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juillet 2011

18/07/2011

「原発事故の損害賠償に関する公正な処理を求める緊急提言」について

 「原発事故の損害賠償に関する公正な処理を求める緊急提言」なるものが提言されていたようです。

 政府の「原子力賠償支援機構法案」は撤回し、法治主義の原則に則った東京電力の処理プランを作り直すこと。といいつつ、具体的には、巨額の賠償債務によって債務超過が明らかになっている以上、東京電力は会社更生型の手続きに則り、事業再生と被害者への損害賠償を行うことと提言されているようですが、どうも「法治主義」という言葉の意味が我々が学んできたものと違うような気がします。

 巨額の債務超過状態にある企業が会社更生の申し立てをするかどうかは原則としてその会社の経営陣が決めることであり、例外的に、「当該株式会社の資本金の額の十分の一以上に当たる債権を有する債権者」または「当該株式会社の総株主の議決権の十分の一以上を有する株主」もまた更生申立てを行いうるに過ぎません。だから、政府が「当該株式会社の資本金の額の十分の一以上に当たる債権を有する債権者」または「当該株式会社の総株主の議決権の十分の一以上を有する株主」にならない限り、更生申立てを行うように政府が東京電力に要求すること自体がむしろ法治主義に反します。

 また、巨額の債務を負う企業がその債務を処理する方法として、営業用資産を売却して得た利益である程度まとまった金額の支払いを早期に行うか、営業活動の中で得た利益の中から定期的に弁済していくかは、当該企業とその債権者との協議の中で決まっていくことであって、本来国がとやかく言うことではありません。

 そして、今回の原発事故での被害者は、優先弁済権を有していないので、営業用資産の売却により支払い原資を確保する方式だと、債権のごく一部しか弁済を受けられない危険が高いといえます。で、債務者が営業用資産を売ってしまった場合には、それ以上の弁済を受けられなくなる可能性が高いので、その営業用資産を用いて営業を続けてもらうことにより着実に弁済が受けられるのであれば、そちらの方がむしろ望ましいということもあります。

 もちろん、原子力事故の被害者には長期分割を待つ余裕はないので、実際には、国庫から直接または特殊法人を通じて間接的に第三者弁済をした上で、その分を求償するということになるのでしょうが、その場合に、営業用資産を売却して代位弁済額の一部をまとめて弁償してもらってそれでおしまいというのが得策かというと難しいところです。電気料金の値上げによって東京電力が利益率を高め、そのことによって代位弁済額が中長期的に全額弁済されるというのであれば、そちらの方がましだという可能性もあります。

 上記提言では、

一般の企業であれば、重大な問題を引き起こし、巨額の損害賠償責任を負って、債務超過状態になれば、会社更生手続きによる破たん処理に進む。この場合、株主や、金融機関など債権者も責任負担を求められる。つまり、株主は株式価値滅失という形での責任負担、金融機関は債権カットを求められることになる。また、企業価値を最大化する観点で再生計画を策定して、そのもとで資産売却なども行い、賠償義務の履行のために充てられる。

とあるのですが、営業用資産を売却せず、むしろ、営業活動を継続することで得た収益で中長期的に巨額の損害賠償義務を履行していくこととした例としては、水俣病に関するチッソの例などがあるように思われてなりません。上記提言をされた方々は、東電に営業用資産を全部売却させて優先債権分を控除した残りを原発事故の被害者に賠償させた上で、それで足りない分を国が補償するとして、その補償した分を国がどう回収することを想定されているのか理解しがたいところです。

14/07/2011

超党派の貸金業法改正検討チームの提言

 河野太郎氏の公式ブログによれば、「超党派の貸金業法改正検討チームの提言を発表した」とのことです。

 利息制限法及び出資法の上限金利を見直し、より経済の実態にあった安定的なものにするとのことなのですが、その具体的な数値が、

例えばTIBOR+25%。

借り手の年収の三分の一という総量規制を撤廃する。

との内容です。どこが「経済の実態にあった安定的なもの」なのか全く意味不明です。「TIBOR」とは「Tokyo Inter-Bank Offered Rate」の略で、東京の有力銀行が銀行間取引をする際に提示する金利のことをいいます。2011年1月11日以降は、12ヶ月もので、ずっと0.47です。そのくらい低成長の今の日本で、借りたお金を1年で25%以上も増やすことは容易ではありません(25%増やしただけでは、全部利息に取られるだけで、その借主の1年間の活動は徒労に終わります。)。

 さらに、総量規制を撤廃することが同「経済の実態」に繋がるのか意味不明です。借り手の年収の半分にあたる金員を年率25%で借りてこれを3年で返還しようと思うと、月収の4分の1を元利金の支払いに充てる必要があります。これは簡単ではありません。続けて、

カウンセリング制度を強化するなど、返済困難者に対する真の救済制度を構築する。

とあるのですが、カウンセリングで返済困難者が救済できれば、多重債務者救済で誰もこんなに苦労しません。っていうか、カウンセリング制度でどう救済しようとしているのか、全く見えてきません。



 面白いのはここからです。「超党派の貸金業法改正検討チーム」の正体が垣間見えてきます。

 

過払い訴訟の代理人を務めた弁護士や認定司法書士800人のうち約700人が申告漏れを国税庁に指摘された(2009年6月)を踏まえ、

国税庁に引き続きの調査を要請する。

とのことです。申告漏れは取り締まられて然るべきだと思いますが、「超党派の貸金業法改正検討チーム」が提言することではありません。「過払い訴訟の代理人を務めた弁護士や認定司法書士」に対する恨みがそこには見え隠れします。

 

日弁連に適切な対策を要請し、その効果の検証、公表も求める。
改善なき場合は、監督できる仕組みを検討する。

と続きますが、個々の法律事務所において確定申告が適正になされるような適切な対策など日弁連が取り得るわけありませんし、それを「監督できる仕組み」なんて想定できません。日弁連が法律事務所の確定申告を代行せよとでもいいたいのでしょうか。

 

認定司法書士に関して、認定業務を厳格化すると共に、業務拡大を検討する。

とのことですが、「超党派の貸金業法改正検討チーム」がこのような提言をするとそれは「司法書士さん、貸金業者をいじめるのはやめてね。やめてくれたら、他の仕事をできるようにしてあげるからね」といっているだけのように見えてきます。

 さらに、

過払い利息の返還請求訴訟について、過払い金の返還は直接債務者に行うよう貸金業者に義務づける

という提言もなされています。これは、従前和解が成立した場合(判決確定後支払い方法について協議が整った場合を含む。)には、債務者が債権者側の弁護士の預り金口座にお金を送金するという運用が広く行われているところ、過払い利息の返還請求訴訟についてはこれを禁止するということを意味しています。このような運用は、債権者の銀行口座を債務者に知られることを回避するとともに、債権者側の弁護士が成功報酬の回収を確実にするという意味があって行われているわけですが、「超党派の貸金業法改正検討チーム」は、前者の要請を蔑ろにしてでも、債権者側の弁護士が成功報酬を回収できない危険を増やしたいということのようです。

 河野氏は、

貸金業法の改正により、小口金融市場に対する過剰な規制が行われるようになり、闇金が跋扈するようになった現状を反省し、健全な市場を形成していくための法改正が必要。

と仰るのですが、貸金業法改正により闇金が跋扈するようになったとする立法事実自体が大いに疑問ですし、上記提言が闇金対策に繋がるようにも思われません。

 河野氏は、

大手消費者金融の残高は、06年1月の8.3兆円から10年12月の2.9兆円に7割減。

成約率も同じ期間に55%から33%に低下した。

ことをお嘆きですが、消費者が消費者金融から高利の金を借りなくなったということはむしろ歓迎すべきことのように思われます(一時期、大手消費者金融のテレビ広告が、「見栄を張るための資金調達」の手段としての消費者金融の利用を誘引していたことは記憶に新しいところです。そのような不要不急の高利ローンの利用が減少していくことの何を憂う必要があるのでしょうか。)。

 市民法律相談の現場にいれば、クレジットカードや消費者ローンにまず手を出し、返せなくなって、徐々に高利貸しに手を出すようになっていき、ついには生活が破綻し、場合によっては犯罪に手を染めたり自殺したりという例が多かったこと、「過払い金返還業務に特化した一部の弁護士・司法書士」の宣伝活動のおかげで、近時はそこまで行かないうちに法律相談等に来てくれるためか、高利貸しに生われる相談者に遭遇する例が格段に減ったことを実感できるのではないかと思います。

 法律実務家が積み上げてきたことを、大手消費者金融の意向を受けた国会議員たちが立法で踏みにじる姿が近々見れそうな気がします。

06/07/2011

「プロバイダ責任制限法検証にかかる提言」に対するパブコメ

「利用者視点を踏まえたICTサービスにかかる諸問題に関する研究会 プロバイダ責任制限法検証にかかる提言」に関し、下記のとおり意見書を作成し、提出しました。

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 上記研究会の結論を要約すれば、匿名のネットユーザーにより執拗な誹謗中傷に晒されている被害者が救済を受けられずにいる原因を是正するつもりは一切ないということである。今救われていない被害者は、今後も救われるべきではないというものである。そしてそれは、総務省として、匿名の卑怯者に「嫌がらせをする権限」を提供する権限を日本のインターネットサービスに付与することで、これを発展させる途を選択することとしたということである。

 匿名の卑怯者たちから執拗な誹謗中傷を受けている被害者から多数の相談を受ける立場の弁護士として、このような総務省の方針には反対せざるを得ない。


 以下、具体的に述べる。


 報告書は、次のように述べる(27頁)。


////////////////

 この「権利侵害の明白性」の要件は、被害者の被害回復の必要性と、発信者のプライバシーや表現の自由の利益との調和の観点から規定されたものである。すなわち、被害者の被害回復の必要性が認められる一方で、発信者情報開示請求により開示される情報は、発信者のプライバシーに関わる事項であるところ、プライバシーは、いったん開示されると、原状に回復させることが不可能な性質のものであり、その取扱いには慎重さが当然に求められる。また、匿名表現の自由についても、その保障の程度はさておき、保障されることに疑問の余地はなく、可能な限り、萎縮効果を及ぼさないように配慮する必要がある。このような観点から「権利侵害の明白性」が要件として規定されたものである。

 そうすると、権利侵害が明白である場合にのみ、発信者情報の開示を認めることには必要性及び合理性があるといえ、発信者による権利侵害が明白でないのに、発信者のプライバシー等の利益が侵害されてもよいと考えることは相当ではない。

////////////////


 しかし、発信者のプライバシーや匿名表現の自由が一定の限度で保障されるとしても、それらの権利ないし自由は、被害者の裁判を受ける権利に絶対的に優越するものではなく、「権利侵害が明白である場合にのみ、発信者情報の開示を認めること」の必要性ないし合理性を導くものではない。立法論としては、発信者のプライバシー保護の要請と被害者の裁判を受ける権利の保護の要請とをどこで調和させるのかという問題であり、答えは1つではないからである。

 では、どこで調和させるべきであろうか。この点については、匿名の発信者に対し訴訟等の権利行使を行うことが許されるのはどのような場合か、という観点から考えるべきである。

 原告の側で被告の氏名・住所等を特定しなければならない現行民事訴訟法において、原告の氏名・住所等を特定するための情報収集手段はいくつもある。例えば、戸籍謄本や会社登記簿謄本の交付を受けたり、登録自動車の登録事項等証明書の交付を受けたりする場合である。いずれの場合も、情報主体の個人情報が開示されることとはなるが、上記書類等の開示を受けるにあたり、その情報主体による権利侵害が明白であることの証明を求められることはない。市町村役場にせよ法務局にせよ陸運局にせよ、その情報主体による権利侵害が明白か否かの判断をいちいち迫られても対応できないし、当該情報主体に対し訴訟等を提起したい権利者等から情報開示を求める訴訟をいちいち提起されるのも迷惑な話である。

 また、わが国では、訴えを提起する段階で、請求原因事実が存在すること及び抗弁事実が存在しないことを証明する義務を原告に負わせておらず、これらを証明する証拠が訴状に添付されていない場合に訴えを却下できるという法制度を採用していない。抗弁事実等被告が立証責任を負う事実についてそれが存在しないことを証明できなければ訴えの提起自体が許されないということでは、立証責任を被告側に負わせるように実体法を制定した意味がなくなってしまうので、当然である。更にいえば、原告が立証責任を負う事実についても、文書提出命令等の手続を用いて、訴訟手続の中で証拠を収集することが制度的に予定されているのであるから、訴え提起の段階でそれらの事実を証明するに十分な証拠が添付されていなくとも、そのことをもって訴えを却下することは適切ではない。

 さらにいえば、発信者はその発信者情報が開示されたとしても、訴訟においてその情報発信の正当性を証明していくことができるのに対して、被害者は発信者情報の開示を受けられなければ、損害賠償請求権や人格権侵害行為の差止請求権等の実体法上の権利を手続法的に行使する手段を完全に奪われるのである。したがって、基本的人権の擁護という観点からは、むしろ、発信者情報を広範に開示する方向で、発信者と被害者との人権の衝突を調和することこそが望ましいと言える(発信者のプライバシー保護は、発信者の氏名・住所に関する部分については広範に訴訟記録の閲覧・謄写制限を認める、発信者情報の目的外使用について制裁規定を設ける等の方法によることも可能である。)。

 そのように考えるならば、少なくとも、当該特定電気通信による権利侵害に関して当該発信者に対し訴えを提起する利益が開示請求者にあることが疎明された場合には、開示関係役務提供者は発信者情報を開示する義務を負うとすることこそが合理的であるというべきである。


 また、報告書は次のようにも述べる(39頁)。


//////////

プロバイダ等に通信履歴の保存義務を課すことは、現時点では、法律上も事実上も困難であり、プロバイダ等に対する通信履歴の保存義務については、これを肯定するだけの根拠に乏しいものと解さざるをえない。

/////////


 しかし、通信履歴が電気通信事業法上の「通信の秘密」に含まれるとしても、通信の秘密が侵害されるのはこれが電気通信事業者以外の者に入手されたときであって、電気通信事業者においてこれを保存すること自体は「通信の秘密」を何ら侵害するものではない(実際、電気通信事業者が経営上の判断で自主的に通信履歴を長期にわたり保存することは自由である。今日、電子通信事業者が自主的に通信履歴を保存する行為を電気通信事業法第4条違反とする見解は見当たらない。)。

 また、報告書は「情報漏えいの危険性があることから、その取扱いは極めて慎重に行われている状況」であるとする。しかし、通信履歴自体には発信者の氏名・住所等は記録されていないので、仮に通信履歴が漏えいしたとしてもそのことによる被害者それほど大きくはない(むしろISP等で情報漏えいが起きたときに問題となるのは利用者の登録情報であるが、これはISP等において当然のように保存されている。)。

 したがって、プロバイダに通信履歴の保存義務を課すことが法律上困難であるとは考えられない。

 また、昨今の記録媒体の大容量化、低価格化の元においては、通信履歴を保存するコストは大幅に下がっている。報告書においては「全インターネット利用者の通信履歴を保存しなければならないとした場合、中小零細のプロバイダ事業者はもちろんのこと、大手プロバイダ事業者においても、その利用者数(契約者数)を勘案すると、本来の業務を圧迫して、適切なサービスを提供することができなくなる可能性も否定できない」とあるが、例えば1000人以上の利用者を有するプロバイダ事業者において1ヶ月分の通信履歴を全部保存するのに1人あたりどの程度のコストがかかるのかすら報告書に明記されておらず、それでなぜ「本来の業務を圧迫して、適切なサービスを提供することができなくなる可能性も否定できない」といいうるのか疑問である。

 さらにいえば、電気通信役務提供事業は、今日、権利侵害情報の流布という一種の公害を一定の範囲内でまき散らす事業となっているのであるから、その公害の発生を未然に防ぎかつ被害者の救済を行うのに必要な範囲内で一定のコストを負担するのは当然のことであるとすらいうべきである。

 現行法では、自社の電気通信設備を違法行為に利用してもらうことを企図して、通信履歴を一切保存しないことを謳って顧客を集客することも合法であるし、そこまで極端でなくとも、1段階目の発信者情報開示請求により被害者が発信者のIPアドレスを入手するのに通常要する期間までに通信履歴を削除する運用にしてしまえば、そのISP等の電気通信設備を用いて匿名の陰に隠れた違法行為を繰り返す利用者が民事訴訟により法的な責任を負わされることを回避できることになってしまう。

 これでは、インターネットを利用した違法行為に関しては、被害者の裁判を受ける権利というのは絵に描いた餅に終わってしまうし、何をしても事実上法的な責任を負わされることはないという確信は、それ他のインターネット利用者による加害行為をエスカレートさせる効果を持つことは必定である(現に、そうなっている。)。

 したがって、1年程度の通信履歴保存義務を負わせる法改正こそが望まれているというべきである。


 なお、このような報告書を作成した委員の皆様、官僚の皆様におかれましては、インターネット上の匿名電子掲示板等において特定のターゲットが長期にわたり膨大かつ陰湿に誹謗中傷されているログデータをいくつも熟読していただきたい。そして、あなた方が出した結論は、こういう被害をこれからもいくつも生み出していくことに繋がるのだ、そして、被害者に絶望感を押しつけることに繋がるのだということを自覚し、今後、誹謗中傷に耐えかねて自殺する被害者等が現れたときには、自分たちが作成した報告書が、その自殺に大きく寄与したのだと自覚して今後の人生を歩んでいただきたい。そう願うものである。

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