特定秘密保護法案を今国会で可決するべきではない理由のいくつか。
特定秘密保護法案に関しては、具体的な論拠を掲げてこれを批判しても、妄想に基づいて反対論を煽動しているがごとき扱いを受ける、末期的な言論状況です。もちろん、推進側としては、法案が成立するまでは、「政府はこれを濫用しない」と言い張るしかないという意味ではやむを得ない面はあるとは思いますが。
ただ、そんな推進派の方々にも考えていただきたいことはあります。
まず、修正された法律案で付加された附則の9条を見て下さい。
(指定及び解除の適正の確保)
第九条 政府は、行政機関の長による特定秘密の指定及びその解除に関する基準等が真に安全保障に資するものであるかどうかを独立した公正な立場において検証し、及び監察することのできる新たな機関の設置その他の特定秘密の指定及びその解除の適正を確保するために必要な方策について検討し、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
ここでいう「行政機関の長による特定秘密の指定及びその解除に関する基準等が真に安全保障に資するものであるかどうかを独立した公正な立場において検証し、及び監察することのできる新たな機関」は少なくとも特定秘密保護法が施行される前には発足している必要があります。したがって、この「新たな機関」については、将来の設置に向けて検討することを附則で定めるのでは足りないのであって、特定秘密保護法を新設する法案の中にそのような機関を設置する旨の具体的な条項を置いておく必要があります。現時点で、どのような機関がそれにふさわしいかが固まっていないのであれば、今国会で特定秘密保護法を成立させるのは時期尚早だと言うことになります。
また、修正された法律案の25条を見て下さい。
第二十四条第二十五条 第二十二条第二十三条第一項又は前条第一項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役に処する。
2 第二十二条第二十三条第二項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、三年以下の懲役に処する。
この規定、必要ですか?この規定があるが故に、一般国民が特定秘密保護法違反で処罰されるおそれが一気に広まり、同法が濫用される危険を一気に高めています。
しかも、一般国民に適用されるこの25条、主観的要件の縛りがきわめて緩いです。条文を素直に読む限り、公務員等にその提供等を働きかける情報が特定秘密であることを確定的に知っている必要はなく、その提供等を働きかける情報の中に特定秘密が含まれるかもしれないがそれでもかまわないという「未必の故意」でも主観的要件を満たしてしまいます。公務員等にその提供等を働きかける情報が特定秘密として指定されているか否かを知る術が、一般国民の側には制度的に用意されていないのにもかかわらずです。「情を知って」要件すらついていないのです。そんな危険な条項、どうしても必要なんですか?
また、修正された法律案10条1号のロでは、
刑事事件の捜査又は公訴の維持であって、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第三百十六条の二十七第一項(同条第三項及び同法第三百十六条の二十八第二項において準用する場合を含む。)の規定により裁判所に提示する場合のほか、当該捜査又は公訴の維持に必要な業務に従事する者以外の者に当該特定秘密を提供することがないと認められるもの
については、「当該特定秘密を利用し、又は知る者の範囲を制限すること、当該業務以外に当該特定秘密が利用されないようにすることその他の当該特定秘密を利用し、又は知る者がこれを保護するために必要なものとして、…政令で定める措置を講じ、かつ、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき」には、「行政機関の長は、次に掲げる場合に限り、特定秘密を提供するものとする」とされています。しかし、「刑事事件の捜査又は公訴の維持」という被疑者・被告人を有罪にする方向でしか提示していただけないって片面的にすぎませんか。その情報が被告人を全部又は一部無罪に導くものであった場合にも、裁判所には提示すべきではないでしょうか。
まだいいたいことはあるのですが、そろそろ仕事をせねば。
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