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28/02/2016

忘れられる権利と検索結果からの削除を求める権利

 どうも日本では、「忘れられる権利」というと、自分に関する事実摘示を含むWEBページの検索結果からの削除またはそのWEBページに関するスニペット表示の削除を求める権利一般を指すものと理解されている気がします。しかし、本来、「忘れられる権利」と「WEB検索結果からの削除を求める権利」とは別物だと思います。

 Xの社会的評価を低下させるような事実αがYによって公然摘示された場合であっても、事実αが公共の利害に関する事実であって、Yが専ら公益目的でαの摘示を行ったときは、Yが事実αが真実であることを証明すれば、損害賠償義務を負いませんし、削除義務も負いません。しかし、例えば事実αが犯罪に関する情報である場合、Xが逮捕されたり起訴されたり有罪判決を受けたりした直後については公共の利害に大いに関するものであったとしても、時に経過とともに、公共の利害との関係性は次第に薄れていきます。すなわち、以前はYによる事実αの摘示行為は適法だったとしても、時の経過とともにこれは違法となり得るということになります。

 Xの私的領域に関する事実βがYにより流布された場合であっても、Xの社会的地位との関係で、その程度のプライバシー権の侵害は受忍すべき範囲に留まるとされることがあります。しかし、時が経過し、Xの社会的地位が変化した場合(例えば、当時は公職に就いていたが、現在は既に退いていたなど)には、もはや現時点でのXの社会的地位との関係では、事実βをなお流布されることは受忍すべき範囲を超えるということになり得ます。この場合、以前は事実βの流布行為は適法だったのが、時の経過とともに違法となり得るということになります。

 また、X自身が事実βを自ら公表していた場合であっても、Xの社会的地位の変化とともに、事実βを公衆に知られたくない情報とXが考えるにいたる場合も有り得ます(例えば、若いころに撮ったセクシーなグラビアを、モデル引退後、公衆の目に晒されたくないと考えるような場合です。)。現在のXの社会的地位との関係では事実βを公衆に知られたくないと考えるのは相当だと通常人が考えるようなものであった場合、これをなお流布する行為は違法となり得るということになります。

 このように、自らに関する情報の流布を以前は止めることが許されなかったが、時の経過とともに、これが許されるようになる。これこそが、本来的意味における「忘れられる権利」です。

 ウェブ検索からの自己関連情報の削除を求める場合として、以前はそのネット上での公開を甘受しなければならなかった情報がいつまでもウェブ検索を通じて公衆の目に晒されるのを何とかしたいという場合も含まれることは事実です。しかし、それだけではありません。そもそもそのような情報を流布することがそもそも違法である場合も含みます。

 そのような情報については、ウェブ検索サービス提供者に検索結果からの排除を求めるのではなく、投稿者又は掲示板等の運営者を相手に当該WEBページ自体からの削除を求めれば良いではないかと思うかもしれません。しかし、現行法上、匿名の相手に対して情報の削除を求める法的な手続は用意されていません。そして、多くのCGMサービスにおいては、情報の発信者は匿名ですので、情報の削除を求める術がありません。のみならず、Whois Protect Service等の隆盛、偽名・偽住所でのドメイン登録を認めるドメイン管理機関の横行などにより、独自ドメインを取得すれば、匿名のまま電子掲示板等を運用することが容易になった結果、掲示板の管理者に対し権利侵害情報の削除を請求することが困難になっていきました。このため、権利侵害情報をWEBページ自体から削除させることが困難となっています。このため、次善の策として、主たるウェブ検索サービスからは、当該WEBページが検出されないようにして、名誉毀損やプライバシー権侵害による損害を極小化しようとするのです。

 こちらについては、東京地方裁判所の一部の裁判官が、検索サービス提供業者に削除義務を認めるためのハードルを引き上げてしまったので、被害者はかなり苦しい立場に立たされています。

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