うことは許せないということが前提となっているわけですが、上記決定を行うに至る契機が、首相による法的強制力なき要請にあったということが、上記決定を違法とする方向に影響を与えるというのは、理解しがたいところです。

 この程度のことで株主代表訴訟で敗訴してしまうということになると、法的に強制しなければ、電力会社は自主的に原子力発電から撤退していくことも許されないし、下手をすると、原子力発電の比率を可能な限り高めようとすることが事実上義務づけられることになってしまいそうです(これを躊躇することはコスト高を放置し、会社の利益幅を縮小するのだという理屈付けも可能だからです。)。

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