どこにもいない合理人
池田信夫さんが、また変わったことを述べています。
生涯所得で考えると、人々の所得は勤労所得と引退後の年金にわけられます。一般に後者のほうが低いので、現役のとき高い所得を得ていた人でも、引退後は所得が低くなり、消費性向は上がる。人々が合理的に消費すると仮定すると、死ぬまでに所得をすべて使い切るので、生涯所得に対する消費税の比率は同じです。
しかし、逆進性が問題となる程度に収入格差が大きな社会において、高額所得者でありながら、「死ぬまでに所得を全て使い切る」合理的な人々というのはかなり希な存在です。「死ぬまでに所得を全て使い切」らない人が多いからこそ、死亡時にそれなりに財産が残り、相続が発生するのです。
経済学者の世界では、「死ぬまでに所得を全て使い切る」合理的人間という新しい概念を持ち出すことにより消費税の逆進性を否定してみせると業績になるのかもしれませんが、一歩経済学者の世界の外に行くと、「人を小馬鹿にした議論」にしか見えないように思われてなりません。
これを見る限り、池田さんだけが非現実的なわけではなくて、大竹先生も同程度のようですね。
【追記】
なお、池田さんが上記エントリーのコメント欄で次のように述べているようです。
「死ぬまでに使い切るという仮定は非現実的だ」とかいうコメントがたくさん来たので、すべて削除しました。その仮定が実証的にフィットしているのだから、死ぬときの遺産の残高は生涯にわたる消費の総額に比べると無視できるということ。
そこで、国税庁のサイトに公開されているデータから、相続税申告されるような方は遺産残高がどの程度あるのかを調べてみました。
| 年度 | 課税価格(百万円) | 被相続人の数 | 被相続人一人あたりの課税価格(円) |
|---|---|---|---|
平成15年 | 10,358,210 | 44,438 | 233,093,524 |
平成16年 | 9,861,773 | 43,488 | 226,769,983 |
平成17年 | 10,195,255 | 45,152 | 225,798,525 |
平成18年 | 10,405,555 | 45,177 | 230,328,596 |
平成19年 | 10,655,731 | 46,820 | 227,589,299 |
平成20年 | 10,748,248 | 48,016 | 223,847,218 |
ざっと計算して、一人あたり2億2〜3000万円の遺産を残してなくなっているということになりますね。この程度の遺産なんて「生涯にわたる消費の総額に比べると無視できる」と仰る池田さんは毎年いくらくらい消費されているのでしょうか。
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