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juin 2016

11/06/2016

ヘイトスピーチとセクハラの違い

 札幌の猪野亨弁護士が連日不思議な見解を述べています。

 たとえば、

 私たちがすべきことは、権力の力でヘイトスピーチを取り締まらせたり、実力で阻止することではありません。
 このようなヘイトスピーチを生み出す社会の歪みを考え、正していくことです。

とか

 ヘイトスピーチが社会の歪み、政治の右傾化と格差社会(もっとたくさんの社会的要因はありますけれど)の中で登場してきたものであることは常識レベルだと思っていたのですが、ネット界では、個人の資質だと全てを個人の資質の問題に矮小化してしまうツイートが流れていたことには驚きました。だから、そのヘイトデモを叩き潰せば問題が解決するなんて短絡的に考えているのでしょう。
とかです。

 私たち実務法曹は、基本的に、現実に存在する人権侵害等の諸問題が、仮に「社会の歪み」の中で登場してきたものであろうとも、とりあえず目の前にある諸問題を解決することにエネルギーを注いできました。私たちは、現に発生している諸問題を放置して、その社会悪を生み出す「社会の歪み」が正すことにうつつを抜かすようなことはしてきませんでした。例えば、セクハラやDVが、「男性優位社会」という「社会の歪み」により生み出されたものであるからと言って、「男性優位社会」を正すことに注力し、その間現に発生しているセクハラやDVを放置する、という方針を採用してきませんでした。

 それは当然のことであって、「社会の歪み」なんて一朝一夕に正せるものではありませんし、その間、その「社会の歪み」から生ずる人権侵害等を放置していれば、その被害者たちに耐えがたい苦痛を与えてしまうからです。

 もちろん、猪野弁護士にしても、「セクハラやDVが、『男性優位社会』という『社会の歪み』により生み出されたものであるから、その対策としては専ら『男性優位社会』という『社会の歪み』を正していくことによるべきであって、個々のセクハラやDVを働く人を問題視して、強制的にこれをやめさせようとするべきではない。まして、警察と協力してこれをやめさせようとするなんて許せない」とは言わないと思うのです。結局、そこには、在日朝鮮人たちに対するヘイトスピーチ、ヘイトデモとセクハラ・DV等との間に、無意識に、優先順位を付けているからなのではないかと思ってしまいます。

01/06/2016

○○差別

 ある公害によってある地域の住民にある種の疾病が生ずる確率が高まったとして、その地域の住民を差別することは正当なのでしょうか。正当ではありませんね。

 だとすれば、ある公害によってある地域の住民にある種の疾病が生ずる確率が高まる可能性があると主張することや、そのような確率が高まる可能性を否定しないこと、あるいはある地域の住民に生じたある種の疾病の原因が当該公害にあるのではないかと考えて公言することは、その地域の住民に対する差別を正当化するものではありませんし、その地域の住民に対する差別そのものでもありません。

 そして、ある公害によってある地域の住民にある種の疾病が生ずる確率が高まる可能性があると主張することやある地域の住民に生じたある種の疾病の原因が当該公害にあるのではないかとの仮説を提示すること自体を、当該地域の住民に対する差別にあたるとレッテル張りして封じ込めることは、当該地域の住民に当該疾病が生じたときに当該公害の発生に責任のある企業等による補償等を求めることを封じ込めることになるという意味で、むしろ、当該地域の住民に不利益を課すことになります。

 今後、解析技術の発展により、当該地域の住民に生じた当該疾病が当該公害に起因するものであると分かったときには、当該地域の住民を差別することあるいは当該地域の住民のうち当該疾病に罹患した者を差別することが正当化されるとでも言うのでしょうか。そうでないのであれば、「○○差別」とかレッテル張りをして、ある公害とある疾病との関係を疑うこと自体を封じ込めようとすることは、直ちにやめるべきでしょう。

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