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2015年3月23日 (月)

事件被害者の卒業作文と著作権

 日本人がテロの被害に遭ったり、国内で凶悪犯罪が行われたりすると、非業の死を遂げた被害者の卒業作文等がワイドショーで読み上げられたりします。テレビ局は、被害者の遺族の許諾なしにそのようなことをしても、著作権侵害とならないのでしょうか。

【回答】

 まず、その卒業作文が著作物と言えるかどうかが問題となります。具体的な卒業作文を見ないとはっきりとしたことは言えませんが、一般論として言えば、卒業作文くらいになると、著作物性が認められるものが多いと言えます。

 テレビ番組の中で、著作物性のある卒業作文の全部または一部をアナウンサー等が読み上げる行為は、その卒業作文を公衆送信する行為ということになりますので、原則としてその著作権者(この場合で言えば、被害者の法定相続人)の許諾が必要です。

 もちろん、著作権法第30条以下で定められている著作権の制限規定のいずれかが適用されれば、著作権侵害とはなりません。では、この場合、いずれかの制限規定が適用されるのでしょうか。

 マスメディア、とりわけ報道部門の方々は、自分たちが第三者の著作物を利用する行為は著作権法41条に定める「時事の事件の報道のための利用」にあたるから、著作権者による許諾は不要だと軽信しているように思われます。しかし、著作権法第41条は、「写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。」と定めており、時事の事件を報道する場合であれば常に他人の著作物を利用できるという作りになっていません。

 子ども時代の卒業作文自体が事件のキーとなっている場合(例えば、この時卒業作文の中で侮辱されたこと自体が犯行の動機となっている等)はともかく、通常は、テロや犯罪の被害者が子どもの頃卒業作文にどのようなことを書いていたかということ自体は当該事件を構成するものではありません。また、テロ等の現場でその被害者の子ども時代の卒業作文が読み上げられていたわけでもないでしょうから、その卒業作文は、当該事件の過程において見られまたは聞かれるものでもありません。したがって、通常、被害者の子ども時代の卒業作文について、著作権法第41条による利用は難しいと言えます。

 すると、あとは、当該事件を報道するという目的との関係で、その被害者の子ども時代の卒業作文の全部または一部を「引用」することが正当な範囲で行われ、かつ、公正な慣行に合致するものであると言えるかどうかが問題となります。これは、取り上げ方によって変わってきますので一般論としてどうだということは言いにくいのですが、ここをクリアできるような番組構成って、かなりハードルは高いようには思います。

 なお、著作権法第32条により引用が適法となるのは「公表された著作物」について行う場合に限られますから、その卒業作文集が、そのときのクラスメート(ないしその保護者)にしか配布されていなかった場合、そもそも「公表」されておらず、適法な引用となり得ないということになる可能性があります。

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