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04/03/2015

昭和23年少年法改正時のの議論

昭和22年8月2日衆議院司法委員会における佐藤藤佐司法次官

終戦後、思想の混亂また経済生活の窮迫に基きまして、またさらに遡れば戦時中青少年に對する教育指導が適切に行われておらなかつたというような、いろいろな原因に基きまして、終戦後青少年犯罪が非常に殖えているのであります。これは各國の歴史においても示されているのでありまするが、最近においては殊に青少年犯罪の數が激増しているばかりではなく、その罪質が非常に凶悪な犯罪が多いのでありまして、この點は識者の非常に憂えているところであります。殊に将来のわが國を擔うべき青少年の責任を思いますると、まことに寒心にたえないのでありまして、この青少年犯罪の予防防遏ということにつきましては、これは政府全體として非常な関心をもつていろいろな對策を講じているのであります。司法省といたしましては、少年法あるいは矯正院法等を活用いたしまして、青少年犯罪の保護善導に極力努めているのでありまするが、しかしながら既存の少年法及び矯正院法あるいは司法保護事業法等では不十分であると認めまして、目下この改正事業に著手いたしておりまするので、できれば今議會にその一部の改正案を御審議願いたいと存じているのであります。遅れましてもこの次ぎの議會には、ぜひ少年法、矯正院法及び司法保護事業法の改正について御審議をお願いしたいと思いまして、その改正事業に鋭意努力いたしておるのであります。

昭和23年6月19日衆議院司法委員会における佐藤藤佐法務行政長官

ただいま上程になりました少年法を改正する法律案の提案理由について、御説明申し上げます。
 最近少年の犯罪が激増し、かつその質がますます悪化しつつあることは、すでに御承知のことと存じます。これは主として戰時中における教育の不十分と、戰後の社会的混乱によるものでありますが、新日本の建設に寄與すべき少年の重要性に鑑み、これを單なる一時的現象として看過することは許されないのでありまして、この際少年に対する刑事政策的見地から、構想を新たにして少年法の全面的改正を企て、もつて少年の健全な育成を期しなければならないのであります。
 今回の改正のおもなる点は、第一に、少年に対する保護処分は裁判所がこれを行うようにしたこと、第二に、少年の年齡を二十歳に引上げたこと、第三に少年に対して保護処分を科するかまたは刑事処分を科するかを、裁判所自身が判断するようにしたこと、第四に兒童福祉法との関連に留意したこと、第五に法護処分の内容を整理したこと、第六に抗告を認めたこと、第七に少年の福祉を害する成人の刑事事件に対する裁判権について、特別の措置を認めたこと等であります。以下順次御説明申し上げます。
 第一は家庭裁判所の設置であります。新憲法のもとにおいては、その人権尊重の精神と、裁判所の特殊なる地位に鑑み、自由を拘束するような強制的処分は、原則として裁判所でなくてはこれを行うことができないものと解すべきでありまして、行政官廳たる少年審判所が、矯正院送致その他の強制的処分を行うことは、憲法の精神に違反するものと言わなければなりません。從つて少年裁判所を裁判所に改め、これを最高裁判所を頂点とする裁判所組織の中に組み入れるのは当然のことでありまして、このことは法務廳設置法制定の際、政府の方針としてすでに確定しておるところであります。なお当時は少年裁判所の設置を予定していたのでありますが、その後種々研究をいたし、また関係方面の意向をも参酌して、これを現在の家事審判所と併せて、家庭裁判所とすることにいたしたのであります。これは少年の犯罪、不良化が、家庭的原因に由來すること多く、少年事件と家事事件との間に密接な関連が存することを考慮したためであります。そうしてこの家庭裁判所は、地方裁判所と同一レベルにある独立の下級裁判官ということになつておるのでありますが、この裁判所の組織に関する点は、裁判所法の中に規定されるところでありますから、詳しいことは、裁判所法の改正法律を提案する際に、御説明申し上げたいと存じます。
 第二は年齡引上げの点であります。最近における犯罪の傾向を見ますると、二十才ぐらいまでの者に、特に増加と悪質化が顯著でありまして、この程度の年齡の者は、未だ心身の発育が十分でなく、環境その他外部的條件の影響を受けやすいことを示しておるのでありますが、このことは彼等の犯罪が深い悪性に根ざしたものではなく、從つてこれに対して刑罰を科するよりは、むしろ保護処分によつてその教化をはかる方が適切である場合の、きわめて多いことを意味しているわけであります。政府はかかる点を考慮して、この際思い切つて少年の年齡を二十歳に引上げたのでありますが、この改正はきわめて重要にして、かつ適切な措置であると存じます。なお少年の年齡を二十歳にまで引上げるとなると、少年の事件が非常に増加する結果となりますので、裁判官の充員や少年観護所の増設等、人的物的機構の整備するまで一年間、すなわち來年一ぱいは從來の通り、十八歳を少年年齡とするような暫定的措置が購ぜられておるのであります。
 第三は保護処分と刑事処分との関係であります。現行少年法においては、原則として檢察官が刑事処分を不必要として起訴猶予にしたものを少年審判所にまわして、これに保護処分を加えておるのでありますが、今回の改正においては、少年犯罪の特殊制に鑑み、この関係を全然轉倒し、一切の少年の犯罪事件は、警察または檢察廳から家庭裁判所に送られ、家庭裁判所が訴追を必要と認めるときは、これを檢察官に送致するようにしたのであります。しかもこの檢察官への送致は、十六歳未満の少年については絶対に認められません。そして送致を受けた檢察官は、送致された事件について犯罪の嫌疑があれば、原則としてこれを起訴しなければならないのであります。なお、事件が家庭裁判所に送致されるまでの過程において、檢察官の手を経るか、それとも警察から直接に送致されるかは、大体において、それが禁錮以上の刑にあたる罪の事件であるかどうかによるのであります。この点は今回の改正中最も重要なものの一つでありまして、少年に対する刑事政策上、まさに画期的な立法と申すべきであります。
 第四は、兒童福祉法との関係であります。昨年兒童福祉法が制定公布され、これが今年の四月一日から全面的に施行されることになりました。この法律は、兒童の福祉に関する基本的法律でありますが、この法律で行う福祉の措置は、犯罪少年と虞犯少年には及ばず、またそれず行政機関によつて行われる結果、強制力を用いることができないのは当然でありますから、これらの点については、家庭裁判所が関與し、少年保護の各機関が相互に協力しつつ、少年の福祉をはかり、その健全な育成を期そうというわけであります。今回の改正では、この点について、いろいろと意を用いているのであります。
 第五は、保護処分の内容であります。從來少年審判所は、ある程度において保護処分の執行に関與するのでありますが、これが裁判所となつた以上、むしろ決定機関として止まるべきであり、執行の面に関與するのは適当でないとの見地から、今回の改正においては、決定と執行とを分離し、一度裁判所が保護処分の決定をしたら、その後の執行は全部執行機関に一任することにしたのであります。その代り、決定に愼重を期するため、從來軽い処分として規定されていたものを、多少内容を修正して、決定前の措価に切りかえたのであります。さらに先述の兒童福祉法との関係が、この保護処分の内容としても考慮されており、またいわゆる環境調整に関する措置も講ぜられております。
 なお、この保護処分の中に、地方少年保護委員会に補導を委託するというのがありますが、これは別に提出する予定になつております法律の中に出てくる委員会のことでありまして、少年法との関係においては、委託を受けた少年について、主として観察を掌るのであります。
 第六は、上訴の制度であります。現行の少年法では、保護処分に対しては、本來の不服申立の方法がないのでありますが、今回は人権尊重の趣旨に則り、特に高等裁判所に対して抗告を認めたのであります。その抗告の理由は、決定に影響を及ぼすべき法令の違反、事実の重大な誤認、及び処分の著しい不当の、三つに限られているのでありますが、これは改正刑事訴訟法案における控訴の理由とにらみ合わせて規定したものであります。そして高等裁判所においては、單に原決定の当否を審査するだけで、みずから保護処分の決定を行わず、原決定を不当と認めるときは、事件を原裁判所にさしもどし、または他の家庭裁判所に移送するのであります。また違憲問題等を理由として最高裁判所に再抗告をする途も開かれております。
 第七は、少年の福祉を害するような成人の刑事事件を、家庭裁判所が取扱うことであります。少年不良化の背後には、成人の無理解や、不当な処遇がひそんでいることがきわめて多いのでありますが、このような成人の行為が犯罪を構成する場合には、その刑事事件は、少年事件のエキスパートであり、また少年に理解のある家庭裁判所がこれを取扱うのが適当であり、またかかる成人の事件は、少年事件の取調べによつて発覚することが多く、証拠関係も大体において共通でありますから、この点から申しましても、この種の事件は、家庭裁判所がこれを取扱うのが便宜なのであります。なお家庭裁判所は、これらの成人に対して禁錮以上の刑を科することができず、禁錮以上の刑を科すべきときは、これを地方裁判所に移送するのでありますが、これは本來少年事件を取扱うべき家庭裁判所が、成人に対してあまり重い刑を科すことは適当でないとの趣旨によるものであります。
 以上は改正の要点でありますが、なおこのほかにも、たとえば十八歳未満で罪を犯した少年に対しては、絶対に死刑を科さないとか、その他重要な改正が少くないのであります。そして、この法律案は量的には必ずしも大法典とは申せないのでありますが、少年不良化の問題が、國家の切実な関心事となつております今日、この問題解決のため必要な幾多の根本的改正を含んでいる点において、質的にはきわめて重要な法律であると申さねばなりません。何とぞ愼重御審議の上、御可決あらんことを希望いたします。

昭和23年7月1日衆議院司法委員会における齋藤三郎法務庁事務官

 第二條は、対象となります少年及び成人の言葉の定義でございます。現行法では、少年を十八歳未満ということにいたしておりますが、終戰後の犯罪の状況を見ますると、十八歳、十九歳、二十歳、こういうところが非常に犯罪が多いのであります。この犯罪に対しまして、單なる刑罰のみをもつては、とうてい不十分でありますので、この少年法によりまして、刑罰と相並んで、保護の力によつて、若い人の犯罪をなくするようにしたい。こういう考えで、改正案におきましては、少年の年齡を二十歳まで上げた次第であります。

 昭和23年7月2日衆議院司法委員会における内藤文質法務事務官

家庭裁判所の在り方、考へ方は。アメリカの標準裁判所を基準とする。日本では刑事裁判所の外廓として発達して來たところに差がある。わが國の從來の傅統のアメリカのよい点をとりいれ、理想的なものをつくろうと考えて立案したものであります。アメリカで家庭裁判所の根本的な考え方は子供または子供を保護する親に適当でないものがあるとき、強制力で措置せねばならぬとき、家庭裁判所の権限が発動するというのであります。從つて本來から言うと犯罪少年のみならず、非行のあつた少年、放任された少年に対し、また親に対して家庭裁判所が関與するのが理想と思うが、兒童福祉法があるので、犯罪少年とこれと紙一重の虞犯少年に対して手当を加える裁判所たらしめようとしている。裁判所が判断するときの基準は、犯罪行為ではなく、犯罪性が強いか弱いかにあるかのみによるのであります。虞犯少年でも犯罪少年より強くせねばならぬこともある。その鑑別は二十年の歴史をもつ少年審判所によつて適切になされ得ると思う。

 同委員会における山崎道子衆議院議員(日本社会党)

子供は神のごときもので、温かい愛の手でやりたい。若芽のごときものを嚴しい法でやるのは不賛成です。世間の見る眼、父兄の精神町影響も考え、兒童福祉でやりたい。それでもどうもならぬ少年は別であります。少年審判所は二十年の経驗をもつというが、それなら旧憲法でやつていけばよい。二十年の歴史にこだわらず、新憲法の下新しく発足したい。行政整理をせねばならぬ今日、何ゆえに本建にせねばならぬのか。冷たい法のふるいをかける前に温かい愛の手でやりたい。少年審判所は後でいいと思う。

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