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avril 2016

30/04/2016

妥協可能な改憲論

 今年も憲法記念日が近づいてきました。現行の日本国憲法はミニマミズムに徹した、極めてスタイリッシュな現代的な憲法で、基本的に気に入っています。とはいえ、安倍首相を初めとして、とにかく改変したいという人たちも多いようなので、こういう改正案なら、というのを具体的に提示していこうと思います。

                                               
現行法改正案
第十条  日本国民たる要件は、法律でこれを定める。第十条  日本国民たる要件は、法律でこれを定める。ただし、父若しくは母が日本国民である子、又は母が適法な在留資格に基づき日本に滞在中に出生した子は、当然に日本国民となる権利を取得する。日本国民たる資格は、本人の意思によらずして奪われない。

 主権者たる国民を構成する「日本国民」の資格については、完全に立法府の裁量に委ねるよりは、中核部分を憲法で定めておき、帰化による国籍の取得等の例外についてのみ立法府の裁量に委ねる方が良いのではないかと言うことです。

                                               
現行法改正案
第十六条  何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。第十六条  何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
○2  財産権を新たに設定し若しくは廃止し、その内容を変更し又は罰則を廃止し若しくはその内容を変更することを求める請願が、普通選挙権を有する全国民の1割を超えるものによりなされたときは、国会は一年以内に請願の内容を審議しなければならない。

 国政選挙以外に、有権者の声が立法に反映される仕組みはあった方がよいです。

                                               
現行法改正案
第十九条  思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。第十九条  思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
○2  何人も、日本国若しくは国歌、国旗、又は天皇若しくは摂政、国務大臣若しくは国会議員、裁判官その他の公務員に対し特定の感情を有すること並びにそのような感情を有することの表明を要求されない。

 主権在民の日本に、個人崇拝や愛国心の押しつけはふさわしくありません。現行憲法でもそのような押しつけに抵抗する権利は保障されていると思いますが、改めて明文化しておくと言うことで。

                                               
現行法改正案
第二十四条  婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。第二十四条  婚姻は、両当事者の合意のみに基いて成立し、両当事者が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

 同性婚を法律婚に取り込むことが憲法に反しないことを明確化すると言うことです。

                                               
現行法改正案
第三十七条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
○2  刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
○3  刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
第三十七条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
○2  刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
○3  刑事被告人及び被疑者は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人及び被疑者が自らこれを依頼することができないときは、国で通常の報酬を負担してこれを附する。

 弁護人を付する権利を被疑者段階にも拡張するとともに、国選弁護人の報酬基準が不当に低廉なものとならないようにするものです。

                                                                    
現行法改正案
第四十一条  国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第四十一条  国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
○2  前項に拘わらず、財産権を新たに設定し若しくは廃止し、その内容を変更し又は罰則を新たに設定し若しくは廃止し、その内容を変更する法律案については、各議院の総議員の十分の一以上の賛成があるときは、普通選挙権を有する国民による国民投票にこれを付する。
新設
第五十九条の二  国民投票に付された法律案は、有効投票数の過半数の賛成票を得て可決したときに、法律となる。国会は、可決の日から一年を超えない範囲でこれに施行日を設定する。

 国政選挙において主たる争点とならなかった事項について不当に国民の自由が制限される法律が制定されないように、少数会派に、そのような法案の議決を国民投票に委ねるように求める権限を付与したものです。

19/04/2016

原子力発電所の自主的な稼働停止の可否

 東京大学の玉井克哉教授が次のようにツイートしています。

(法律の学生向け)原子力発電所の運転を電気事業者が「自発的に」停止することなどできないということについて。電気事業法6条2項4号イ、同9条1項、同3項、同法施行規則10条1項ロ。こういう条文を10分以内に探し当てることができれば、セミプロ級といえる。

 本当でしょうか。

 まず、玉井教授が示した条文を見てみましょう。

 電気事業法6条は以下のような規定です。

(許可証)
第六条  経済産業大臣は、第三条第一項の許可をしたときは、許可証を交付する。
2  許可証には、次の事項を記載しなければならない。
一  許可の年月日及び許可の番号
二  氏名又は名称及び住所
三  供給区域、供給の相手方たる一般電気事業者又は供給地点
四  電気事業の用に供する電気工作物に関する次の事項
イ 発電用のものにあつては、その設置の場所、原動力の種類、周波数及び出力
ロ 変電用のものにあつては、その設置の場所、周波数及び出力
ハ 送電用のものにあつては、その設置の場所、電気方式、設置の方法、回線数、周波数及び電圧
ニ 配電用のものにあつては、その電気方式、周波数及び電圧

 ここでいう「第三条第一項の許可」とは、電気事業を営むことについての許可です。

 次に、同法第9条第1項ないし第3項は以下のような規定です。

(電気工作物等の変更)
第九条  電気事業者は、第六条第二項第四号の事項について経済産業省令で定める重要な変更をしようとするときは、経済産業大臣に届け出なければならない。
2  電気事業者は、第六条第二項第二号の事項に変更があつたとき、又は同項第四号の事項の変更(前項に規定するものを除く。)をしたときは、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
3  第一項の規定による届出をした電気事業者は、その届出が受理された日から二十日を経過した後でなければ、その届出に係る変更をしてはならない。

 最後に、電気事業法施行規則第10条第1項第1号の条文を見てみましょう。

(電気工作物の重要な変更)
第十条  法第九条第一項 の経済産業省令で定める重要な変更は、次のとおりとする。
一  発電用のものに係る変更であって、次のいずれかに該当するもの
イ 設置の場所、原動力の種類又は周波数の変更
ロ 出力の変更であって、その変更する出力が十五万キロワット以上又はその者の電気事業の用に供する発電所の出力の合計の二十パーセント以上のもの

 このように、玉井先生が提示した条文を見ても、電気事業者が「自発的に」原子力発電所の運転を停止することを禁止していることを示すものはないように見えます。

 電気事業法に基づく許可証に「出力」として記載された発電量を常に発電する義務を電気事業者は有しており、発電量を減少させるためには経済産業大臣に届出をすることが必要になると考えた上で、発電量減少の最たるものである「自主的な運転停止」を事前届出なしに行うことは許されないのだと誤解する人はいるのかも知れません。法律の素人さんが頑張って条文を読んだというのであればやむを得ないかと思います。

 しかし、電気事業法が電気事業者に「出力」(変更)の届出義務を負わせた趣旨は、「需要に対し電気の供給能力が不足しないことを国が把握する」ことにあり、届出の対象となる「出力」とは、「年間を通じて発生可能な最大電気出力(定格電気出力)」のことをいうとされています(ここ参照)。したがって、電気事業者は、電力需要とは無関係に常に「出力」として届け出た発電量を発電する義務を負っておらず、需要に合わせて発電量を減らすことができます。したがって、特定の発電設備による発電を「自主的に」停止させることもできるのです。

 東日本大震災以降原子力発電所を再稼働できない状態が続く中真夏の電力消費量ピーク時ですら電力需要に応じた発電を行うことができた九州電力において、比較的電力需要の小さいこの時期に、原子力発電所の稼働を継続しなければ電力需要を満たすことができないということは通常ないと思われますので、九州電力におかれましては、東京大学教授の驚きの見解に惑わされず、「川内原発の自主的な稼働停止」も視野に入れて、ベストな選択をしていただきたいと思います。

 なお、学部学生には、「自分にとって有利な結論をもたらすことができそうな条文を見つけたときに、自分にとって有利な結論を導くキーとなりそうな用語の意味を、既存文献などにより再確認する」ということを徹底してもらえたらと思います。常識的に考えれば、電力需要は日々変動するので、各発電設備について届出してある「出力」どおりに発電し続ける義務なんてものが電気事業者に負わされているはずがないと疑ってかかるのが「リーガルマインド」というやつであって、あとは、既存文献を調べて確認するという作業をするだけですが。

04/04/2016

OS依存しない電子内容証明郵便サービスの可能性

 広く公衆に利用されることを想定しているウェブサービスは、なるべく特定のOSに依存しないように設計しなければなりません。そのサービスを利用するためにハードウェアを買い足すことは、通常期待できないからです。この店、一昔前のWindowsにしか対応していない電子内容証明郵便は、最悪です。

 内証証明郵便は、機能としては、特定の内容が記載された文書が特定の日に特定の相手に届いたことを公証するためのサービスです。相手方に送った文章と全く同じ内容の書面が送信者の手元に保管され、かつ、送達業務を行う事業者もまたこれを保管する。そして、送信者側が保管する文書と受信者側が保管している文書と事業者側が保管している文書とが同一内容であることを事業者がそれぞれの文書上で認証する。そして、受信者側に文書を届けた際に、受領者側に日付の記載された受領証明を発行させる。それだけの要素が満たされれば、内容証明としての機能を果たせるわけです。

 この程度の機能があれば足りるウェブシステムを組むときに、特定のワープロソフトの特定のバージョンでのみ使用できるマクロ等を用いようと考えたとすれば、センスがなさ過ぎではないかという気がします。

 送達する文章の文面については、むしろ「画像」として送信者が特定すれば足りるように思います。だとすれば、PDFやJPEGなどの汎用的な形式の画像ファイルを事業者にフォーム上で送るようなシステムにしてしまえば、事業者側のサーバで面倒な画像処理をする必要がないといえます。そして、申請フォームにおいて、送信者側を特定する情報と受信者側を特定する情報を入力させるようにすれば、電子内容証明を事業者が発行するのに必要な情報は得られると思いますし、それだけの処理に留めれば、特定のOSのもとで稼働する特定のアプリに依存するシステムにする必要はないかと思います。

 日本郵便(株)において、OS依存しない電子内容証明郵便サービスを構築する気がないのであれば、公証力のある内容証明郵便サービスを日本郵便(株)以外の事業者にも開放するようにしていただきたいところです。

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