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27/10/2013

谷垣大臣がかわいそう。

 法務省が政府提出法案として成立させようとしている、民法900条4号ただし書を削除する旨の法律案については、水間政憲さんというジャーナリストも反対されているようです。

 水間さんは次のように述べます。

まず、この法案の問題点は、本妻に子供がいることを前提にしていることです。

仮に本妻に子供がなく、財産はローンの残っている自宅だけと仮定した場合、夫の両親を介護している状態で、愛人の非嫡出子に財産の50%を与えることになりますので、間違いなく自宅を処分することになるでしょう。そして夫の両親を介護している本妻も非嫡出子と同じ50%を相続することになりますが、これはどのように法務官僚が言い訳しても公平ではありません。

 しかし、法定相続人が配偶者と非嫡出子1人のみの場合、民法900条4号ただし書を前提としても、法定相続分は配偶者が2分の1、非嫡出子が2分の1であって、結論は変わりません。同ただし書は、子が複数人いる場合の、子の相続分を具体的に分けるときの取り分比率に関する規定だからです。

 また、水間さんは、次のように述べます。

そもそも今回の非嫡出子の財産均等法案は、1970年代に土井たか子達が提出した「国籍法改悪法案」とリンクしている「国体解体4法案」の1つで、現在裁判になっている「戸籍差別撤廃」と、水面下で繋がっている三位一体法案なのです。

 谷垣法務大臣がかわいそうです。

 法務省はこれまで(民主・社民・国民連立政権下ですら)民法900条4号ただし書の廃止政策を推し進めてきませんでしたし、戸籍の記載内容から「長男」「長女」等の記載を廃止することまで今回の改正法に含めるという話は出ていません。素直に、「民法900条4号ただし書を違憲無効とする判決を最高裁が下したので、法務省は、民法の所管官庁として、違憲無効とされた部分の削除を行う法律案を作成した」というふうに受け取ってあげればいいのに、と思います。どうせ裁判所が違憲無効と判断することが明らかな条項はさっさと削除して、六法だけを見た人が誤解しないようにしてあげるって、中央官庁として当然の職務を全うしているだけかと思います。

 水間さんは、次のようにもおっしゃいます。

日本は、法治国家であり、愛人は非嫡出子と記載される覚悟の上で出産したのであり、戸籍から非嫡出子と嫡出子の記載が消えて、たんに「男」と「女」だけの記載になると。

 ジャーナリストを名乗りながらこの文章ってどうよ!とは思いますが、それはさておき、旧来的な法制度の下で予定されていた不利益が回避されるような法改正を行うことは法治国家であることと矛盾しませんし、裁判所が法令違憲審査権を有している国々においては、特定の人々に不利益を課す法制度を裁判所が違憲無効と判示することによりそれらの人々がその不利益を回避することになったとしても法治国家であることと矛盾しません。

 さらにいえば、非嫡出子は、戸籍上非嫡出子と記載されることを覚悟して生まれてきたわけではありません。

 また、水間さんは、次のようにも述べます。

今、国体破壊派法務官僚が通そうとしている「夫婦別姓」も立法化されたら、我が国は一夫多妻制国家になると同時に、社会主義革命の夢敗れた中央省庁に巣くう左翼は、「国籍法」や「戸籍法」「非嫡出子の2分1財産法」を解体し、「夫婦別姓」を実現したとき、数十年後に「国体」(伝統文化は)は、誰でも確認できる形で破壊されたことに気付くことでしょう。

 法務官僚が「夫婦別姓」を通そうとしているなんて初耳ですが、それはともかく、婚姻時の氏をどうするのかという問題と、1人の人が同時に配偶者としうる人の人数をどうするのかという問題は全く独立した問題であり、夫婦別姓制度を導入したとしても、重婚の場合には婚姻届を受け付けない仕組みが維持される限りにおいては、一夫多妻制にはなりません。

 さらにいえば、現在の家族法制は、基本的に昭和22年の家族法改正により形作られたものなので、もともと伝統文化に則ったものではありません。といいますか、家族法制って、時代によって結構変遷しているので、「これぞ伝統文化に則ったものだ」といえるような単一解はないのです(江戸時代の武家階層は基本的に「嫡子単独相続」制度であって、現在の相続制度とは異なっています。)。

 水間さんは、「国体が誰にでも確認できる形で破壊される」未来図として、つぎのような社会を思い浮かべているようです。

簡単な例を上げると、明治以前からの「先祖代々○○家の墓」は、すべて取り替えることになります。

そして、二世帯住宅には表札が4つ必要になり、三世代住宅では6つ必要ににります。

 ただ、「先祖代々の墓」というのが普及するのは「墓地及埋葬取締規則」が制定される明治17年以降の話なので、そのようなものを「国体」とするのはいかがなものかとも思ってしまいます。

 それはともかく、全ての夫婦について夫婦別姓を義務づける法案を出そうという勢力はなく、せいぜい別姓婚も可能とするように法改正しようという勢力があるにすぎません。別姓婚も選択可能な法制度が成立したとしても、夫婦の一方のみが婚姻により配偶者の氏を名乗りたいという夫婦が多いのであれば、多くの場合、従前通り「先祖代々の墓」表記で何の問題も起こりません(それとも、水間さんは、別姓婚が選択可能になったら、新たに婚姻する男女のほとんどが別姓婚を選択するとでも思っているのでしょうか。もし、そこまで別姓婚が望まれているのであれば、逆にその選択を可能とする法制度を実現しない方が問題です。)。

 実際には、大学進学以降都会に拠点を移すという人が相当数いる現代社会においては、田舎にある「先祖代々の墓」では墓参りに来てもらえなくなるので、生活拠点の近くに新たに墓地を購入し、自分の死後に備える例が多々あるので、別姓婚が選択可能になろうがなるまいが「先祖代々の墓」なんてものは廃れていく可能性が十分にあります。

 また、表札の数については、親世代、子ども世代がともに別姓婚だったとしても、子どもには親のいずれとも異なる氏をつけることができるという制度にしない限り、親の一方と子どもの一方は同じ氏を名乗ることになりますので、表札は3つでよいということになりそうです。表札が3つでも4つでも、さしたる不便さは感じないと思いますが。

 また、水間さんはこのようなことも述べます。

社会的には、本妻と愛人の区別がなくなり、家庭をもつ意味合いが薄れて、結婚人口が減少し、少子化はより加速することになります。

 「本妻」には法定相続分があり、夫に貞操義務の履行を求める権利があり、扶養を求める権利があるのに対し、単なる愛人についてはそのような権利はないのですから、、非嫡出子の法定相続分が嫡出子の法定相続分と均等になろうが、別姓婚を選択することが可能になろうが、本妻と愛人の区別は歴然と残りますので、心配はご無用です。

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