現行の合格者では質が低下するとするいくつかの理由
日経新聞社が、社説で、
「質」の問題は部外者には反論のしようがないが、それが司法試験合格者を増やしたせいで実際に起きているのか検証を経たとは思えない。仮に質の低下が事実だとして、では、どこまで合格者を絞れば質が保たれるというのか。質を問題にするのは、競争激化を心配する増員反対派の本音を覆い隠す方便では、と考えるのは邪推だろうか。
と述べています。
この問いかけについては、「邪推だ」とはっきり言うことができます。
現行の法曹養成制度には、新規法曹の「質」を引き下げる次のような要素があります。
- 法科大学院を卒業することが司法試験受験の必須要素となっているため、法曹志望一本の人しか、新規法曹となり得ない(国家Ⅰ種と併願することができないし、学部在学中に挑戦するだけしてみて駄目ならば民間企業に行くという選択ができない。)
- 法科大学院を卒業することが司法試験受験の必須要素となっているため、東京近郊在住者以外は、一旦会社を辞めなければ、司法試験を受けることすらできない。
- 法科大学院を卒業することが司法試験受験の必須要素となっているため、学部卒業後、3〜4年は働かなくとも生活ができる程度に恵まれた経済環境を有する者しか、司法試験を受けることすらできない。
- 法科大学院における選抜にあたって法的思考力等以外の要素が重視されるため、様々なバックグランドをもつ人が法科大学院に入学しにくくなっており、過去の過ち故に法科大学院への入学を拒まれた者は、司法試験を受けることすらできない。
- 法科大学院における教育の目標やそのための手法等につき、十分なコンセンサスや研修等を経ないままに見切り発車してしまったため、法科大学院における教育の効果があまり上がっていない。
- 法科大学院において、単位認定が甘いため、当初予定していた「司法修習における前期修習を終了した者」と同等の法的素養を有しない者も大量に法科大学院を卒業し、司法試験の受験資格を有してしまっている。
- 司法試験の目標合格者数が高い値に設定されてしまっているために、当初予定していた「司法修習における前期修習を終了した者」と同等の法的素養を有しない者も大量に司法試験に合格させざるを得なくなっている。
- 予算の関係で、司法修習期間が1年に短縮されている。
- 司法修習は当初の予定に従って法科大学院における教育で従前の「前期修習終了時の法的素養レベル」に到達していることを前提にカリキュラムが組まれており、現実と齟齬が生じている。
- 司法修習は当初の予定に従って法科大学院における教育で従前の「前期修習終了時の法的素養レベル」に到達していることを前提にカリキュラムが組まれており、現実と齟齬が生じている。
- 新規法曹資格取得予定者の人数が、新規法曹資格所得予定者に対する需要を大きく超えているため、司法修習期間中のかなりの時間を就職活動に費やさざるを得なくなっている。
- 新規法曹資格取得予定者の人数が、新規法曹資格所得予定者に対する需要を大きく超えているため、既存の法律事務所でOJTを受けることなく自宅開業を強いられる新規法曹資格取得者が大量に排出される現実的な危険がある。
- 新規法曹資格取得者の就職率が低下し、就職できた場合の処遇も悪化した場合に、学部4年次に好条件で民間企業に就職することが選択可能な学部学生にとって、法科大学院に進学すること自体のインセンティブが低下し、優秀な学部学生ほど、法科大学院には進学しなくなる。
- 新規法曹資格取得者の就職率が低下し、就職できた場合の処遇も悪化した場合に、他の分野で相応の実績を収めた社会人が、現在の仕事を辞めて法科大学院に進学すること自体のインセンティブが低下し、優秀な社会人ほど、法科大学院には進学しなくなる。
で、日経新聞社のどこまで合格者を絞れば質が保たれるというのか。
という問いかけに対しては、現在の法曹養成システムを前提とすると、多くとも、旧試験における「前期修習終了時のレベル」に到達していない受験生を排除でき、かつ、新規法曹資格取得者に概ねOJTの機会を付与できる程度の人数ということになります。
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